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第3話
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「まいったな・・・」
バスルームから全裸の上田香を担ぎ出し、彼女のベッドへ運んだ。
まだ身体が濡れていたのでこちらもベタベタである。
「人の服をバスタオル代わりに使いやがって・・・」見たところ怪我はなさそうである。
目を覚ました時真っ裸というのも妙な疑いをかけられそうなので、頭を拭いてやり
掛け布団をかけてやった。
「さてと・・・」このまま帰ったほうが良さそうである。
多分どうやって帰ったなどという事は記憶に無いだろうし、大体、朝までここに居て
「あなた誰?」なんてとんでもない話になるのはよくあるパターンだ。
濡れた服が気になるが、長居は無用だとソファーから立ち上がった時、妙なものが
目に入った。
香の部屋に入ってからハプニング続きという事もあり、中の様子を
ちゃんと見ていなかったので当然なのだが・・・
「このCD・・・なんで彼女が?」
それは10年ほど前、まだバンドをやっていた頃に自主制作で刷った
何枚かのCDである。
その頃のメンバーはそれぞれプロ活動をしており、音楽から離れたのは
自分だけであった。
今でも趣味的にギターを弾いたりはするが、人前で演奏する事は皆無である。
例外的に言えば、女性を口説くときのアイテムとしては若干現役かもしれないが・・・
ここで少し気になる事ができてしまった。
ひょっとして彼女は私のことを知ってたのでは無いのだろうか?
それであの店で・・・
イヤイヤそれは無い。
彼女はどう見たって25~6、いやもっと若いかもしれない。
10年前ならまだ子供だ、そんな子がこんなCDを買うのも変である。
「気になる・・・」なぜか、そのCDがここにある理由を聞かなければ帰って
はいけないような気がしてきた。
そう思うとゆっくり部屋を観察する気になってきた。
間取りは1LDKだろうか。
しゃれた白いドアを開けるとフローリングの廊下がありトイレ、バスルームと
ウォルナットのドアが続く。
そして同じ色の引き戸を開けるとダイニングがある。6帖程だろうか?
白色の丸いテーブルに赤い椅子が二つ。
ファミリー用の冷蔵庫に白い食器棚。かなりインテリアには凝っているようである。
そしてこのリビング兼ベッドルームというとこか。
テレビは無いようである。
麻色のソファーに白いサイドテーブル、壁には作り付けのような
ウォルナットの収納庫。そこにソニー製のミニコンポとPCなどが綺麗に配置してある。
ディスプレイされているCDを見ると、それほど枚数は無くクラシックが多いようだ。
本を見ると旅行業務についての参考書が数冊、あとは直木賞作家のが何冊か・・・
部屋を見る限り真面目そうな子である。
「普段あんなにお酒を飲まないんだろうな」
そう思うと、さっきまでは少し頭にきていた自分が少し大人気ないように思えてきた。
「あのー・・・神田さん?」後ろから声がした。
「香ちゃん気づいた?おはよう」
香は自分が裸でベッドに居る事に気づいたようである。
「わたし・・・何でここに?」
掛け布団を首まで引っ張りながら聞いてきた。
「君、お風呂でひっくり返ってたんだよ。で、そこまで運んだ・・・以上!」
「そうだったんですかぁ・・・ご迷惑おかけしました」
「じゃあ、僕はこれで帰るから。一つだけ聞いてもいいかな?ここにある
CD・・・何で持ってるの?」
極力冷静に聞いてみた。
「あっ、それ母のなんです・・・母と言っても再婚してうちに来た義母なんですけど」
「再婚して?お母さん名前は何て言うの?」
嫌な予感がした。
「裕子です。なんでそんな事を?」
話を聞いていて一瞬気を失いそうになった・・・別れた妻である。
「いや、こんな珍しいCDを何故持ってたのか気になってね・・・
兎に角今夜はこれで帰ることにするよ。じゃあ僕が出たら鍵閉めるように。いいね」
そういって部屋を出ようとすると香が大声で言った。
