オメガになってみたんだが

琉希

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第77話

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見つめてくる真剣な眼差しに、サキは大きく息をした。

それからゆっくりと瞬きをし、口を開いた。

「おれは……レイのそばにいちゃダメなんだ」
 
レイは口を開きかけたが、サキは手で制止した。

「おれがやらかしたことでなくても、レイにとっては泉サキがやったことだ。だから、レイを泉サキから解放させなきゃって」
 
でも、と続ける。

「そう思ってたのに、ダメだった。おれも……レイのことが好きだから」
 
笑おうとしたのに、目尻に涙が浮かんだ。

「ここを出て、離れようとしたのに」
 
そこまで言いかけたとき、レイが、おれは、と遮った。

「あなたが出て行って、つらかった。おれのことをなんとも思ってないんだって」
 
滲む視界の中、レイも瞳を揺らした。

「どうすれば振り向いてもらえるか、そればかり考えていたんだ」
 
サキは胸が震えた。

「ハルから送られてきた動画を見て、心臓が止まるかと思った」
 
レイの腕が伸び、サキは頭を抱えるように抱き締められた。

レイの匂いがする。

温かな体温に包まれ、サキは目を閉じた。

「無事でよかった」
 
掠れた声に、サキの頬に一筋の涙が伝った。

「レイ。助けてくれてありがとう」
 
万感の想いを込めて囁くと、レイは身体を離し、サキの両肩を優しく掴んだ。
 
細められたレイの瞳を見つめて、サキはそっと瞼を閉じた。
 
二人の唇が重なる。

サキは元の魂と体を交換した真白い空間のことが脳裏をよぎった。
 
唇を離すと、レイはまたサキを抱き締めた。

今度は力強く抱きすくめられ、サキもまた両腕を彼の背に回した。

(あったかい……)
 
サキはレイの胸に顔をうずめ、しばらく目を閉じていた。

彼の心音が心地よかった。

ずっと聞いていたい……と思っていたが、その鼓動がどんどん速くなっていき、サキは目を開けた。

「レイ。心臓の音、すごいんだけど」
 
サキが顔を上げようとすると、レイのあごに頭が触れた。

「しかたないでしょ。今、我慢してるんだから」

「我慢? なにを?」

サキが尋ねると、レイはため息を吐いた。

「言わせないでよ」
 
その不貞腐れた言い方に、思わず吹き出した。
 
サキは、レイ、と呼びかけ、レイが顔を向けたとき、すかさずキスをした。

下唇を軽く噛むと、レイはびくっと肩を揺らした。

サキはレイの首筋に口をつけた。

「……ヤろう?」
 
熱っぽく囁くと、レイは硬直した。

そのまま返事がないので、訝しんで身体を離すと、片手で顔を覆っていた。

「どうした?」
 
尋ねると、

「いや、あなたから誘われると思わなかったから……」
 
と、耳まで赤くしている。

サキはレイが可愛く見えて、ふふと笑った。

「名前」

「ん?」
 
レイは顔を隠していた手をどけた。

「サキでいいってば。よそよそしいのは嫌だ。それに、この名前もけっこう気に入ってる」
 
微笑むと、レイも目元を緩めた。

二人の視線が合うと、どちらともなくキスをした。
 
自動管理されている部屋の温度が上がった気がした。
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