グリーン☆ぐりもわーる外伝 リリィのエデンズカフェ

瀬戸森羅

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強くなりたくて

チーム結成

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 スモールデッドの襲撃を受けた第3天使アカデミーだったが、天使たちの迎撃により被害はほぼ無し。数名の負傷者を出したのみだった。
 その数名のうちの1人が…私なんだけど…。
「リリィねぇね!大丈夫?」
 警戒態勢が解除されたことを告げるアナウンスが流れて間もなく、モカちゃんが医務室に駆け込んできた。
「モカが間に合ってれば…ケガなんてしなかったのに…」
「いや、全部私が悪いの。甘く見てみんなから離れすぎたんだよ」
「でも深い傷じゃなくてよかった…最初の戦闘で死んじゃった子もいるから…モカ…怖くて…」
「大丈夫。私は死なないよ。絶対に」
「ほんとう?」
「うん。約束する」
「それじゃあ安心だね!」
 モカちゃんは涙を浮かべながら笑った。
 正直私は死んでも元の身体に戻るだけだと甘く考えていた。でもそれは間違いだ。この子たちとこうして絆を育んでいる以上、私は死ぬことはできない。私が死んだことがこの子たちの心に深い傷を残すだろうから。
 憧れたセカイではあるけれど、自分がその中の歯車になっている以上は、私はリリィとして物語を作っていかなければならないんだ。
「こんな時…ハートは…」
 頑張っていた…!どんなに絶望的な時でも諦めずに!足りない分は努力して、仲間の力を借りて、そうしてみんなと並んでいた!
「なるんだ…私も…!」
「リリィねぇね…?」
「モカちゃん!私!強くなりたい!」
「わっ!…うん!なれるよ!だってリリィねぇねの魔法、すごかったもん!焦らずに経験を積んでいこうよ!そしたらみんなを守れるようになるから!」
「うん!頑張る!…ってて…」
 まだ噛まれた傷がじんじんと痛む。
「回復に専念するのも大事なことだよ!今は修行より休養!いい?」
「はーい」
「よし!じゃあもうちょっとしたらみんな帰るからその時また迎えにくるね!」
「ありがとね。モカちゃん」
「うん!じゃあね!」
 モカちゃんが走り去る音が遠ざかると医務室はしんと静まり返った。
 この静けさが今の自分に痛いほど刺さった。
 しばらくするとまた足音がゆっくりと近づいてきた。
「おい…いるか?」
「この声…!ニール?」
 カーテン越しに呼びかけられた声はニールのものだった。
「……ケガをしたと聞いた。大丈夫か?」
「うん。平気。ちょっと毒をもらっちゃったからあんまり動けないだけ」
「それは平気じゃないだろう…」
「でもニールも私の事心配してくれたんだね。ちょっと意外かも」
「心配など……いや、心配してる」
 ニールはカーテンを開けて顔を出した。
「リリィ。…お前を苦しめた魔法生物が憎いか?」
「魔法生物が…」
 この質問の意図を、私は知っている。
「憎くないよ。だって、魔法生物だからって全部悪いやつじゃないでしょ?」
「…不思議なやつだ。お前は。…あいつらみたいだな」
「確かに天使たちは上辺だけ見てるかもしれないけど…いつかはみんなが幸せに暮らせたらいいよね」
 これは、ニールの願いでもあった。
「お前…!……そうか」
 ニールは驚いた顔をしたが再び冷静な顔を取り繕ったようだった。
「ふっ。魔法生物に襲われたのにそんなことが言えるのは、よっぽどのお人好しか」
 わざとイヤミっぽくニールが返す。
「私たちだって傷つけてるでしょ?だったら同じことだよ。お互いに納得いくまでは傷つけあうしかない。でもその先に和解の道があったなら、それは素敵なことだなって。そう思うよ」
「綺麗事だな。……だがまぁ…お前がその道を目指すというのなら…俺が力を貸してやらないこともない」
「えっ!」
「……じゃあな」
 ニールは顔を隠すようにして出ていってしまった。
「ニール……デレた?」
 寡黙で人に心を開かないはずのニールが何故か変わりつつある。その心を開くのはハートのはずなのに…。
「まさか…ね…」
 運命の分岐点は徐々に動きつつあった。

 ようやく身体が軽くなってきた私は教室に戻った。
「あ!リリィ!大丈夫なの?」
「今からみんなで行こうとしていたんです」
「どうだ?毒は抜けたか?」
「うん。なんとか大丈夫そう。傷もハートのおかげでちゃんと塞がってるよ」
「よかったです!毒も抜けるようになればいいのですが…」
「いやいや、傷を塞いでくれただけでも十分だよ!」
「頑張って使えるようになりますね!」
 ハートはグッと力をこめるようなポーズをした。ファンの中でも人気の高い"頑張りハート"のポーズ!実物を見られるとはぁ…!
「あのっ!もう1回!いいかな?」
「えっ。がっ…頑張ります…!」
 出ましたもう1回っ!
「くぅぅう!」
「……リリィ、頭を打った?」
「はっ!あぁいや…なんでもない!」
「でもリリィ、ほんとに最初にしてはすごかったよね~」
「弩の属性付与に、襲われた時に咄嗟に武器を盾にする判断力。結果としては攻撃は受けたが致命傷を避けられたのはあの時の防御があったからこそだろうな」
「スモールデッドの動きや弱点を把握してないと出来ないことだよ!はじめての戦いなのにどうしてわかったの?」
「うーん…なんか想像できた?」
「そのイメージ力こそ強い力になるんじゃないか?」
「ダイヤ、珍しく褒めちぎるじゃん」
「私は正当な評価しかせん」
「ダイヤにそんなに認めてもらえるなんて…!」
「だがまあ、初めてにしては、だ。これからそれに驕るようでは痛い目を見るぞ」
「もう見てます…」
「それ以上に、だ」
「わかったよ。というか!だから私強くなりたいの!…手伝ってくれる?」
「もちろんだよ~!」
「私たち、もう仲間でしょ?」
「リリィさんのお役に立てるなら、なんでもします!」
「私も断る義理はない。ともに戦うんだ。ともに強くなった方がいいだろう」
「ありがとうみんな!」
「モカもいるよ!」
「ありがとね!」
「じゃあ今度から私たちの戦闘訓練に参加してもらおうか!」
「そうしよう!」
「いいの!?」
「なんなら私たちでチームを組もうか。6人で戦えば何も怖くはない」
「えーっ!?」
 原作では同じ学生寮で何度も戦いをともにした4人がようやくここで正式にチームを組むはずだった!まさか私に、さらにストロベリー・モカまで加わっちゃうの!?
「あの…いいの?」
「何が?」
「4人で1チームとか…」
「何人だろうとチームはチームよ」
「そうそう!それに私たち、チームワークばっちりだったでしょ!」
「それは4人が…」
「謙遜するな。お前とモカがいればさらに強くなるんだ」
「うー!わかった!6人でチームを組もう!」
「そうこなくっちゃ!それじゃあチーム名は…」
「エデンズカフェでどう?」
「どうして?」
「エデンはこの国がそれっぽいしカフェは私たちの名前の特徴から最も合いそうなものを選んだの」
「ほえ~すごいんだねリリィ」
「じゃあそうしよう!私たち6人でエデンズカフェ!」
 4人で『フォーカード』になるはずだった天使たちのチームは全く違う名前、人数に塗り替えられてしまったわけだけど…これこの後のストーリーに絶対に関係しちゃうよね…?
「じゃあ早速明日から訓練に参加してもらうから!」
「よろしく~!」
「こちらこそ!よろしくね!」
「…仲間になったからには厳しくいくからな」
「大丈夫だよ~ダイヤ、こうみえて結構お母さん系だから」
「厳しいっていうのが保護者的な意味なんだよね。ふふふ」
「…植え付けるぞ?」
「なんか恐ろしい脅し文句だね…」
「実際ダイヤの植樹魔法は恐ろしいぞ…。真似しようとしても生命を植え付けるのは高い魔力が必要だしあれを食らうことを想像すると色んなところが気持ち悪くなる…」
「中から侵食させるからな。人にやったら大変なことになるだろう」
「…1番敵にしたくないね」
「まぁ杖がなければ操れないくらい強力な魔法だからな」
「私もそういう必殺の魔法が欲しいですぅ…」
「ハートは攻撃のことは考えないでいいんだよ」
「そうそう。でもいてくれなきゃ困るんだから。みんなが安心して戦うにはハートがいてこそ!だよね~!」
「まあとりあえず明日からみんなでトレーニングするから。朝と放課後、集まるんだよ」
「わかった!」
 強い5人の天使が一緒に訓練してくれる。これは私にとって非常に良い経験になるだろう。この世界で生きてくためにも、みんなと戦うためにも、私は頑張るんだ!
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