人間不審な8歳の元勇者は鬼とロボットと家族になる

どどどどどん

文字の大きさ
3 / 11

3

しおりを挟む
「なんだクソガキ。邪魔だ。どけ。」

…喋った。喋る魔物はただでさえ少ないレベルの高い魔獣の中でも、さらに全体の1%もいないと聞いたことがある。

出会ったことなんてなかったから喋る魔物なんて迷信と思っていたのに。

というか、なんでこいつは私のこと攻撃してこないんだ?
魔物は基本闘争本能がむき出しで出会ったら攻撃してくることが当たり前であるはずなのに。
そもそもこいつは何の魔物だ?

驚きすぎてポカンとしていると、相手は私には興味がないというように踵を返した…かのように思えた。
けれど、魔物は再び私の方にこちらを振り返ってきた。

「…お前、なんでこんなところに一人でいる。」
「…迷子。」
「親は。」
「私のこと捨てた。」
「…。」

いきなり話しかけてきたかと思えばいきなり黙り込まれた。今の質問の意図は何だ?
訝し気に見ていると、魔物は面倒くさそうに再び私に話しかけてきた。

「お前、俺の家に来るか。」
「…は…?」
「だから、」
「いや、聞き取れてるけど。なんでいきなり会った奴のこと助けようとするの。」
「妙に大人っぽいガキだな。…別に理由なんてねぇよ。ただの気まぐれだ。」

そんなわけあるかと心の中で突っ込むが口には出さなかった。
どういう魂胆だろう。
もしかしてぶくぶく太らせて最後にバクっと丸かじりって感じだろうか。

「その様子だと俺が人間じゃねぇってわかってるみてぇだな。はぁ、面倒くせ。別にすぐに取って食いはしねぇよ、ただ、気が変わったら分かんねぇけどな。で、どうするんだ。来るのか、来ないのか。来るなら衣食住は保障する。」

私は思っていることが顔に出やすいらしい。声に出してない質問に魔物が答えた。
面倒くさいならそんなこと提案しなければいいのに、意味が分からない。

それに普通の子どもだったら食べるかもと言われた後について行くという訳がないだろう。人間の言葉が喋れるほど知性高いのに馬鹿なのか。

また私の心の声が顔に出ていたのだろう。
魔物は低い声で「あんまふざけたこと考えていると殺すぞ」と言ってきた。

うーん、馬鹿だ。
そんなこと言われてついて行くわけ…いや。

結局こいつの魂胆は分からないけれど、衣食住を保障してくれるならついて行ってもいいのでは。
このまま家にも帰れず餓死するのも嫌だ。

衣食住が魔物の言う衣食住だと洞窟のねぐらやゲテモノ料理、葉っぱの服とかしか思いつかないけれど。
いやでも服は人間のらしき物を着ているから大丈夫な気もする。
まぁ、何もないよりましなのでは。

何より、こいつは魔物で人間じゃない。襲われる心配さえ除けば、ストレスを感じることなく生活できるのではないだろうか。

と、ここまで考えるのにざっと5秒。
相手は待つことが嫌いなのか、既にイライラしていたので時間をかけないよう脳みそをフル回転させた。

「じゃあ、お願いします」

頃合いをみて出ていけば問題ないだろう。
私の返事をやっとかという風に聞いた後、今度こそ踵を返した。
顎で方向を示し、ついてこいと言ってくる。

私は急いで魔物後ろをついて行った。
そのまま無言で歩くこと1時間、子供の歩幅を気にするそぶりもなくさっさと歩く魔物の後ろを、へとへとになりながらも付いて行った先に見えたのは、一つの町だった。

建物の明かりに照らされてキラキラしている。
あの森にすむんじゃないの?
もしかしてこのまま人里に降りて何か物色するつもりか…?

「おい、早くついてこい。置いてくぞ。」

考え込んでいるといつの間にか魔物との距離が広がっていた。
慌てて再び後ろを必死について行くと、街の明かりからは少し離れた場所に着いた。こじんまりとした、けれど立派なレンガブロックの家。
もしかして…これが、こいつの家…?

「え、家って洞窟じゃ…。」
「普通はな。でも俺は人に紛れてここに住んでる。」
「ふーん…。」

魔物がこんな所に住んでるのは意外すぎた。
けれど、これなら衣食も期待できる。
良かった、いま迄よりはましな生活が出来そうだ。

鍵を開けて進む魔物に続いて私も中へと入る。
中は、綺麗に片付けられていて、必要最低限のものしか置いていないといった殺風景なものだった。
何も言われないことをいいことに、家の中をぐるぐる歩き回る。

「別にこの部屋なら好きに使っていい。けど、二階の右手にある部屋には入るなよ。絶対に。」

念を押されすぎて気になるけれど、素直にうなずく。
2階には2部屋あるらしく、左の部屋になら入っていいという事なので、さっそく入ってみることにする。

そこは暫く使われていなかったのか、埃っぽさが少しあった。
物置きみたいなそこには、小道具や書籍が本棚や床に乱雑に置いてあった。

ふと部屋の隅に目を向けると、何か大きなものが置いてあるのに気が付く。
そっと近づいて見てみると、それは私よりも小さな女の子だった。
透き通った水色の髪に思わず目が行く。

私が近づいてみても気づく素振りのないその子にそっと触ってみると、その肌は冷たく、脈を確認してみたけれどやはり動いていなかった。

やっぱりあいつ人を食べてるんだ。
この子は食料として貯蓄されているに違いない。
親がいない子供をこうやって連れてきては食料にしているんだ。
私もいずれはこうなるのでは…。

来るべきではなかった。敵地に一人丸腰でやってくるべきではなかった。
いまならまだ間に合う。逃げよう。

目の前にあった窓に足をかけ、下に植木があるから何とか飛び降りられるだろうと決心したとき、私の服が何かにクイっと引っ張られた感覚がした。

ビクっとして見やると、そこには先程の女の子が髪と同じ綺麗な水色の目で私のことを見つめてきていた。

「ひっ。」

え…この子死んでなかった?なんで動いて…。
驚きのあまり動けないでいると、女の子の口が開いた。

「おねぇちゃん。」

ドアの前では、あの魔物が目を見開いて驚いたような顔をしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

処理中です...