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第2話
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店を出た二人は神田の知っているバーに向かった。
5分ほどの距離である。
チェックするときに女性店員がウインクしたのが妙に気になった。
まあ、一応男であるから下心がまったく無いと言えば嘘になるが、さすがに
常連で通っているこの店で居心地の悪い思いはしたくない。
やはりマズかったかな?などと考えているともう店の前だ。
とりあえず成るようになれである。
「あっ、いらっしゃいませ? 神田さんお珍しい、女性連れなんて」
やれやれ、ここでも同じ対応である。
普段仙人のような生活をしているとこういう時、対処のしように困る。
とりあえずカウンターに案内されると中に居た3人が一斉に視線を向ける。
「神田さんここも常連なんですね。すごーい」
何も知らずか楽しげにワイングラスを持ち上げカンパーイ、などと言っている。
しかしなんだか居心地が悪い。
いつもの店に、いつものバーボン。
何が違う?そのとき理由が分かった。
上田香の座ってる場所である。
彼女を案内されるまま、自分の右側の席に座らせてしまっていた。
普段女性と一緒に飲んだりするときは必ず自分が右側に座る。
こうしないと始まらないのである。
始まらない、というのは主導権が取れないということで、今夜は
正にそれである。
そしてその不安定な状態で彼女の質問攻めが始まった。
「神田さんって独身だってさっき言ってましたよね?結婚したことないんですか?
てゆうかぁー、付き合ってる人とか居ないんですかぁ?」
言葉の語尾がさっきまでとまったく違う。
完璧に酔っているのだろう。
多分明日になればほとんど忘れているはずである。
適当に話を合わせておいたほうが良さそうだ。
「一度結婚したんだけど・・・だめになってね。
それからは独身だな。女の子と付き合う事はあるけど、真剣に
どうこうというのは全然ないね」
「そうなんですかぁ、寂しくないんですかぁ?一人ぼっちで」
「いやいや、別に一人ぼっちってわけじゃないよ。友達なら大勢居るし・・・」
「わかった。セフレとか居るんだぁー。大人だもんね」
そう言うと赤ワインのグラスを一気に飲み干した。
いやはやこれは参ったである。
カウンターの中でマスターが笑いをこらえ切れずに下を向いてしまった。
自分では結構クールに装って飲みに来ている店である。
とんでもないのを連れて来てしまった。
そう思って横に目をやると、上田香はカウンターに倒れこみ軽い寝息を
立てていた。
「神田さん大丈夫ですか?彼女。だいぶ酔っ払ってるみたいですけど・・・」
「それほど飲んでないと思ったんだけど、参ったな。マスター車呼んでくれる?」
最悪である。
暫くしてタクシーが来た。
マスターと一緒に彼女をタクシーまで運んだ。
「お客さん行き先は?」不安げに運転手が聞いてきた。
「本人に直接聞いてもらえないかな?そのうち起きるだろうから。
これで足りると思うから」
ポケットにあった5千円札を運転手に渡すと、寝ていた彼女が突然腕を
引っ張ってきた。
「きっ、気持ち悪い・・・」
あわてて彼女を車から降ろし道路わきの街路樹の茂みに座らせ背中を
さすってやった。
少し落ち着いたところで先ほどの運転手が、出来れば一緒について来て
もらえないかと哀願してきた。
やむ無く承諾し一緒に上田香の自宅へ向かった。
住所はそれほど遠くない。ここからだと15分位だろうか?
とりあえず送り届けたら今夜はサウナにでも泊まろう。そう考えていた。
「香さん、着きましたよ。自分の家ですよ。ほら、起きて・・・」
「あっ、うん・・・うちだ。神田さん、あがっていくでしょー」
「いや、僕はここで失礼するよ。降りてくれるかな?」
「なーんだ。 じゃあ降りない。ここで寝るぅ」
やれやれ、厄介な事になったなものだ。
運転手も迷惑そうである。
「わかった、じゃあ一緒に入ろう。ほらこっちだ」
「運転手さん悪かったね。さっきの取っといてもらえばいいから」
「いいんですか? すいません。ありがとうございました」
かなり多目のチップで気を良くした運転手は、深々と頭を下げ車を出した。
「部屋は何号室なの?」エントランスはオートロックのようであるが
ドアは開いたままであった。
「407号室ですぅ。4階の・・・」
「もう遅いんだから大きな声出しちゃダメだよ」
ふらつく彼女を抱きかかえるようにエレベータに乗った。
部屋に入ると意外に綺麗に片付いていることに驚いた。
確かに初めて見た時の印象は清楚、という言葉がぴったりだったから、
酒さえ入らなければこの部屋の主が、いまトイレで派手にリバースしている
彼女だとしても何ら不思議ではない、と自分に言い聞かせた。
「わたし・・・シャワーしてくる」
そう言うといきなりその場で服を脱ぎ始めた。
あまりに唐突な出来事にポカンとしていると、裸のままフラフラと
バスルームに消えていった。
「どうなってるんだ?無防備にも程があるだろ・・・」
しっかりは見ていないが、なかなかのプロポーションである。
どちらも酒が入っているし、この際据え膳食わねば、の言葉に従ってなどと
自制心の箍たがを外す言い訳を考えていると、バスルームからドーンという
大きな音が聞こえてきた。
「香ちゃん!大丈夫なの?大きな音がしたけど。おい、聞こえないのか?」
返事が無い。何度かノックしたが中は無音である。
出来るだけ中を見ないようにバスルームのドアを開けた。
予想通り、空のバスタブに仰向けの香が気を失っていた。
5分ほどの距離である。
チェックするときに女性店員がウインクしたのが妙に気になった。
まあ、一応男であるから下心がまったく無いと言えば嘘になるが、さすがに
常連で通っているこの店で居心地の悪い思いはしたくない。
やはりマズかったかな?などと考えているともう店の前だ。
とりあえず成るようになれである。
「あっ、いらっしゃいませ? 神田さんお珍しい、女性連れなんて」
やれやれ、ここでも同じ対応である。
普段仙人のような生活をしているとこういう時、対処のしように困る。
とりあえずカウンターに案内されると中に居た3人が一斉に視線を向ける。
「神田さんここも常連なんですね。すごーい」
何も知らずか楽しげにワイングラスを持ち上げカンパーイ、などと言っている。
しかしなんだか居心地が悪い。
いつもの店に、いつものバーボン。
何が違う?そのとき理由が分かった。
上田香の座ってる場所である。
彼女を案内されるまま、自分の右側の席に座らせてしまっていた。
普段女性と一緒に飲んだりするときは必ず自分が右側に座る。
こうしないと始まらないのである。
始まらない、というのは主導権が取れないということで、今夜は
正にそれである。
そしてその不安定な状態で彼女の質問攻めが始まった。
「神田さんって独身だってさっき言ってましたよね?結婚したことないんですか?
