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加護
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「わかったわ。でもその話はここではなく病院でしましょう。」
母である涼子が何故家ではなく病院で話をしようと言ったのか、誠は異常なまでの違和感にとらわれていた。
車での移動中、普段は陽気な母が一言も喋らない。
「母さん、俺の加護ってもしかしていいものじゃないのか?」
「それは着いてからわかるわ」
「なんで俺は加護テストを受けてないのにあんなに能力値が高いんだよ」
「それも着いたらわかるわ」
母はそれしか言わない。
そして病院に着いた。母が案内したところは病室などではなく地下のひやっとした部屋だった。
「ここって、、、霊安室?」
母はなにも言わずぶ厚い扉を開く。
中に入るとそこは俺の知っている霊安室と呼ばれる場所などではなく小さな研究施設のようなところだった。
中には5人の白衣を着た男女がなにやら作業をしていた。
そのうちの1人が俺たちに気づき近づいて来る。
「お、涼子ちゃん!久しぶりー
お?その子はもしかして...」
「えぇ、私の息子よ」
母がそういうとその男は深刻そうな顔を見て浮かべた。
「大丈夫だ。今度はこの施設だってある。絶対に助かるさ。」
何を言っているのか全く理解ができない。俺はつい母へ怒鳴ってしまう。
「いい加減教えてくれよ!俺の体に何かあるのかよ!!なんなんだよさっきから!」
母は深呼吸をしてゆっくりと話し始めた。
「ねぇ誠、あなたお父さんがなんで死んだか覚えてる?」
「父さんは不慮の事故で俺が生まれる少し前に死んだって言ってたじゃないか。それがどうしたんだよ」
母の質問の意味がわからなかった。
何故今この質問を投げかけたのだろうか、真琴は恐る恐る母を見つめる。
「そう、その通りよ。でもその不慮の事故の内容までは教えてなかったわよね。
いい?誠、あなたにはこれからとても残酷で辛い話をするわ。それでも聞いて欲しいの。」
まるでお通夜のような空気に吸い込まれそうになる。
重く、とても息苦しく感じる。
誠はゴクリと唾を飲み込む。
「わかったよ。」
そういうと今度は先ほど出てきた男が話し始めた。
「よし、ここからは僕が話そうか。
そうだ、自己紹介が遅れたね。僕の名前は八重島俊介。ここで加護右脳変革オペレーションというものをやっている。君のお父さんとは幼い頃から親しかったんだ。」
「父さん...と?」
俊介は少し寂しげに頷く
「焦らず、しっかりと聞いてほしい。
君のお父さんは事故なんかじゃないんだ。君の父さん、いや、春正は事故で死んだのではないんだ。」
「な...」
父の死が事故などではなかったと突然告げられ、誠は心臓がドクンと音を立てるのを感じた。
「なら、だとすれば何故俺の父さんは死んだんですか?事故じゃないなら一体何って言うんですか!」
なんとなく理解していた。何故自分がここに呼ばれ父の死の真相を今、この状況で告げられたのかを。
だか、だからこそそれが確信に変わるのが恐ろしかった。
だが、現実は残酷で無慈悲だった。
俊介は冷徹な目で誠を見つめ、はっきりと告げる。
「君の父さんの死因は『加護』の急性発達症。そしてそれは残念ながら君にも遺伝し、君の寿命はおそらく5年あるかないかだ。」
心臓の高鳴りがより一層高まる。
「5...ね..ん?」
恐ろしく残酷な数字にそれ以上言葉が出ない。
誠はただ目の前に叩きつけられた現実に呆然と立ち尽くすしかなかった。
「君の加護の能力名は『バニシングキル』。通常の人間の最大二十倍の身体能力と自分とは別の、全く真逆の人格を手に入れることのできる加護。だけどこの能力は自分でコントロールすることができない。つまり、何が言いたいかわかるかな。」
「...身体能力の負荷に耐えられなくなるか、人格に脳を乗っ取られる...」
俊介は頷き、誠の肩をギュッと握る
「僕は君の父を助けることができなかった。でもそれは、あの頃の僕に権力も権限も、金も何もなかったからだ。でも今は違う。僕は絶対に君を助ける。だからこそ、信じてもらおうなんてのは都合が良すぎるかもしれないけど君の命を僕たちに預けてほしい。」
俊介の真っ直ぐな目に思わず引きずり込まれそうになる。
数秒の間を空け、誠は返事を返す。
「わかりました。だけど1つだけ教えてください。父の最期と、どうしてこのことを今まで黙っていたのかを。」
冷たい空気が、重く、深く、体にずしりとさせるものを感じる。
おそらくこれは、この感情は焦りだ。
「わかった。でもそのことを教えるのは僕の役目じゃない。君には大切な大切な母親がいるはずだ。その人が全てを教えてくれるはずだ。」
母さんは俺の方へゆっくりと歩み寄ってきた。
そして深々と頭を下げる。
「今まで隠していてごめんなさい。
でもね、隠していたのには理由があるの。あなたのお父さんとした、大切な大切な約束が。」
