17 / 20
episode 17
しおりを挟む
それから、僕の日常が新しくなった。
毎日流川さんに、桜のメッセージを届けている。
夏の陽射しが照りつけようが、雨が降ろうが。
松葉杖をつきながらでも、毎日。
良い口実が出来たとは、口が裂けても言えない。
そんなメッセージに添えるのは、一言だけだけど。
不思議と途切れることはなかった。
こんな事を伝えたい、こんな言葉を聞いた。
流川さんの事を考えていると、湧き出てくる。
頑張れ、とかは言わない。
それは僕が言われても、嫌な言葉だから。
それから体調が良い日には、散歩をするようにもなった。
もうあの公園までは行けてないが。
それでも、気分転換にと一緒に歩く。
「ふふっ、ねぇ、前から思ってたんだけど」
「え、急にどうしたの」
「外から見たら、私が水雲くんの補助をしてるみたいに見えるだろうなーって」
「ははっ確かにそうだね、僕の方が怪我人だからね」
「もう治るの?」
「ううん、あと2ヶ月はこのままだろうって」
「そっか…長いね」
「次の大会には間に合うと思うから、大丈夫」
「次は大きな大会なんだっけ?」
「うん、ウィンターカップ…これには間に合わせたい」
「頑張ってね、応援してるから」
何故だろう。
流川さんの“頑張って”は嫌じゃなかった。
僕の気持ちを理解してくれているからだろうか。
それとも、流川さんだからだろうか。
咲き始めた蕾には薄々気づいていた。
それでもこの蕾を咲かせるわけにはいかない。
咲かせてはいけない花だから。
毎日流川さんに、桜のメッセージを届けている。
夏の陽射しが照りつけようが、雨が降ろうが。
松葉杖をつきながらでも、毎日。
良い口実が出来たとは、口が裂けても言えない。
そんなメッセージに添えるのは、一言だけだけど。
不思議と途切れることはなかった。
こんな事を伝えたい、こんな言葉を聞いた。
流川さんの事を考えていると、湧き出てくる。
頑張れ、とかは言わない。
それは僕が言われても、嫌な言葉だから。
それから体調が良い日には、散歩をするようにもなった。
もうあの公園までは行けてないが。
それでも、気分転換にと一緒に歩く。
「ふふっ、ねぇ、前から思ってたんだけど」
「え、急にどうしたの」
「外から見たら、私が水雲くんの補助をしてるみたいに見えるだろうなーって」
「ははっ確かにそうだね、僕の方が怪我人だからね」
「もう治るの?」
「ううん、あと2ヶ月はこのままだろうって」
「そっか…長いね」
「次の大会には間に合うと思うから、大丈夫」
「次は大きな大会なんだっけ?」
「うん、ウィンターカップ…これには間に合わせたい」
「頑張ってね、応援してるから」
何故だろう。
流川さんの“頑張って”は嫌じゃなかった。
僕の気持ちを理解してくれているからだろうか。
それとも、流川さんだからだろうか。
咲き始めた蕾には薄々気づいていた。
それでもこの蕾を咲かせるわけにはいかない。
咲かせてはいけない花だから。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる