異世界転生補佐官になったけど担当女神が幼すぎる

瀬戸森羅

文字の大きさ
122 / 285
普通な俺は転生しても普通を目指す

ドンドンニを一緒に

しおりを挟む
「ごめんなさい……もう大丈夫です」
 俺から身体を離したフィーナは、少し暗い表情でそう言う。
「これ以上続けたら、オレ、諦めきれなくなっちゃいそうで、少し怖かったんです。でも今なら……気持ちよくお別れできそうな気がします。……最後まで迷惑かけて、本当にすみません」
 頭を下げて謝罪するが、それを受けても俺自身罪悪感があるから素直に受け取ることもできない。
 しかしそれを否定してやると、更に話はややこしくなりそうなので、それとなく流すことにした。
「お前の気が済んだなら、それでいい」
「……はい」
 それ以上にかける言葉を持たない俺は、少しぎこちない距離を保ちつつ村へと歩を進めた。


 村に着くも、時刻はまだ昼下がり。
 流石にレベッカはまだ学校にいるだろうな。
「そういえば、あの時レベッカさん、ご飯作って待っててくれたんですよね」
「ん、そうだな。今度は俺たちがやってみるか!」
「そうですね! きっと喜ぶと思います!」
 そうと決まれば商店で買い出しだ。
 レベッカの好きな料理は……。
「そういえば、俺の記憶の中のレベッカとは食生活が違うよな」
「レベッカさんは家庭料理を好むようです。あの時教えてくれたんです」
「家庭料理か……」
「ダンナさんが作ってくれたらより嬉しいんじゃないですかぁ?」
「言うなぁ」
 吹っ切れたのかわからないがそんな風に揶揄う。あまり深掘りせずに軽く笑って流した。
「しかし家庭料理……何がいいかな」
「ご主人様って、あんまり料理は得意ではないですよね」
「う、うん」
「オレは腕を磨きましたけど、レベッカさんに召し上がっていただく以上、ご主人様が主体になってお料理した方が良いと思います」
「一理ある……これからはフィーナに任せることはできないものな」
「……そんなわけで、初心者にもおすすめ。簡単でみんなで美味しく食べられる。そんなお料理がございます」
「きかせてくれ、その料理の名を」
「ドンドンニです!」
 ドンドンニ!
「……ってなに?」
「知らないんですか? 有名だと思ったんですが……」
 多分もとの世界の俺、たかしのとこにもなかったし食糧難だったもとの世界線の俺、マークのとこにもなかった。
「いいですか? ドンドンニっていうのは、野菜とお肉をスパイスで煮込んだ……」
「あ、わかったそれ。茶色いでしょ」
「ピンクですよ?」
「ピンク!?」
 なんそれ!
「ちょっと予想した食べ物からだいぶ離れたな……」
「とりあえず揃えましょうか。ポジャの根とホル肉と~……」
 フィーナに言われるままに材料を買っていく。
 ……ていうかまんまカレーじゃないですかこれ?
「あとはこのルーを買って……」
 ほらもうルーって言ってるし。
 ……っと。このルーがピンクなんだな。ほぼ同じじゃんじゃあ。
「このシュリパの甘辛さがヤミツキになるんですよ」
「あ、甘いの? 辛いの?」
「是非味わってください! 驚きますから!」
 レベッカへの食事の用意のはずが俺の方が楽しみになってきてしまったな……。
「それで? こいつは何と食うんだ?」
「米ですよ」
「カレーライスじゃん!」
「かれぇらいす?」
 フィーナは首を傾げる。
「いやその……ほぼ同じ料理があったんだよ。なぜかこの世界、米は名前同じだし……」
「米ってもとの世界にはあったんですか?」
「他のものもあったよ。名前が違うけどな。でも米は同じだ。不思議だよな」
「確かにそれは……でも、おいしいです!」
「それは……そう」
「ですよね!」
 なんか微妙に話題が逸れた気がするが……まぁいいか。
「じゃあ帰って早速作り始めましょう!」
 揃えた材料を買って俺たちは家に帰った。


「あ~……久しぶりだ」
 家に入って早々俺は伸びをする。
「数日前に来ましたよね?」
「この身体が声を上げてるんだよ。帰ってきたぞーって」
「やっとですもんね……」
「今の俺ならなんでも作れる! なんでも食える!」
「よぉし、じゃあ作っていきましょう!」
 時刻は午後三時。
 米を炊いておくのと食材を煮込むのとで必ず時間はかかる。
 だが焦らずに確実に作り上げるだけの時間はある。
「フィーナ。美味しいものを作りたい。教えてくれないか?」
「もちろんですよ! オレもレベッカさんに美味しいものを食べてほしいです!」
「まずはじゃあ……なにしたらいい?」
「野菜を洗ってからその皮を……」
 それからはフィーナ先生の指導により着実にドンドンニは完成へと近づいていった。
 まぁそんな複雑な工程があるわけではない料理だったわけだが……そんな中でできた俺の指のキズはある意味で勲章のようなものかもしれない。


「よぉし、いい感じですね! これならきっと間に合います!」
 なんやかんや手こずってしまい、もう既に四時を過ぎてしまっていた。
「もう少ししたら学校終わるかも。レベッカに会うには今しかないか」
「向かってください! あとはもう煮込むくらいですから!」
「お、おう! 頼んだぞ!」
 ドンドンニのことはフィーナに任せて俺は学校へ向かうことにした。
 ようやくこの姿でレベッカに会える……!
 もうその時はすぐそこまで迫っている。
 高鳴る胸を抑えながら俺は家を出て走り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...