母は僕に初めて父について語ってくれた。全ての、事の始まりを。
母である涼子が何故家ではなく病院で話をしようと言ったのか、誠は異常なまでの違和感にとらわれていた。
車での移動中、普段は陽気な母が一言も喋らない。
「母さん、俺の加護ってもしかしていいものじゃないのか?」
「それは着いてからわかるわ」
「なんで俺は加護テストを受けてないのにあんなに能力値が高いんだよ」
「それも着いたらわかるわ」
母はそれしか言わない。
そして病院に着いた。母が案内したところは病室などではなく地下のひやっとした部屋だった。
「ここって、、、霊安室?」
母はなにも言わずぶ厚い扉を開く。
中に入るとそこは俺の知っている霊安室と呼ばれる場所などではなく小さな研究施設のようなところだった。
中には5人の白衣を着た男女がなにやら作業をしていた。
そのうちの1人が俺たちに気づき近づいて来る。
「お、涼子ちゃん!久しぶりー
お?その子はもしかして...」
「えぇ、私の息子よ」
母がそういうとその男は深刻そうな顔を見て浮かべた。
「大丈夫だ。今度はこの施設だってある。絶対に助かるさ。」
何を言っているのか全く理解ができない。俺はつい母へ怒鳴ってしまう。
「いい加減教えてくれよ!俺の体に何かあるのかよ!!なんなんだよさっきから!」
母は深呼吸をしてゆっくりと話し始めた。
「ねぇ誠、あなたお父さんがなんで死んだか覚えてる?」
「父さんは不慮の事故で俺が生まれる少し前に死んだって言ってたじゃないか。それがどうしたんだよ」
母の質問の意味がわからなかった。
何故今この質問を投げかけたのだろうか、真琴は恐る恐る母を見つめる。
「そう、その通りよ。でもその不慮の事故の内容までは教えてなかったわよね。
いい?誠、あなたにはこれからとても残酷で辛い話をするわ。それでも聞いて欲しいの。」
まるでお通夜のような空気に吸い込まれそうになる。
重く、とても息苦しく感じる。
誠はゴクリと唾を飲み込む。
「わかったよ。」
そういうと今度は先ほど出てきた男が話し始めた。
「よし、ここからは僕が話そうか。
そうだ、自己紹介が遅れたね。僕の名前は八重島俊介。ここで加護右脳変革オペレーションというものをやっている。君のお父さんとは幼い頃から親しかったんだ。」
「父さん...と?」
俊介は少し寂しげに頷く
「焦らず、しっかりと聞いてほしい。
君のお父さんは事故なんかじゃないんだ。君の父さん、いや、春正は事故で死んだのではないんだ。」
「な...」
父の死が事故などではなかったと突然告げられ、誠は心臓がドクンと音を立てるのを感じた。
「なら、だとすれば何故俺の父さんは死んだんですか?事故じゃないなら一体何って言うんですか!」
なんとなく理解していた。何故自分がここに呼ばれ父の死の真相を今、この状況で告げられたのかを。
だか、だからこそそれが確信に変わるのが恐ろしかった。
だが、現実は残酷で無慈悲だった。
俊介は冷徹な目で誠を見つめ、はっきりと告げる。
「君の父さんの死因は『加護』の急性発達症。そしてそれは残念ながら君にも遺伝し、君の寿命はおそらく5年あるかないかだ。」
心臓の高鳴りがより一層高まる。
「5...ね..ん?」
恐ろしく残酷な数字にそれ以上言葉が出ない。
誠はただ目の前に叩きつけられた現実に呆然と立ち尽くすしかなかった。
「君の加護の能力名は『バニシングキル』。通常の人間の最大二十倍の身体能力と自分とは別の、全く真逆の人格を手に入れることのできる加護。だけどこの能力は自分でコントロールすることができない。つまり、何が言いたいかわかるかな。」
「...身体能力の負荷に耐えられなくなるか、人格に脳を乗っ取られる...」
俊介は頷き、誠の肩をギュッと握る
「僕は君の父を助けることができなかった。でもそれは、あの頃の僕に権力も権限も、金も何もなかったからだ。でも今は違う。僕は絶対に君を助ける。だからこそ、信じてもらおうなんてのは都合が良すぎるかもしれないけど君の命を僕たちに預けてほしい。」
俊介の真っ直ぐな目に思わず引きずり込まれそうになる。
数秒の間を空け、誠は返事を返す。
「わかりました。だけど1つだけ教えてください。父の最期と、どうしてこのことを今まで黙っていたのかを。」
冷たい空気が、重く、深く、体にずしりとさせるものを感じる。
おそらくこれは、この感情は焦りだ。
「わかった。でもそのことを教えるのは僕の役目じゃない。君には大切な大切な母親がいるはずだ。その人が全てを教えてくれるはずだ。」
母さんは俺の方へゆっくりと歩み寄ってきた。
そして深々と頭を下げる。
「今まで隠していてごめんなさい。
でもね、隠していたのには理由があるの。あなたのお父さんとした、大切な大切な約束が。」
母は僕に初めて父について語ってくれた。全ての、事の始まりを。
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