俺の彼女は、キスができない

如月由美

文字の大きさ
39 / 62
第三章

何も知らなかった 2

しおりを挟む
「おい!柚子を知らねーか!?」
ーガラッ!ー
思いっきり、教室の扉を開けて、そう叫ぶ。
「柚子なら、数学準備室に行ったよ」
そう返事が返ってくる。
「ありがとよっ!」
お礼を言って、 また走り出す。
「柚子の彼氏かな!?」
「みたいだね」
「幸せそー♪」
なんて、言ってる声は聞こえなかったけど。



「ふぅー。ついた」
俺の前の扉には、『数学準備室』の文字。
行くぞ。
息を整えてから、扉を開ける。
そこには、
「ゆっくん…?」
振り返ったゆっちゃんがいた。
そんなゆっちゃんは、今も病気なんだよな?
辛いよな。嫌だよな。
俺は、ゆっちゃんを抱きしめた。
「気づけなくて、ごめん」
そう言ったとたん、柚子の顔色が変わった。
「離れ…て………」
「なんでだよ」
「いいから………。は、離れて!」
と柚子は、俺を押した。
「ゆっちゃん?」
俺は、床に倒れた。
「私たち、終わりだよ」
「え?」
俺は、信じたくなかった。
ゆっちゃんが、そんなこと言うなんて。
でも、現実だった。
「知られたくなかった!なんでよ!誰から聞いたのよ!」
と言うゆっちゃんの瞳には、涙が浮かんでいる。
それに、柚子は、確実に怒っている。
「しょ、翔からだよ。それより、ゆっちゃん、どうしたの?」
そう言うと、ゆっちゃんは座り込んだ。
柚子?
そして、ゆっちゃんは口を開いた。
「知られたくなかったのに……ぐすっ…。病気のこと……ぐすっ。なんでっ…ぐすっ……」
泣いてる。柚子が。
柚子が、泣いてる。
「泣くなよ」
と肩に手を置こうとするけど。
「触らないで……ぐすっ………ううっ…」
柚子に、弾かれてしまった。
知られたくなかった、か。
そうか。そうだよな。
好きな人が、病気にかかってるとか、知られたくないよな。
でもさ。
柚子がイヤだと言うなかで、俺は柚子を抱きしめた。
「頼れよ。バカ柚子」
と言うと、ゆっちゃんは俺を抱きしめた。
俺の肩を、濡らしながら。


ー準備室には、柚子の泣き声だけが響いたー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...