「お願い!帰らないで!」
掛け布団で胸から下を隠した香がすぐ後ろに立っていた。
バスルームから全裸の上田香を担ぎ出し、彼女のベッドへ運んだ。
まだ身体が濡れていたのでこちらもベタベタである。
「人の服をバスタオル代わりに使いやがって・・・」見たところ怪我はなさそうである。
目を覚ました時真っ裸というのも妙な疑いをかけられそうなので、頭を拭いてやり
掛け布団をかけてやった。
「さてと・・・」このまま帰ったほうが良さそうである。
多分どうやって帰ったなどという事は記憶に無いだろうし、大体、朝までここに居て
「あなた誰?」なんてとんでもない話になるのはよくあるパターンだ。
濡れた服が気になるが、長居は無用だとソファーから立ち上がった時、妙なものが
目に入った。
香の部屋に入ってからハプニング続きという事もあり、中の様子を
ちゃんと見ていなかったので当然なのだが・・・
「このCD・・・なんで彼女が?」
それは10年ほど前、まだバンドをやっていた頃に自主制作で刷った
何枚かのCDである。
その頃のメンバーはそれぞれプロ活動をしており、音楽から離れたのは
自分だけであった。
今でも趣味的にギターを弾いたりはするが、人前で演奏する事は皆無である。
例外的に言えば、女性を口説くときのアイテムとしては若干現役かもしれないが・・・
ここで少し気になる事ができてしまった。
ひょっとして彼女は私のことを知ってたのでは無いのだろうか?
それであの店で・・・
イヤイヤそれは無い。
彼女はどう見たって25~6、いやもっと若いかもしれない。
10年前ならまだ子供だ、そんな子がこんなCDを買うのも変である。
「気になる・・・」なぜか、そのCDがここにある理由を聞かなければ帰って
はいけないような気がしてきた。
そう思うとゆっくり部屋を観察する気になってきた。
間取りは1LDKだろうか。
しゃれた白いドアを開けるとフローリングの廊下がありトイレ、バスルームと
ウォルナットのドアが続く。
そして同じ色の引き戸を開けるとダイニングがある。6帖程だろうか?
白色の丸いテーブルに赤い椅子が二つ。
ファミリー用の冷蔵庫に白い食器棚。かなりインテリアには凝っているようである。
そしてこのリビング兼ベッドルームというとこか。
テレビは無いようである。
麻色のソファーに白いサイドテーブル、壁には作り付けのような
ウォルナットの収納庫。そこにソニー製のミニコンポとPCなどが綺麗に配置してある。
ディスプレイされているCDを見ると、それほど枚数は無くクラシックが多いようだ。
本を見ると旅行業務についての参考書が数冊、あとは直木賞作家のが何冊か・・・
部屋を見る限り真面目そうな子である。
「普段あんなにお酒を飲まないんだろうな」
そう思うと、さっきまでは少し頭にきていた自分が少し大人気ないように思えてきた。
「あのー・・・神田さん?」後ろから声がした。
「香ちゃん気づいた?おはよう」
香は自分が裸でベッドに居る事に気づいたようである。
「わたし・・・何でここに?」
掛け布団を首まで引っ張りながら聞いてきた。
「君、お風呂でひっくり返ってたんだよ。で、そこまで運んだ・・・以上!」
「そうだったんですかぁ・・・ご迷惑おかけしました」
「じゃあ、僕はこれで帰るから。一つだけ聞いてもいいかな?ここにある
CD・・・何で持ってるの?」
極力冷静に聞いてみた。
「あっ、それ母のなんです・・・母と言っても再婚してうちに来た義母なんですけど」
「再婚して?お母さん名前は何て言うの?」
嫌な予感がした。
「裕子です。なんでそんな事を?」
話を聞いていて一瞬気を失いそうになった・・・別れた妻である。
「いや、こんな珍しいCDを何故持ってたのか気になってね・・・
兎に角今夜はこれで帰ることにするよ。じゃあ僕が出たら鍵閉めるように。いいね」
そういって部屋を出ようとすると香が大声で言った。
「お願い!帰らないで!」
掛け布団で胸から下を隠した香がすぐ後ろに立っていた。
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