生真面目彼女は異世界で自立を目指す

氷雨

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1章

1「弁解の余地をください」

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 「は?えっ?」
 混乱しながら後ろを振りむく。
 「階段は・・・ない?」
 何度周りを見渡しても、いつもの見慣れた風景は全く目に入らない。汚れた階段も、明るいエントランスも、少し古いポストも。


 真っ暗な夜の中、木々の間から動物の鳴き声が聞こえる。
 何もかもが見知らぬ風景。
 住んでいるマンションに、庭と呼べるほど広いスペースなんて無い。

 
 「っ!」
 弾かれたように鞄からスマートフォンを取り出し、震える指先で地図アプリを起動させる。
 「エラー?!こんなときに!」
 見慣れた地図画面が表示されない。待機画面のままアプリが終了する。再起動させても結果は変わらない。
 電波は問題なくひろえているようなのに。
 

 どうして?階段から滑っただけなのに。地図が見れない?地球上ならばどこでも表示してくれるアプリなのに。
 こんなにリアルな夢?じんじんと痛む足が夢ではないことを教えてくれる。
 ぐるぐると疑問が頭をめぐり、呼吸が浅くなる。


 電話もメールもあらゆる連絡手段がエラーになる。
 ブラウザで検索をすると、時間はかかるものの作動する。
 「・・なんなの・・なんで連絡だけできないの・・・」
 混乱が止まらない。涙が滲んでくる。叫びだしたくなる。家に帰るはずだったのに。



 「―――ゥオーーーン」
 「!!!!動かないと」
 野犬の遠吠えが耳に入り、少しだけ冷静になる。
 周囲は暗く、道も見えない中で動きたくはない。
 しかし、このまま朝を待つ勇気もなかった。




 「どこかの田舎なのかな。うん。家を探そう。人と会わないと。」
 自分に言い聞かせるように呟く。スマートフォンで足元を照らしながら、痛む足をかばいながら歩く。
 


 「・・・・はぁ・・・」
 どれくらい歩いたのか。距離としてはたいした距離ではなくとも、精神的に追い詰められてしまう。
 暗い中気を張りながらゆっくりと前を進む。
 進んだ先に人がいるとも限らないのに。

 滲む涙を拭いながら歩き続ける。

 
 「あれ?電池減ってない・・・」
 ずっと照らしていたため、充電度合を確認するも、78%のまま。

 「考えるのやめよう・・・。歩こう」
 考え始めたら止まらない。パニックになってしまう。
 ただただ人の気配を探してゆっくりと歩く。



 「!明るい!?」
 少し先、ぼんやりと揺れる光が見えた。
 現金なもので足に力が入った。前を向いて足早に歩く。

 「誰かの家?場所を聞いて・・・・近くの駅までタクシー呼んでもらえるかな。カードが使えれば大丈夫。」
 うん。大丈夫だ。良かったと気が緩む。早く家に帰りたい。
 足も泥だらけになってしまったし、シャワーを浴びたい。
 恋人に連絡も入れなきゃ。洗濯もしないと。

 
 「・・・あれ?家、じゃない?キャンプ場?」
 ゆらゆらと揺れる光は、松明だった。いくつか張られているテントがあることが確認できる。
 人の声が耳に届く。
 不安な気持ちが押し寄せてくるも、とりあえず誰かいれば大丈夫と念じる。
 


 「おい!!そこから動くな!止まれ!」
 突然の大きな声に肩が揺れる。

 「っえ?」
 思わず足を止める。キョロキョロと周りを見る。
 ガシャガシャという音が近づいてくる。

 「・・・・っ」
 不安があふれ出てくる。
 私有地に入ってしまったのか?でも、変なことはしていないはず。
 迷ってしまったのだ、それを伝えれば大丈夫。何も盗んだりしていない。




 「おい!なぜこんなところにいる!」

 「女・・・?か?」

 「団長に報告してきます」

 「おう、アイン頼む」

 3~4人の男の声がする。
 一方的にまくしたてられて、何も言えない。
 彼らは怒っているのか?何を伝えればいのか?
 冷や汗が止まらない。全身が震える。頭が真っ白になる。

 
 「あっ・・・えっと・・・」
 朔夜を取り囲んだ男達は、銀色に光る槍を突き出していた。
 剣呑な瞳で朔夜を見つめる彼らは、鎧を身にまとっていた。まるで、中世の騎士のように。


 
 「盗賊・・・ではなさそうだな・・」
 「しかし、不審な恰好だ」
 震える朔夜を油断なく見つめつつも、危害を加える様子はないと判断したのか槍をおろす。
 


 「・・・・っ迷って・・・しまっただけです」
 絞り出した小さな声。涙で前が滲む。
 やっと人に会えたのに。ただ家に帰りたいだけなのに。
 色々聞こうと思っていたことは、恐怖によって飛んでしまった。
 

 この人たち、武器を持っているの?殺されるの?
 なんで鎧?コスプレ?
 押し込めていた恐怖が噴き出す。動悸がとまらない。自分の体を抱きしめながら涙目で男達を睨みつける。
 どうしてという気持ちが止まらない。怖い。怖い。怖い。




 「迷う?この近くの村の者か?」

 「あー、嬢ちゃん落ち着け。とりあえず団長のとこ行くぞ。な」
 朔夜の怯えっぷりに気まずくなったのか、男達が慌てて声をかける。
 こくんと頷く朔夜の様子をみつつ、朔夜と一定の距離を保ちながらテントの方へ進んでいく。




 
  
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