吸血鬼は唇に紅を差す

駄犬

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死なば諸共

天敵

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「なんであんな奴と手を組んでいる」

 身なりに敵うバーテンダーは、自身が経営している酒場に亀井を連れてきていた。

「あんな奴?」

 亀井は苛立った様子で、水の入ったコップに口を付ける。だが、怒鳴らぬようにと一拍置いた亀井の努力は、素知らぬ顔をするバーテンダーを前に水疱に帰す。

「だから! ただの人間と手を組むアンタの了見について、聞いてるんだよ!」

 神経過敏な亀井の態度にバーテンダーは努めて柔和に顔を作り、その立腹加減に引っ張られないようにした。

「藍原くんは、受血者だよ」

 しかし、バーテンダーの言葉をきっかけに亀井は更なる怒気を纏う。

「自分で天敵を増やして何がしたいんだよ!」

 亀井がバーカウンターに乗り出して恫喝ぎみに唾きを飛ばす。バーテンダーはこれ以上、近付かぬよう両手を使って押し留める。

「ぼくに言われてもねぇ」

「アンタが吸ったんじゃないのか」

「違う人に吸われたようだね」

 亀井は舌打ちをし、浮かした腰を再び椅子に落ち着ける。今にも愚痴がとめどなく溢れそうな口の歪みを、蝶番の悲鳴が諌める。

「いらっしゃいませ」

 バーテンダーが愛想を振りまく相手は、かの金井と山岸であった。

「ここ、座っていい?」

 金井が壁際のソファー席を指差して自ら座る場所を指定する。バーテンダーは快くそれを受け入れて、メニュー表を持っていく。薄ぼんやりとした手つきでメニューをめくる金井は、それとなく店内を見回す。

「……」

 そこへ、コンビニ袋を右手にぶら下げた藍原が店内へ入ってくる。

「あれ、店長。大丈夫なの? 未成年を店に入れちゃって」

 金井の穿つかのような鋭い眼光がバーテンダーに向けられた。喉仏が大きく上下し、唾を飲み込んだのが見える。それは、嘘を吐く前の準備運動であり、まじまじと口を開く。

「あー、買い物に行ってもらってたんですよ。ぼくの甥っ子です」

 バーテンダーが不用意な事情を述懐すると、金井はソファーから立ち上がった。

「紛らわしいことは避けたほうが身の為ですよ。バーテンさん」

 未成年飲酒を公然と客の前で行う無法な店には長居できないと、目を通しただけのメニューを置いて、退店の理由に託けた。外へ出た金井と山岸は、互いの顔を見合う。

「山岸、どう思う?」

「まだなんとも言えない。ただここ最近、この町で起きている行方不明者の数からすると、注視を続ける必要がありそうだ」
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