てゆうかぁー、付き合ってる人とか居ないんですかぁ?」
言葉の語尾がさっきまでとまったく違う。
完璧に酔っているのだろう。
多分明日になればほとんど忘れているはずである。
適当に話を合わせておいたほうが良さそうだ。
「一度結婚したんだけど・・・だめになってね。
それからは独身だな。女の子と付き合う事はあるけど、真剣に
どうこうというのは全然ないね」
「そうなんですかぁ、寂しくないんですかぁ?一人ぼっちで」
「いやいや、別に一人ぼっちってわけじゃないよ。友達なら大勢居るし・・・」
「わかった。セフレとか居るんだぁー。大人だもんね」
そう言うと赤ワインのグラスを一気に飲み干した。
いやはやこれは参ったである。
カウンターの中でマスターが笑いをこらえ切れずに下を向いてしまった。
自分では結構クールに装って飲みに来ている店である。
とんでもないのを連れて来てしまった。
そう思って横に目をやると、上田香はカウンターに倒れこみ軽い寝息を
立てていた。
「神田さん大丈夫ですか?彼女。だいぶ酔っ払ってるみたいですけど・・・」
「それほど飲んでないと思ったんだけど、参ったな。マスター車呼んでくれる?」
最悪である。
暫くしてタクシーが来た。
マスターと一緒に彼女をタクシーまで運んだ。
「お客さん行き先は?」不安げに運転手が聞いてきた。
「本人に直接聞いてもらえないかな?そのうち起きるだろうから。
これで足りると思うから」
ポケットにあった5千円札を運転手に渡すと、寝ていた彼女が突然腕を
引っ張ってきた。
「きっ、気持ち悪い・・・」
あわてて彼女を車から降ろし道路わきの街路樹の茂みに座らせ背中を
さすってやった。
少し落ち着いたところで先ほどの運転手が、出来れば一緒について来て
もらえないかと哀願してきた。
やむ無く承諾し一緒に上田香の自宅へ向かった。
住所はそれほど遠くない。ここからだと15分位だろうか?
とりあえず送り届けたら今夜はサウナにでも泊まろう。そう考えていた。
「香さん、着きましたよ。自分の家ですよ。ほら、起きて・・・」
「あっ、うん・・・うちだ。神田さん、あがっていくでしょー」
「いや、僕はここで失礼するよ。降りてくれるかな?」
「なーんだ。 じゃあ降りない。ここで寝るぅ」
やれやれ、厄介な事になったなものだ。
運転手も迷惑そうである。
「わかった、じゃあ一緒に入ろう。ほらこっちだ」
「運転手さん悪かったね。さっきの取っといてもらえばいいから」
「いいんですか? すいません。ありがとうございました」
かなり多目のチップで気を良くした運転手は、深々と頭を下げ車を出した。
「部屋は何号室なの?」エントランスはオートロックのようであるが
ドアは開いたままであった。
「407号室ですぅ。4階の・・・」
「もう遅いんだから大きな声出しちゃダメだよ」
ふらつく彼女を抱きかかえるようにエレベータに乗った。
部屋に入ると意外に綺麗に片付いていることに驚いた。
確かに初めて見た時の印象は清楚、という言葉がぴったりだったから、
酒さえ入らなければこの部屋の主が、いまトイレで派手にリバースしている
彼女だとしても何ら不思議ではない、と自分に言い聞かせた。
「わたし・・・シャワーしてくる」
そう言うといきなりその場で服を脱ぎ始めた。
あまりに唐突な出来事にポカンとしていると、裸のままフラフラと
バスルームに消えていった。
「どうなってるんだ?無防備にも程があるだろ・・・」
しっかりは見ていないが、なかなかのプロポーションである。
どちらも酒が入っているし、この際据え膳食わねば、の言葉に従ってなどと
自制心の箍たがを外す言い訳を考えていると、バスルームからドーンという
大きな音が聞こえてきた。
「香ちゃん!大丈夫なの?大きな音がしたけど。おい、聞こえないのか?」
返事が無い。何度かノックしたが中は無音である。
出来るだけ中を見ないようにバスルームのドアを開けた。
予想通り、空のバスタブに仰向けの香が気を失っていた。
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