人間不審な8歳の元勇者は鬼とロボットと家族になる

どどどどどん

文字の大きさ
2 / 11

2

しおりを挟む
第二の人生が始まってから5年が経った。
私にも一応名前があるらしく、ララと呼ばれた。
ミコという名前はもう二度と使うことはないだろう。
ちなみに今世も女だ。

見た目は前と全然違うけれど。
髪はピンクで癖っ毛。
目はくりくりして綺麗な金色だ。

母は最近まで嫌そうに、そして時に私をぶちながら、それでも何とか私を育ててくれた母だけれど、1か月ほど前に家を出ていったきり戻ってこなくなった。

まぁいつかはこうなるだろうと予想はしていた。
さて、どうしたものか。とりあえず自分で歩いたり食べたりすることはできるようになったけれど、まだ何でもできるという訳でもない。

人生を終わらせたいと思ったけれど、そうすればまたあの人に転生させられるだけの気がするので迂闊に行動することも出来ない。

とりあえずいけるところまで生活してみよう。
ご飯は多少残っているから何とかなるはず…。
でも無くなったら買い出しに行かなければいけない。家の周りまでしか出たことないからどこにお店や町があるのかさえ分からない。

家の周りは木や草がうっそうと茂った場所で、周りには他の建物が全くない。
魔物はこのあたりに出るのかも分からない。
勇者の時だったらまだしも、力のない子供の今、魔物に出会ってしまえばもう終わりだ。
小型のスライムくらいならどうにかなるかもしれないけれど。

それにこんな年の子供が一人で買い物に行ったら何かと騒ぎになる。それは面倒くさい。人とはもう関わりたくないからそんなことには何が何でもなりたくない。

ここは慎重に行動しなければ。
まぁここでグズグズしていても何も始まらないし、とりあえずお金をもって街を探して歩いてみよう。
確か財布はここら辺からとっているのを見た気が…、あれ?

「ない…?」

な、ない?

「ない…???」

どこを探しても財布がなかった。それどころかお金になりそうな装飾品なども全て。

死後の世界に行った私はもうそう簡単には驚かないと思っていたのに、こんな簡単に驚くことになってしまうとは。
この世には驚きがいっぱいらしい。

さぁ、どうしたもんか。
一先ず少し遠くまで歩いてみようと思い立ち外へ出たけれど、特に何も見つからなかったしなんなら迷子になってしまった。

辺りも暗くなってきて、もう色々面倒になったのでその場に座り込む。

今日はここで野宿でいいか。魔物が出たらその時はその時だ。潔くやられようじゃないか。
若干イラつきながらドサッとその場へ腰を下ろすと、先程迄感じていなかった疲労感がいっきに押し寄せてきた。
その時だった。

前方の草むらの方角から何か悪い気配がかすかに感じられた。
良かった。察知能力は前世のまま顕在みたい。
これは意図的に気配を消しているようだ。
サッと臨戦態勢に入る。気配からして人間じゃない。魔物か。

潔くやられようとか思ったけれど、勿論ただでやられようとは思っていない。とりあえず戦えるところまで戦ってみよう。

目線は気配のする方向に向けながらも、何か武器になりそうなものが無いか手元を探る。

コツンと手に当たったのは、私の手にギリギリ収まるくらいの石。
こんなのじゃ相手が小型スライムでない限り毛ほどのダメージも与えられないと思うけれど、重要なのは武器より戦う意志。

先程より気配が近づいてきている。これはかなりレベルの高い類の魔物だ。
さあ、どこからでもかかってこい。

身構えたのと同時に相手が姿を現す。
そこには、男が立っていた。
いや、人型をした魔物が立っていた。長い黒髪を後ろで束ね、左目には眼帯がしてある。

普通の人なら人間と疑わないだろう見た目。
けれど、私は違う。
この気配はまごうことなき魔物のもの。
しかもハイレベルの。
こんな石ころじゃどうしたって勝てない。
けれど。

「とりゃぁぁぁぁぁ!!!」

私は叫びながら目の前の相手を殴りにかかる。
が。案の定歯が立たず、顔を大きな手で鷲頭噛まれた。
終わった。このまま握りつぶされて死ぬ。

でも最後まで頑張ったし、悔いはない。
そうして来る衝撃に備えるが、その衝撃は来なかった。
それどころか手を離された。

ただ離すのではなく、突き放すような放し方ではあったけれど。

「なんだクソガキ。邪魔だ。どけ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

処理中です...