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さいしょのおしごと
めがみなんかじゃない
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「おいララぁ……お前速いってェ」
ララに追いつけないまま家についた。
しかし部屋の灯りはまだついていない……。
「あ、あれ?ララ?」
どうやらまだ家には帰っていないようだ。
「おいまじか……この苦しい時によォ!」
俺は急いで家から飛び出した。
「ララぁ! どこだー!」
とりあえず近所で名前を呼びかけてみる。
しかし返事はない……。
「どこ行ったんだ?」
とりあえず帰る時に通った道を辿る。
もう日が落ちてしまっている。あまり暗い中をひとりで歩かせたくはない。
「ん……?」
しばらく歩いたところで地面が周囲と比べて若干荒れてるところがあった。
「……誰かが通った?」
その先にはあまり手入れのされていない公園があった。
薄暗く、街灯も点滅を繰り返しているような寂れた雰囲気で人影もない。
しかしなんとなく気になってその公園に足を踏み入れる。
伸びっぱなしの雑草が足を踏み出す度につま先に当たる。
足許が見えにくいので気をつけながら歩を進めていくと、どこからか何かが軋むような音が聞こえてくる。
金属が擦れ合うような気味の悪い音が一定のリズムで周囲に響き渡っている。
「……ララ?」
その音に向けて声をかけるも返事は返ってこない。
「ラーラー……ララララーラー……」
これは俺の呼び掛けでは無い。
軋む音の鳴る方から不思議な声が聞こえてくるのだ。
「……いるのか。そこに」
もうすぐそこまで迫っている声の主に向けて話しかける。
「……いない」
鼻をすする音とともに返事がきこえた。
「そうか……ここにもいないか」
「うん……いないの」
声の主は寂しそうにそう呟く。
「残念だ……あいつ、きっと独りで寂しがってるはずなんだ。早く見つけてやらないと……」
「さみしくなんか……ない……あたしは……だいじょうぶなの……」
「大丈夫なもんか!」
その声を否定するように俺は叫ぶ。
そしてその先にあるブランコに腰掛けて声を発しているララを捕まえる。
「お前みたいな子どもがなぁ! そんな無理する必要ねェんだよ!」
「……うぅ」
ララは俺の言葉を浴びて必死で涙を堪えている様子だった。
「お前の母さんがどうなったかは俺にはわからないが……お前の面倒は俺が見るって決めたんだ。だから……勝手にいなくなるな。俺はお前を絶対に独りにさせないからな」
「く……ぐ……」
「どうしたよ、ララちゃん。なんか言いたきゃその口開きゃいいじゃねぇか」
俺がそう言うとララは我慢できないように大きく口を開ける。
「おにぃぢゃん!」
「なんだララ!」
「あだし……さみじぃよ!」
ボロボロと涙を流しながらララが抱きついてくる。
「……そうだよな。お前はまだ独りでいられるような大人じゃない」
ララの頭をそっと撫でながら抱きしめてやる。
「なにしだらいいか……わがんなくて……ほんとはすごぐ……こわがった……しらないひともこわいじ……メリアせんぜーもこわいし……」
泣きじゃくりながらララが今までの心境を吐露する。
「あたじは……めがみなんかじゃない……。おかぁざんがいないがら……だからあたしが……」
「……よくがんばったな」
俺がそう言うと、ララはもう何を言ってるかわからないほどに泣き叫んだ。
そうしてしばらくすると、さっきまであたりに響き渡っていた泣き声は次第に落ち着いていき、あたりには再び静寂が帰ってくる。
泣き疲れたララは涙も拭かないまま眠ってしまった。
それを拭ってやってから、ララを抱えたままゆっくりと立ち上がる。
「……帰ろうな」
ララを起こさないようにゆっくりと歩きながら帰路に着いた。
夜へと変わっていく風が、ひんやりと冷たい。
