その溺愛は伝わりづらい

七天八狂

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26.ストレートに言えよ

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 抱き寄せられ、彼の唇が触れた。
 触れるだけで終わらず、開けられ、舌が入ってくる。
 まさかのことに驚きながらも、喜びとその感触がじわじわと身体を熱くする。
 片思いじゃないってことは、つまり両思いって意味だよな。
 考えながら、考えられなくなっていく。
 遠慮がちだった彼の舌は少しずつ激しくなり、絡められ、吸われてついばまれて、高ぶらされていく。
 
 それだけで下が反応してしまう。スラックスの中で痛いほど突っ張ってくる。
 まるで、自宅に連れ帰ったあの夜のように。
 他のことは薄ぼんやりとしか覚えていないが、このキスだけは忘れられない。
「ん……」
 思い出しているうちに激しさはいや増して、息ができないほどになってきた。
 目がくらんできて、今にも倒れそう。
 記憶以上に強烈かもしれない。これほどまでのキスを忘れていたとはなんたる不覚。
 いや、こんな情熱的な反応を返しておきながら、なぜあの夜は──

「……なんで、あのときは逃げたんだ」

 名残惜しくも身体を離した。その答えを知らないままでは納得できない。
 身体だけの関係で満足してきたというのに、彼にだけは心をも求めてしまう。
 これが恋というやつなんだろうか。

「あれは、熱があったのだと……」
「嘘つくな。熱なんてないって何度も言ったし、そんなの理由にならない」

 そう。拒否したのはそんな理由ではないはずだ。心配してくれていたから最初は本気でそう思っていたのかもしれないが、熱があったとしたら普通はキスしようとしないだろ?
 
「……また勘違いされているのかと思って」
「勘違い? ……んっ」

 いきなりシャツの中に手が入ってきて、身体が反応してしまった。
 シャツをまくられ、首から首筋へと唇でついばんでくる。それはなかなかにやばい。ぺろっと舐めて、ちゅっと吸う。絶妙な加減に肌が粟立つ。

「まだ話は終わってない。西園寺は……っ」

 息が乱れてしまう。

「悠輔とは三年前に終わってる。俺は……」

 言いかけて彼は手を止めた。
 息を切らせながら彼を見ると、じっとこちらを見ていた。ぞくりとする、あの射るような目で。

「……俺は雅紀以外の誰も愛していない」

 本当に射抜かれてしまった。
 頭が沸騰したみたいに熱くなり、安堵と歓喜が心を満たしていく。

「なんだよそれ……ストレートに言えよ」
 
 彼の首に腕を回してキスをした。
 なんだか泣きそう。いや、目尻にじわっときているから、既に泣いているかもしれない。
 彼の体温を直に感じたくて、シャツの裾から手を入れて触れると、その滑らかな肌に指も歓喜で震えた。
「んっ……」
 しかし、続けられない。
 いつの間にか口元から離れて首筋へとつたっていった舌がいきなり胸に到達し、甘く噛まれてしまった。
「あ……やめろ……」
 やばい。執拗に攻められて反応を止められない。
 しかもいつの間にやらスラックスの前が解かれている。突っ張っていたそれがやや開放され、いきなり彼の指が触れてきた。
 触れながら、またあのキスをされる。ぼうっとして頭が熱くなるやつだ。
 くそ。こちらが攻めるはずなのに、手を出す余裕がない。
 下着越しなのがもどかしいほどやんわりと触れられ、うずくどころではなくなってしまう。
 古い表現だが、このままでは男がすたる。
 キスで陶然となっていた頭を揺さぶり起こし、攻めるべく再びシャツに手をかけた。
 しかし同じタイミングで、下着の中に入ってきた指がぐっとそれを握り、乱暴とも言える手つきで動き始めた。
「ん、んん」
 それがなんとも気持ちよく、攻めるどころではなくなってしまう。
 ああ、異性に触れられるのとは次元が違う。どこがいいのか理解しているからこその動き。
 あのすべすべとした細長い指がそんなことをしているなんて、考えるだけで腰がうずく。
「あっ」
 びくと身体が震える。
 うずくどころじゃない。生暖かい感触が鈴口に触れて、腰が動いてしまう。
 やばい。見ちゃいけない。美しき彼の唇が触れているなんて、見たら不甲斐ない真似をしかねない。
 しかも、彼に出会って以来、自分でさえ触れていないそこは、少しの刺激でも危険な状態なのだから。
 彼の唾液と先走りが混じって、ぬるぬるとこすれる。鈴口を吸われ、くびれを舐められる。
「はあ、あっ」
 気持ちいい。のに、物足りない。先ばかりを攻められて切ない。彼が触れているなんて信じられないほどなのに、それ以上を求めてしまう。
 息を切らせながら彼を見ると、こちらを見上げていたらしく、目が合ってしまった。ぞくりと全身が粟立つ。
 目が合ったあと、彼はそれをすべて口に収めた。
 くそ。死ぬほどエロい。まじで出そう。目も離せないし、刺激もやばい。というか彼の愛撫は、キスと同じくらい強烈で、ただただ喘がされるだけになってしまう。ぐんぐんと快感が高まってくる。迫り来る射精感に追い抜かれそう。
 あ、もう──

「いく……」

 それ以外に考えられなくなったとき、いきなり刺激が消えた。
 あと少しで得られたものが目の前で取り上げられてしまった。
 ちょっと泣きそうになりながら久世を見ると、彼はおもむろにシャツを脱ぎ始めた。
 ああ、そうか。一人だけ満足するわけにはいかない。それは当然だ。男としても、彼に恋する者としても。

「雅紀、来てくれ」
「なに?」
「いかせなくてわるかった」

 彼からキスをされる。
 名残惜しいほど一瞬で、ちゅっと音がしただけで離れていく。
 こちとら半泣きなのに、わざわざ謝るなんて、逆に恥ずかしくなってしまう。
 
「俺でいい?」
「えっ?」
「雅紀の初めてを、俺がもらってもいいかな」

 何を言ってるんだろう。セックスなんて何度もしている。確かに同性とは初めてだけど、八乙女が言っていたように、異性を相手にするのと変わらないはずだ。
 問いかけられた意図に戸惑っていると、彼から手を取られて、どこかへ連れて行かれる。

「どこいくんだ?」

 聞いても答えてくれなかったが、すぐにわかった。
 向かった先は一度借りたことのあるバスルームだった。そのシャワーブースへと連れて来られた。

「雅紀は何もしなくていいから。俺に任せてくれ」
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