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『時の雨は優しい虹となる』エピローグ

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結明が去った後、
時雨はその場に
立ち尽くしていると、
狐のお面がポロリと外れた。
隠れていた顔が現れる。

「やっ、ぱり…。
ちゃんと分かってるな。
結明のやつ」

時雨の息は、
急に荒々しくなってしまう。
息が上手くできなくなる。

時雨は胸を押さえていて、
とても苦しそう。

「バレなくて、よかっ……」

彼は青ざめた顔をして、
バタン!とその場に倒れた。
それと同時に、ポケットに
隠していたものが落ちた。

それは難病手帳だった。
難病を抱える人がもつ手帳だ。
なんとそこには
「大谷 智史」という名前が。

時雨、いや大谷くんは
倒れた場所から空を眺めた。
すると、そこには
優しい虹が架かっていた。

彼は胸をぎゅっと押さえながら、
空の虹へと手を伸ばした。

「俺、死ぬなら
優しい虹になりてえよ。
そしたら、あいつに会えるだろ」

息を切らしながら、
精一杯に思いを空へ伝えた。
すると、彼を優しく包むように
太陽の光が彼の体を照らす。

「ゆ、ゆめ……っ…」

大谷くんだった時雨は
彼女の名を呼ぶと口を閉じ、
空の虹へと伸ばした手は
地面へと落ちていった。


そして、時の雨は
優しい虹となるのでした。
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