ほしくずのつもるばしょ

瀬戸森羅

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おはなし

ケンタとぼく

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ぼくがはじめてケンタと会った日
ぼくの4歳の誕生日
息を切らせながら家に入ってきたおとうさんは
大きなかごを抱えていた
そこから出てきた大きな犬
「今日から俺たちの家族になるんだ」
荒い鼻息でぼくより大きな体で動くので
ぼくは怖くて、泣いてしまった

あれから8年
当たり前だけどぼくはケンタより大きくなって
ケンタも最近は大人しくなっていた
寝ていることが増えた
ボールを投げてもあんまり取ってこなくなった
「おじいちゃんなんだから」
ぼくはなんだか納得いかなかった
ぼくはまだ大人にもなってないのに

そんなある日のことだった
ケンタがご飯を食べなくなった
窓際で眠ったまま一日を過ごすようになった
ぼくにはなんとなくわかった
ケンタとのお別れはもう遠くないんだって

そしてその日はきた ーー

ケンタはおとうさんの腕に抱かれたまま消え入りそうな呼吸をしていた
「ほら、お前も抱いてやるんだ」
ぼくはケンタを抱いた
ケンタは驚くほど軽かった
「あいする人のうでの中でいけるなんて、こんなにしあわせなことはないじゃないか」
そういったおとうさんの声は、少しふるえていたけど、ぼくはたしかに、ケンタがわらっているようにみえた
そしてケンタは、ぼくの家族は、死んでしまった
ぼくは悲しくて、泣いてしまった
でもケンタは、まだわらってた
冷たくなっても
ぼくはわかった
ケンタは、しあわせだった
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