こいつのお気楽さは天然のものだと思っていたが、どうやら大分無理していたようだ。
まだ幼いこいつには、全部が重たくのしかかっていた。
ひとりで暮らすことも、仕事をすることも、女神であることさえも。
でもこいつにも事情があって、こんな無茶をさせられているのだろう。
それを少しでも俺にぶつけてくれたことが、少しだけ嬉しい。
女神がその仕事を放棄するなんて、本来ならば許されることではない。
だからこいつは、どんな時でもあえて偉そうに振舞っていたし、できもしない仕事を無理にやろうとしていた。
……今日の話は、兄妹だけの内緒話だ。
女神としてじゃなくて、妹の愚痴をきいただけだ。
顔を覗かせ始めていた月だけが、俺たちの秘密を知っている。
メリアさんにも話せない、話してはいけない。
そんな気がする。
ララを守れるのは、多分俺だけなんじゃないか。
そんな気が……するんだ。
ララを持つ手に自然と力が入る。
「……おにぃ……ちゃん」
俺の腕の中で揺られながら、ララは静かに眠り続けていた。
明日もまだ仕事がある。
今はただ、ゆっくり休ませておこう。
「ん……」
家に着く頃、ララは目を覚ました。
「あれ……」
「お目覚めか?」
「……うん」
さっきのことを思い返したのか、歯切れの悪い返事をする。
「明日も早いし、寝る支度して休もうな」
「……うん」
その後もララはあまり喋らないままだった。
ベッドに入る頃になって、何か言いたげに俺の腰掛けるベッドの前にやって来た。
「……おにいちゃん」
「なんだ?」
「……ありがとう」
ぼそりとそう言うと、ララはすぐにベッドに入って布団を頭まで被ってしまった。
「なんもしてねっつの……」
頭を掻きながらベッドから立ち上がる。
「ど、どこいくの!」
ララがいきなり布団をばさりと跳ね除ける。
「え、なに?」
「……」
つい反応してしまっただけらしく、ララは恥ずかしそうに俯く。
「どこにも行かねぇよ。ほら、寝るぞ」
「うんっ!」
ララは今度は布団を被らずに、俺の腕にくっついて来た。
「きょうだけ、いい?」
「別に、いつだっていいよ」
ララは嬉しそうに俺の腕を抱きしめる。
少しだけ寝心地は悪いが……居心地は、最高だな。
ララに追いつけないまま家についた。
しかし部屋の灯りはまだついていない……。
「あ、あれ?ララ?」
どうやらまだ家には帰っていないようだ。
「おいまじか……この苦しい時によォ!」
俺は急いで家から飛び出した。
「ララぁ! どこだー!」
とりあえず近所で名前を呼びかけてみる。
しかし返事はない……。
「どこ行ったんだ?」
とりあえず帰る時に通った道を辿る。
もう日が落ちてしまっている。あまり暗い中をひとりで歩かせたくはない。
「ん……?」
しばらく歩いたところで地面が周囲と比べて若干荒れてるところがあった。
「……誰かが通った?」
その先にはあまり手入れのされていない公園があった。
薄暗く、街灯も点滅を繰り返しているような寂れた雰囲気で人影もない。
しかしなんとなく気になってその公園に足を踏み入れる。
伸びっぱなしの雑草が足を踏み出す度につま先に当たる。
足許が見えにくいので気をつけながら歩を進めていくと、どこからか何かが軋むような音が聞こえてくる。
金属が擦れ合うような気味の悪い音が一定のリズムで周囲に響き渡っている。
「……ララ?」
その音に向けて声をかけるも返事は返ってこない。
「ラーラー……ララララーラー……」
これは俺の呼び掛けでは無い。
軋む音の鳴る方から不思議な声が聞こえてくるのだ。
「……いるのか。そこに」
もうすぐそこまで迫っている声の主に向けて話しかける。
「……いない」
鼻をすする音とともに返事がきこえた。
「そうか……ここにもいないか」
「うん……いないの」
声の主は寂しそうにそう呟く。
「残念だ……あいつ、きっと独りで寂しがってるはずなんだ。早く見つけてやらないと……」
「さみしくなんか……ない……あたしは……だいじょうぶなの……」
「大丈夫なもんか!」
