Blue generation

donguri

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胎動 the one

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夜が訪れる
オレンジ色に染まった空模様が、
やがて暗くなっていく。

それを合図に街に光が灯りだす
真っ黒い街並みに静かにネオンが照らさ
れる。
光の中にはいくつもの感情が眠ってる。

喜び、怒り、悲しみ、安らぎ…そんな中に
ちっぽけな自分がポツンと立っている
光の中に入ることなく、ただ夜の終わりを待っている。

ふと空を見あげると一つの流れ星が見えたような気がした。

”見つけた"

そんな光に手を伸ばして、ただじっと
誰かがその手を握ってくれないかと
そう思いながら。

いつまでも、夜が明けるのを待ち続けていた。

____________________

なんの変哲のない
特に中身のない会話が聞こえてくる。

忙しなく動きながら周りの生徒達に目もくれずに、彼女は
ある場所へと向かっていく。

辺りに人気がなくなる廊下奥の階段を上りきり、目指していた場所へと続くドアを思い切り開く。

煌々と地上を照らす太陽の熱がまだ夏の終わりを感じさせない程に白い肌をチリチリと焼くように眩しく熱かった。

ビル群が並ぶ都会が見える中、仄かに遠くの海から磯の香りを感じさせる午後の13時過ぎ。

いつものように、学校の屋上にて静かに時を過ごそうとしていた時
黒い何かが空へと飛び立つ姿が見えた。


(カラス…?)
ふと、カラスが居たであろう場所に目を移す。

黒い羽がハラリと漂うその場所に
ずっと空を見上げる女性の姿があった。

自分と同じ制服である事と同じ色のリボンをしている事から彼女が同級生である事を意味していた。

「…?」
しばらく様子を見ていると
やがて二人の視線が重なる。

背丈は通常の女性よりやや高く大人びた印象を受ける
艶のある茶髪に、ガラス細工を施したかのような真っ赤な瞳。

そんな瞳がじっと一人の女性を見つめている。

「……けた」

ボソリと何か呟いたような気がした
やがて。

「君も暇潰し?」
突然そう語りかけてくる

「…まぁ、暇潰しと言われればそうかもしれないわね」
「そっか」

しばらくこちらを見つめ後に再び低空を飛びまわるカラスの方へ視線を戻す。

「カラスなんて手名付けてどうするつもり?」
「カラスってね人の子供でいうと3、4歳くらいの知能があるんだって」
「だから芸でも仕込んでみたら、大道芸人として食べていけるかも…」

あまりの突飛な発想に思わず困惑する。

「よかったら見ていく?私とこの子の
大道芸大会!」

再び二人の視線が合わさる
大きく見開いたくりくりとした眼差しが
大人びた彼女の印象に幼さを上書き
していく。

「遠慮しとくわ」
「えぇ~」
「生憎私、暇じゃないの」
「さっき暇潰しに来たって言ってたような」

先程の発言を突かれ、しまったと感じた。

「…貴女みたいにカラス一匹相手にかまけられるような心の余裕はないわ」
「一人で静かな場所で休む為に来たの」
「ふーん…友達と話したりとかし
ないの?」
「友達どころか親しい人間はこの学校にいないわ」
「それに人付き合いなんて面倒なだけよ」
「卑屈だなぁ…」
「余計なお世話」

一通り話し終えた後
その場を離れようとした矢先。

「善民」
唐突に謎の言葉をかけられ後ろを
振り向いた。

「私、善民(よしたみ)セリア」
「…?」
「人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗れって言うでしょ?」

唐突に名前を教えられた意味を数秒考えた後に理解した少女は

「彩辻(さやつじ)勤(つとむ)」
半ば面倒くさげに答える

「勤ちゃん…素敵な名前だね♪」
「普通よ」
「しっかり覚えとくからね」
「…勝手にどうぞ、わたしはすぐ忘れるわ」

屈託のない笑顔を見せる善民に背を向けて

今度こそ彩辻は屋上を後にした。

____________________________________

「これより議会を開始します」

縦長に配置されたテーブルに数名が腰掛けている。

「まず、昨今の状況についてですが」
「今のところ、"彼の者"達による表立った被害報告は出ていません」
「数年前の襲撃以来、目撃証言もありません」

淡々と話すこの男の名は
シフティー・リゲル
今、開かれているこの議会において
重役に位置する人物である。

「つまりだリゲル君…今この状況に置いて
君達が計画している例の機密物資の運用について改めて考える必要が出てきたのではないかね?」

一人の老人の発言に他の出席者達の何人かも賛同する。

「まったくもってその通りですな」
「どんなに対抗策を作っていても、肝心の相手がいないのであれば…宝の持ち腐れというものではないか?」
「例の襲撃事件からはや2年…あれ以来一度も出てきていない脅威に対して怯えている暇があったら…あの計画に全面的に資金提供をする必要があるんじゃないかい?」

冷ややかな視線とせせら笑う薄気味の悪い
声を無視して別の出席者が答える。

「計画といえば…"クリサリスの揺り籠"の様子はどうなのだ」
「今現在、変化も見られずいたって平常です」
「これからも慎重に監視したまえよ…アレは
我々人類が扱うにはいささか危険すぎる代物なのだからな」
「…分かっています」
「まぁ何にせよ、我々メトロポリスを実質的にまとめているのはリゲル、君なのだから…
もう少し自覚を持って欲しいものだ」
「はい、以後気を付けていきます」

嫌味に対しても軽く流していた矢先。

施設全体にサイレンの音がけたたましく鳴り響いた。

「なんだね…?」

ざわざわとしだした出席者達に対してリゲルは口を開く

「申し訳ない、客人が来たようです」
「もっとも我々にとっては、招かれざる客ですがね」
「…まさか!?彼の者が本当に!?」
「それではわたしは対応に向かいます」
「では、我々はお手並みを拝見させてもらうとしよう…健闘を祈る」

一人の合図に、その場にいた参加者達のモニターが次々と切れ辺りに静寂が訪れる。

「…あなた方に言われるまでも
ありませんよ」

ぽつりと言葉をこぼし、リゲルはその場を後にした。
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