Blue generation

donguri

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胎動 The Next

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空模様が水色から橙色の空に変わりつつ
ある。

オレンジジュースのような色合いの遠くに海原が広がっていく。

ポツポツと、街中に明かりがついていく。

街に夜の訪れを感じながら

善民セリアはずっとその景色を眺めて
いた。

「さぁ…飛び立って」
腕に留まり続ける一匹のカラスに優しく語りかける。

「君がいるべきなのはここじゃない」
「仲間のもとへお帰り」

もう一度優しく声をかけながら
右腕を上へと掲げ、ただその一羽が旅立つのを待ち続ける。

やがて…

バサバサと翼を広げ、黒色の影が空へと旅立っていく…その刹那

何か異変を感じた。

チリチリと何かに当てられたかのように
肌が痛みを感じ始める。

遠くから異質な咆哮が聞こえる。

その場所へ目を向けると僅かにその不気味なシルエットが見えてきた。

(何か来る!)

そう思ったのも束の間あたりを強烈な熱気が襲う。

何かに薙ぎ払われたのだろう…周りに溢れていた人々がその場一帯を覆うように倒れていた…

あまりに異質なその光景の中に、空から何かが落ちてきた。

それは、先程まで生きて空へと羽ばたいていったあの…

____________________________________

「現在の状況は…?」
「総司令!」

慌ただしく、モニター画面を注視するオペレーター達に真っ先にそう聞くリゲル

「現在、何者かにより街に被害が出ている状況です!このままでは被害が拡大してしまいます!」
「対象のデータベースは?」

オペレーター達が検索を開始する。

その数秒後にリゲルの質問に答える

「生体反応の確認…一致率82%!」
「G(グラン)メンシュの可能性大です!」

その報告を聞き、恐れていた事態が再び訪れてしまった事を改めて再認識した

「現在、Gメンシュと思わしき物体はD区間を移動中!甚大な被害が出ています」
「直ちにB区間とC区間に防壁を張り、警戒態勢に入ってください」
「これより、D区間を特例危険地区として
扱い、順次対応してください」

その場に合わせた指示を出し、リゲルは椅子に腰掛ける

「約2年ぶりの来訪ですか…」
「やはり…あの子達に頼るしかないのでしょうか…」

リゲルの目の前にいた女性オペレーターが
複雑な表情を浮かべる。

「…彼女達にしかできない事なのです」
「使えるものは最大限に利用しなければ…
その為に…あの子達はその選択を選んだのですから」

モニターに映る、招かれざる客を睨みながら静かにそう語った。

____________________________________

叫び、惑う人々の後ろに見えるのは未知の生物だった。

或いはそれは、生物と言えないような無機質な異形さもあった。

赤黒く変色した肌におそらく血管であろう器官を青と黄色の発光を繰り返しながら脈々と流れている。

ただ有無を言わせずに、宙を舞い人々を襲うその姿はまさに悪魔そのものであった。

その悪魔をただ見つめている女性が一人

「…」
唖然としているのだろうか?
それとも、これから起こる"何か"を受け入れているのだろうか?

逃げる人々と対照的に彼女はただ黙ってその場に佇んでいた。

まもなく悪魔がその目前にまで近づこうとしたその時…

バタンと何かが倒れる音がした。

すぐ近くでうずくまっている何かを見つ
ける。

女の子だ…まだ幼いその瞳からは溢れんばかりの涙でボロボロになっていた。

「ママぁ…ママぁ」

その瞬間、ハッと我に返った"彼女"はすぐにその場へと駆け寄っていく。

「…ママ?」
「違うわ…けど大丈夫」

不安を隠せない少女に、"彼女"はただ優しく微笑む。

「私が、貴女を守ってあげる」

少女を抱き抱え、"彼女"はただひたすらに
あの悪魔から逃げ始めた。

人々の流れを避けるように、脇道へと脚を進め、真っ直ぐに走り続ける。

しばらくすると辺りには人気はなく
ただ蹂躙され破壊された街並みが映る。

ビルの瓦礫を抜けてやがて二人は広くひらけた場所にまでやってきた…だが

「!」

空から先回りしてきた、あの怪物がすぐ目の前で着地して地響きを鳴らす。

ドクン…ドクンと
こちらにも伝わるほど大きな音を出しながらその異様な脈動がピクピクと動いて
いる。

それとは反対に”彼女"の心音は一定のリズムを奏でていた。

不安な顔でキュッと服の裾を握る少女に何も言わずただ笑みだけを浮かべながらゆっくりとその場にしゃがみ出した。

ゆっくり、着実に近づいてくる
その得体の知れない存在が目の前にまできそうなほどに接近した、そのタイミングで

ブゥンッ!!

瓦礫の山から見つけた消化器を思いっきりぶん投げた…が

ガコンッと

その渾身の一撃はあっさりと握り潰される

こうなってしまえば、よもや待っている
のは

_キシャ_______ァァァァ!!

地獄のような叫びが耳を響かせながら
大振りに腕を高く上げ、そのまま
こちらに向かって叩きつけてくる。

死を感じたその瞬間だった。

ピシュンと何かが弾ける音が響き渡る。

怪物の目をその音がした方向を捉えた。

彼女は目の前に映るその音の正体をハッキリと目視した。

体全体が白い色の分厚い装甲に覆われているロボのようなそれは全身に青い発光を放つ管を備えており、
夕闇に染まった辺り一帯を彩っていた。

ーーァァァァァァ!

怪物は大きく叫びながら
そちらへ向かって突進を仕掛ける。

だがその上を高く飛び上がり、しなやかに
攻撃を回避する。

その勢いのまま正体不明のロボットが
彼女と少女の前まで降りてきた。

目の前で改めてその姿が確認できる。

額におそらく目であろうものがこちらをただ見つめている…

すぐに怪物へと視線を戻す
腕のような部位がこちらへと襲いかかってくる。

すかさず肩部から銃のようなものを取り出し、ピシュン!と先程した音を放ちながら

マシンガンが弾け飛びピンポイントに腕にヒットさせ、その動きを止める。

その一瞬を見逃さなかった
右腕に青の発光が集約する。

細長いライフルのようなものが現れ
ロボットの手に握られる。

砲身を怪物の顔に向け、狙いを定め…

発射された…だが
当たったのは左翼のど真ん中であった。

その瞬間…翼は黒ずんでいく
けたたましい咆哮があたりを響かせた瞬間

怪物の身体が発光し
大きな爆発を起こした、
その光が眩しく思わず彼女は目を瞑った。

……しばらくの静寂恐る恐る目を開く

目の前にあのロボットがいた。

あの大爆発から、二人を守ったのだろう
庇うような形で膝をついていた。

やがて…身体が徐々に透けて薄く
なってくる。

しばらくした後に、大部分を占めていた
その姿は消えてなくなってしまった。

変わりにその場所にいたのは…

「…貴女は」

それはつい先ほど屋上でであった。

白い白髪を揺らす
透き通った海のような青い瞳を持つ女性だった…

「…これが私」
「あんな化け物と対等に張り合えるくらい…私の身体は普通じゃない」

ゆっくりと立ち上がりながら
無表情な顔をしている。


「私の事なんて、ささっと忘れた方が身のためよ」

無愛想に言い放って…
彩辻は二人に背を向け
その場を去った。

(…あの娘にも、背負っているものが
ある)
(そしてそれが彼女を苦しめているんだわ

その場に残された善民はただその姿を見つめる…

裾がキュッと引っ張られその場を見ると
不安な表情が収まらない幼児がじっと見つめている。

それに彼女は無言ながら
微笑みを返すだけだった。
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