人間不審な8歳の元勇者は鬼とロボットと家族になる

どどどどどん

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「着いたぞ」
「ここが…」
「ここはディアズタウン。この付近の街の中で1番デカい。」

どうりて人間が多い訳だ。
道沿いには屋台が並んでいて、装飾品や食料なんかがいっぱい売ってある。

「道は覚えたか。」
「ん。」
「ならいいな。俺は食材を買ったら帰る。後は好きにしろ。」
「いや、そんなに長居するつもりないから。適当に近く見たらすぐここに戻ってくる。」
「そうかよ。」

テラはそう言ってそのまま私たちを振り返ることなくスタスタと屋台が並ぶ場所へと足速に行ってしまった。
とりあえずここからちょっと離れたところでも見て、さっさと買い物手伝ったら帰ろう。
正直こんなに人間がいると思わなかったから気分が若干グロッキーになっている。

「リラ、どこか行ってみたいところある?」
「ララに着いていく。」
「そっか。」

念のため聞いてみたが予想通りの答えが返ってきた。
リラの手を引いて、屋台がある道から逸れたところへと、道を忘れないように気をつけながら歩いてみる。

そこは、さっきいた所ほど賑わってはいなかったけれど、それでも大勢の人間が楽しそうに街を歩いていた。

家族連れのもの、友人同士できているもの、パーティーらしき集団も見つけた。
どこを見ても皆幸せそうで、なぜか胸の奥がツキンと痛んだ。

道の左右にはレンガ作りの建物がずらっと並んでおり、それぞれの壁の色がカラフルなのが目を惹いた。

店も沢山あり、ふらふらと歩きながらショーウィンドウ越しに中の様子を覗き見てみる。

手芸屋や飲食店、武器屋があったり。
気になるところは幾つかあったけれど、中でも特に気になったのはある雑貨屋だった。

そこにあった淡いピンクをした小さなペンダント。
いつの日かニーナとメメ、3人で買い物に行った時に、似たようなペンダントを見つけた。

その時に、2人がこの色が私に絶対似合うと言っていたのを思い出す。
今思えば、あれも全部演技だったのだろう。

あぁ、嫌なことを思い出した。やっぱりこっちに来たりせずにテラに着いてたらよかった。

「もう行こっか、リラ。」

そのまま踵を返し、先程通ってきた路地裏を行こうとする。
その瞬間、何かにぶつかってしまう。

「いたっ。」

何にぶつかったのかと見れば、それはチャラチャラとした男だった。
後ろには香水の匂いがきつい女が2人ニヤニヤしながら立っている。

「痛ぇじゃねぇか嬢ちゃん。どう落とし前つけてくれんだよ。」

男は明らかに怒気を含んだ声でそう言った。
後ろでは女が「ユウになんてことしてんの」「責任取りなさいよ」などと捲し立てている。

「ぶつかったのは悪いけど、そっちだっていきなり出てきたじゃない。」
「あ?俺に楯突くんか⁈いい度胸じゃねぇか!こっちこい!」
「ちょ…!」

男は力強く私の手首を掴んで路地裏の奥へと引っ張って行く。
私は巻き込まないようにリラから手を離すと、入り口でリラは立ち止まってこちらをジッと見てくるだけであった。

先程の大通りから離れると、手首を離され、思い切り肩を壁に押し付けられた。

「ぐっ…」
「で、お嬢ちゃん。さっき俺になんて言った?もっかい言ってみてよ。」

私を見下した目をしてニヤニヤとしながら行ってくる。
あぁ、これだから人間は嫌いなんだ。
嫌い嫌い大嫌い。

私が前世みたいに力があれば、今度は魔物よりこんな下衆共を倒してやるのに。
今の私にはそんな力は微塵もなく、何もできやしない。
せめてもと、相手を睨みつければ男の額に青筋が立った。

「…おい、クソガキ。痛い目見ないと何もわかんねぇみたいだな!」

怒りながら叫んだかと思えば、瞳孔を開ききって私を殴りかかってくる。
思わず目を閉じた私は来たる衝撃に備えたのだが、衝撃がくる前に静止がかかった。

止めたのは、先程まで一緒に私を見下してきてた女2人だった。

「んだよ!ガキは殴るなってか!」
「違うって!あそこ!人がこっち見てる!こんなところ見られたらヤバいって!!」
「………チッ!!!」

男は女が指差す方向を見たかと思えば、拳を下ろして私から手を離し、先程来た道へと戻っていった。

誰か見てたなら、止めるか誰か呼ぶかしてよ。
それが嫌なら立ち去ってくれればよかった。
私は見せ物じゃないんだ。

内心毒付きながらキッとその方向を睨めば、そこにはテラがいた。
ただ無表情でこちらを見ていた。

それを見て、あぁ、こいつはそういう奴だ、とストンと胸に落ちた。
相手がテラと分かった瞬間、怒りが急速に覚めていく。

冷静になった私はハッとして、リラを置いてきた場所へと戻る。
そこには先程と変わらない様子でリラが立っていた。

「ごめん、お待たせ。行こう。」

そう言ってリラの手を引きテラの元へと戻った。

「もう食材買い終わったの。」
「あぁ。お前はもういいのか。」
「うん。」

テラは私にそう聞きながらも全くこちらへ視線を向けることは無かった。
今あったことについて聞いてこなかったし、私も話さなかった。
そうしてテラはそのまま来た時と同じ速さで帰り道を歩いていく。

今度は足を緩めてはくれなかった。
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