人間不審な8歳の元勇者は鬼とロボットと家族になる

どどどどどん

文字の大きさ
1 / 11

1

しおりを挟む
あぁ、死んだ。
そう思った時には遅かった。
目の前に迫り来る大きな爪を見つめながら呑気に考える。
そうして視界が真っ暗になった時、私の人生は終わった。

そう、思ったのに。
次の瞬間には目を開けることができ、意識があることにも気がついた。
暗い中をキラキラと星のようなものが輝いている空間が、私を取り囲んでいる。
不思議に思いキョロキョロしていると、いきなり目の前に男性が現れた。

「やぁ、勇敢なる少女よ。」
「えっ…と、あなたは…というか私は死んだ…んですよね…?」
「私は君に助けられた者さ。君の言う通り君はついさっき死んだね。」
「え…?あなたを助けた覚えはないんですけど…。」
「そりゃあこの姿じゃなかったから分からないだろうね。」
「ここでは姿を変えられるってことですか…?」

まぁここが死後の世界とするなら、姿が変えられると言われても特段驚きはしない。というか死んだのにこんなところにいる時点で何が起こってもあまり驚けない。

「まぁそんなところかな。それより、君には借りがあるから、1つだけ願いを叶えてあげる。あいつらに復讐でもする?」

願いを1つ叶える?復讐?何を言ってるのだろう、この人は。
疑問に思っていたことが顔に出ていたのだろう、彼がそんな私の心の中の質問に答えてくれた。

「願いはね、何でもいい。1つだけ叶えてあげる。借りを返すためだ。復讐っていうのは、とりあえずこの映像を見たら分かるかな。」

そう言って彼が指した所へ目をやると、そこに水の波紋が広がった。
かと思えば、その空間の1点に映像が流れた。

その中には、とても見知った顔の4人が写っていた。
私がさっき死ぬまでにパーティーを組んでいた仲間だ。
魔法使いのニーナ、格闘家のキオ、ヒーラーのメメ、そして弓使いのユノ。

どうしてこの4人が写っているのか。
嫌な予感がしながらも映像を見続ける。

『ミ、ミコ…!どうして、どうしてミコが死んでるの…!?』
『落ち着けニーナ。ミコが勝手に一人で討伐に行ったんだろう。ケルベロスの噛み跡がある。』
『でも、ミコが死んじゃったらあいつとの約束が守れなくなっちゃう。』
『安心しろ。ミコの力は既に全部吸い取ってある。問題はない。』
『そ、そっか…なら安心ね。少し申し訳ないけれど…。』

…何を言ってるの?みんな。
あいつって誰?
安心ってどういうこと?
力を吸い取ったって、何…?

「これが復讐の理由さ。おかしいと思わなかったかい?君は勇者と呼ばれるまでに強かった。なのにあんなモンスター一体倒すこともできなくなったなんて。」

混乱する私の脳内に彼の声が流れてくる。
そうだ、あれくらいの魔物、以前の私なら全力を出さなくても倒せたのだ。

なのに、今日は…いや、ここ最近少し調子が悪かったのだ。
風邪か何かだと思っていたけれど…。でも大事に至るほどじゃなかったから一人で討伐に行って。
そうしたら、いつもみたいに力が出せなくて、それで…。

「あいつらはね、君の力を吸い取ってたんだよ。自分たちのために。君だけ仲間って認識されていなかった、利用されていたってことさ。」

妙によそよそしい時があった。
なんだかハブられているような、自分だけ皆の視界に入っていないような、そんな気がするときもあった。

けれど、気のせいだと思って気にしないようにしていた。皆を信じていたから。皆が、大好きだったから。

でも、気のせいじゃなかったのね。
皆は…あいつらは、ただ自分たちの為に私を仲間に迎えただけだった…。

強すぎて周りから敬遠されていた私に声をかけてくれた、唯一のパーティー。
なんだ、そんな事情があったから仲間に入れてくれたのね。

「どうだ?復讐する気になったか?それなら私が願いを叶えてあげ…」
「いや。」
「…ん?」
「…なんか。もうあいつらに関わるの嫌だし、復讐するのも面倒だから、もういいよ。早く完璧に死なせて。」

負の感情が湧きあがったのには違いない。あいつらを殺してやりたいと思ったのも事実だ。
けれど、それ以上に、もう関わりたくなかった。面倒くさい。
何もかもがどうでもいい。
だから、もう。

「そっか…。けど、僕は君をここで消すのは凄く惜しい。だから、君を同じ世界に転生させてあげる。今度は、幸せな人生を歩みなさい。」
「…は?」

いや、私は死なせてって言ったんだけれど…。
願いを1個叶えてくれるんじゃないの?
死なせてよ…転生って、正反対のことじゃん…!
しかも同じ世界って…!あいつらと出会う可能性があるかもしれないじゃない…!

ただでさえ人間不信になっているのに、このまま転生とか嫌だから!
一気にそう叫んだけれど、目の前の相手は聞く耳を持たず。
私の意見は笑顔で却下された。

「じゃあ、今度は愛に溢れた生活ができるよう、祈っているよ。」
「ちょっと、待って…!」
「じゃあ、ベストウィッシュ!」

私が誰からも愛されていなかったことを知ったような口ぶり。なぜ知っているのか、その前に転生はいらない。それを伝えようと叫んだけれど虚しくもその声は届かなかったようで。

急にまた目の前が真っ暗になったかと思えば、今度は何か薄っぺらいものに包まれている感覚がした。

心なしか目が開けにくい気もする。
何とかして目をあけたけれど周りが良く見えない。
声を発しようとすると、明らかに私のではない声であぅあぅと喉がなる。

手を見てみれば小さな小さな紅葉で、漸く私が赤ん坊になっていることが理解できた。
本当に転生させられた。しかも記憶があるままで。どうせなら記憶を消してほしかった。

何にも辛いことを体験したことのない、真っ白な心で生まれ変わりたかった。
文句を言うようにあぅあぅと声を発していると、突然女の怒鳴り声が聞こえてきた。

「さっきから煩い!少しは黙れないの!?」

ヒステリックにそう叫びながら私の方へやってきたかと思えば、頬をぶたれた。
ぶたれた…?
あまりに唐突なことで放心していると、また目の前で何かを叫び始める。

「あぁ!あんたなんて産まなければよかった!あの人はいなくなってしまうし!どうして私だけこんな思いしなくちゃいけないの!?ねぇ!どうして!?どうしてどうしてどうしてどうして!!!」

思い切り叫ぶので耳がおかしくなりそうだ。
どうやら私は望まれて生まれてきたのではないらしい。
どうして、は私のセリフだ。

愛だの幸せだの言うのなら、温かい家庭に転生させてほしかった。転生させることはできる癖に、出生をどうこうすることはできないわけ?

もう、最悪だ。この人生、いつまで続くのだろう。
赤ん坊だから自分で行動することすらできない。
あぁ、誰か私を助けて。

そうして、私のお先真っ暗な第二の人生が理不尽にも始まったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

処理中です...