その声を否定するように俺は叫ぶ。
そしてその先にあるブランコに腰掛けて声を発しているララを捕まえる。
「お前みたいな子どもがなぁ! そんな無理する必要ねェんだよ!」
「……うぅ」
ララは俺の言葉を浴びて必死で涙を堪えている様子だった。
「お前の母さんがどうなったかは俺にはわからないが……お前の面倒は俺が見るって決めたんだ。だから……勝手にいなくなるな。俺はお前を絶対に独りにさせないからな」
「く……ぐ……」
「どうしたよ、ララちゃん。なんか言いたきゃその口開きゃいいじゃねぇか」
俺がそう言うとララは我慢できないように大きく口を開ける。
「おにぃぢゃん!」
「なんだララ!」
「あだし……さみじぃよ!」
ボロボロと涙を流しながらララが抱きついてくる。
「……そうだよな。お前はまだ独りでいられるような大人じゃない」
ララの頭をそっと撫でながら抱きしめてやる。
「なにしだらいいか……わがんなくて……ほんとはすごぐ……こわがった……しらないひともこわいじ……メリアせんぜーもこわいし……」
泣きじゃくりながらララが今までの心境を吐露する。
「あたじは……めがみなんかじゃない……。おかぁざんがいないがら……だからあたしが……」
「……よくがんばったな」
俺がそう言うと、ララはもう何を言ってるかわからないほどに泣き叫んだ。
そうしてしばらくすると、さっきまであたりに響き渡っていた泣き声は次第に落ち着いていき、あたりには再び静寂が帰ってくる。
泣き疲れたララは涙も拭かないまま眠ってしまった。
それを拭ってやってから、ララを抱えたままゆっくりと立ち上がる。
「……帰ろうな」
ララを起こさないようにゆっくりと歩きながら帰路に着いた。
夜へと変わっていく風が、ひんやりと冷たい。
こいつのお気楽さは天然のものだと思っていたが、どうやら大分無理していたようだ。
まだ幼いこいつには、全部が重たくのしかかっていた。
ひとりで暮らすことも、仕事をすることも、女神であることさえも。
でもこいつにも事情があって、こんな無茶をさせられているのだろう。
それを少しでも俺にぶつけてくれたことが、少しだけ嬉しい。
女神がその仕事を放棄するなんて、本来ならば許されることではない。
だからこいつは、どんな時でもあえて偉そうに振舞っていたし、できもしない仕事を無理にやろうとしていた。
……今日の話は、兄妹だけの内緒話だ。
女神としてじゃなくて、妹の愚痴をきいただけだ。
顔を覗かせ始めていた月だけが、俺たちの秘密を知っている。
メリアさんにも話せない、話してはいけない。
そんな気がする。
ララを守れるのは、多分俺だけなんじゃないか。
そんな気が……するんだ。
ララを持つ手に自然と力が入る。
「……おにぃ……ちゃん」
俺の腕の中で揺られながら、ララは静かに眠り続けていた。
明日もまだ仕事がある。
今はただ、ゆっくり休ませておこう。
「ん……」
家に着く頃、ララは目を覚ました。
「あれ……」
「お目覚めか?」
「……うん」
さっきのことを思い返したのか、歯切れの悪い返事をする。
「明日も早いし、寝る支度して休もうな」
「……うん」
その後もララはあまり喋らないままだった。
ベッドに入る頃になって、何か言いたげに俺の腰掛けるベッドの前にやって来た。
「……おにいちゃん」
「なんだ?」
「……ありがとう」
ぼそりとそう言うと、ララはすぐにベッドに入って布団を頭まで被ってしまった。
「なんもしてねっつの……」
頭を掻きながらベッドから立ち上がる。
「ど、どこいくの!」
ララがいきなり布団をばさりと跳ね除ける。
「え、なに?」
「……」
つい反応してしまっただけらしく、ララは恥ずかしそうに俯く。
「どこにも行かねぇよ。ほら、寝るぞ」
「うんっ!」
ララは今度は布団を被らずに、俺の腕にくっついて来た。
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