人間不審な8歳の元勇者は鬼とロボットと家族になる

どどどどどん

文字の大きさ
5 / 11

5

しおりを挟む
ここで暮らし始めて1週間が経った。
私はここで暮らしていく上で家事をすることとなった。

タダで住まわせて飯も食わしてやるんだ。
簡単でいいから掃除くらいはしろよ、とのことだ。

てっきりこいつのことだから家事は全部やれとか言ってくるのかと思っていたので身構えていただけに拍子抜けした。

私がまだ幼いので、簡単な掃除でいいと言ったのだろう。けれど、私は前世では大人に分類される年齢だったので、掃除ならある程度のことはできる。
それに料理だって少しならできる。

前世の件については触れず、掃除も料理もできると言えば、ならやれと言われた。
まぁそうだよね。そう言われると思った。

私には二階のあの倉庫みたいな部屋を与えてくれた。リラとの相部屋だ。
自分で好きにカスタマイズしてくれ、とのことだったので遠慮なく自分が好きなように模様替えさせてもらった。

本棚は左の壁際へ持っていき、部屋にあった本を全て綺麗に並べた。
小物は要るものと要らないものに分けて…というか要るものなんてほとんどなかったけれど…要らないものはテラに託した。

花瓶と電気スタンド、小さな棚と絨毯だけ私の部屋に置いた。
2日目にはテラがベッドを木で作ってくれたので、それを本棚とは逆側の壁へ置いた。

その近くに小さな棚と花瓶、電気スタンドを置いて完成。我ながらよくあのゴミ屋敷みたいな状況からここまできれいにできたと思う。

念のためリラに部屋はこれでいいか聞けば、問題ないという風に返ってきた。
寝る時はリラも一緒にベッドで寝ることにしている。
別にベッドで横にならなくても、床に座っているだけでいいと言われたけれど、そこをゴリ押しして一緒に寝るようにしたのだ。

そんなリラは、専用の電池で動いているらしく、時々交換してあげなければいけない。
初めはテラが交換していたけれど、やり方を教えてみればすぐに覚えたので、電池切れにならないようリラ自身のタイミングで電池交換を行うようになった。

あと、リラは基本自分から動きはしない。
だから時々、私が一緒に歩くように言って手を引き家の周りを散歩したりする。

料理の食材はテラが用意するというので、初めはどんなゲテモノが出てくるのだろうと少し怯えたけれど、出てきたのは人間が食べる食材ばかりだった。

曰くテラの舌には、魔物の食より人間の食のほうが合っているそう。美食家なんだと言っていた。へー。

買い出しはいつもテラが行くので、私はまだ街へ行ったことは無い。今度連れて行ってくれるそう。

3人で暮らすのはそれなりに快適であった。
お互い殆ど干渉せず、適度な距離をもっての生活。
とてもありがたかった。

こんなに快適な暮らしをいきなり手に入れてしまったけれど良かったのだろうか。
結局、急に家に来いといったテラの目的はよくわからなかった。

というかそもそもテラ自身について分かっていることがほとんどない。

まず、人間の姿をしている理由と本当の姿はどんなものか、なんの魔物なのかを聞いてみた。
すると彼は何だっていいだろと吐き捨てて、この話は終わりだという風に二階の右の部屋、彼の部屋へ籠ってしまった。

この話題に触れられたくないような様子だったので、あれからもう聞けないでいる。

別の日には、あの日あんな森で何をしていたのか聞いてみた。
これには普通に答えてくれた。思い出の場所だから、散歩をしていたのだと。
散歩なんて縁がなさそうだったから意外。

他にも、なんで人間に紛れて生活しているのか、他の魔物と交流は無いのか、なんで一人でいるのか、リラはどんな経由でこのうちに置くことにしたのかといったことを聞いてみたけれど、何も教えてはくれなかった。

なおさら私をここに置く理由が分からなさ過ぎて怖い。

面倒臭そうに私を家へ連れてきた挙句、必要最低限のこと以外は関わってくるなとさえ言われたのだ。
人間が好きではないと。だからご飯は一緒に食べないし、テラがリビングに降りてくることはほぼなかった。

こんなの、私を太らせて食べようとしていること以外にあいつにメリットがないじゃないか。
やっぱりこの暮らしに甘えてちゃだめだ。
あいつが捕食者の目を一瞬でも見せたら、その瞬間隙をつけて逃げ出そう。

そう決意した次の日。
珍しく私の部屋へ入っていたかと思えば、今から街に行くから支度しろと言われた。

支度と言われてももうすでにパジャマから着替えているし、特に持っていくものも無いので「もう出来てる」と言えば、じゃあ行くぞといって足早に部屋を出ていった。
リラも一緒に行こうと言って手を引いて、急いで後ろを追いかける。
 
相変わらずこちらを気遣う様子がかけらも見えない速度で歩くあいつを、必死に追いかける。
 
「連れていくのは一度だけだ、自分で道を覚えとけ。あとは行きたいときに勝手に行け。」
「わ、かったから、もうちょっとゆっくり歩いてよ」
「…」
 
苦しそうにそういえば、無言で不服そうにスピードを少し落とした。少し、本当にほんの少しだけれど。

リラは大丈夫だろうかとみてみると、顔色一つ変わっていなかったし息だって微塵も上がっていなかった。
そりゃあそうか。ロボットなのだから。

ロボットだと頭で分かっていても、なんだか気にかけてしまう。これが姉心というものなのだろうか。
 
「着いたぞ。」
 
そうして歩いて20分もしないうちに街に着いた。
そこは、私が前世で見たことのない街で。
賑やかな市場やあふれかえるような数の人間に、少したじろいだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

処理中です...