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1章
14「公務員は鉄板」
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「お礼、きちんと言えてなかったかも・・・」
せっかく時間を作ってくれたリースとレイに対して申し訳ないことをしてしまったと反省する。
元の世界に帰れないことを改めて実感し動揺してしまった。
夕食もそこそこに寝室のベッドにもぐりこみ、自分の体を抱きしめる。
・・・何か悪いことをしたのだろうか。
恋人と休日を楽しんで、翌日からの授業に備えて。普通の生活を送った日だ。
「悪いことをした=この世界に来る」と考えるのは、この世界で生きる人々に大変失礼ではある。
でも、何か理由が欲しかった。この世界に自分だけが来てしまった理由。
自分を納得させたかった。
ぽろぽろと涙が零れる。
口うるさくても優しい両親にも生意気で可愛い弟にも一緒にいるだけで楽しい大事な友人達にも穏やかで大好きな恋人にも。
もう会えない。
悲しいとか寂しいとか怒りとかやるせなさがぐるぐるとめぐる。
泣いていたって仕方ない。元気に頑張りたいと思う気持ちだってある。
でも、止まらないからどうしようもない。
「頑張る・・・がんばるよ・・・、でも・・うぅう」
嗚咽が漏れる。
そんな簡単に整理出来ない。
「だいたいっ、なんなの、この国のためにって。そればっか・・・」
思い返すと勝手なことばかり。
腹が立ってきてぽこぽこと枕を叩く。
皆勝手だ。
勝手に期待して勝手にお願いしてきて。
どうせ私が断ることなんて想定もしていないし許しもしてくれないのだろう。
「まあ、一人でなんて、生きていけないもん・・・」
どうせこの国にお世話になることはわかっている。
放浪の異邦人みたいなことは出来ない。なんせただの女子大生だ。
向こうだってそれがわかっているだろうから余計にムカつく。
良い人達なのはわかる。
自分が『異邦人』という特別なくくりであるからこそ優しくしてくれている面もあるだろうが、様々な気遣いはありがたかった。衣食住が確保されていることだって本当に幸運なのだろう。
あのまま山で野たれ死んでいたことだってあり得たのだから。
それでも、元の世界とは比べ物にならない。
比べることもおかしい。
「・・・・初めて元の世界に帰った『異邦人』第一号になってやる・・・」
唖然とした顔を浮かべるであろうお偉い面々の顔を見ながら、ざまあみろと言ってみたい。
ある程度泣いてすっきりした面もあるのか、怒りがまさってきたからか、前向きな気持ちになってきた。
「できること、やってやる」
大したことは求めていないと散々王様も言っていた。
見た目からも軍事的な戦力としては求められていないだろう。
最強の『異邦人』とか、漫画かよって感じだ。
自分に出来ることは少ないが、料理の改善くらいは出来そうだ。
大学から一人暮らしでありそこそこ料理は作る。恋人が甘いものが好きだったこともあってお菓子作りだって得意だ。
城内の食事は不味い訳ではないものの、パンが微妙に固かったり、スープが塩辛かったり、もっと美味しくできるんじゃないか?と思ってしまうのだ。
大学では法律を学んでいたけれどこんな小娘が口をだしたら怒られそう。
そもそも政治改革による責任も取れないし。
この国の制度や経済状況等に詳しくなってから小出しにするくらいが良いのだろう。
事務系のバイトをしていたから、事務作業は得意。
・・・・パソコンがあれば。
「そもそも、文字、懸けるのかな・・・・」
日本語で会話が出来ているので安心しているが、文字が全く違ったら勉強しなくてはいけない。
手伝えそうであれば手伝えればいいなと思う。公務員的な?
「コツコツお金貯めよう」
真面目に働いて、安くてもいいから給料が欲しい。公務員(料理研究家兼助っ人文官)なら待遇も安定と信じている。
お金を貯めたら『異邦人』に関する本を買ったり調べて、元の世界に頑張って帰る。
穴だらけの目標でしかないが、今の朔夜を奮い立たせるには十分であった。
「かえりたい」
頑張る。頑張る。だから、帰りたい。
夢であったら覚めてほしい。リアルな夢を見てしまった、と友人達とバカ笑いしたい。
「かえりたい」
頑張れることは頑張って、なんとか自立しないと。
国におんぶにだっこだとどうしようもなくなってしまう。
「公務員になるためにも、国とかお城のことを、知らなきゃ」
気持ちは就活生だ。
しばらくは待機期間として放っておいてくれるだろうし、何が出来るか考えようと決意をする。
この世界に来てから初めて、朔夜は少し前向きな気持ちで眠りについた。
せっかく時間を作ってくれたリースとレイに対して申し訳ないことをしてしまったと反省する。
元の世界に帰れないことを改めて実感し動揺してしまった。
夕食もそこそこに寝室のベッドにもぐりこみ、自分の体を抱きしめる。
・・・何か悪いことをしたのだろうか。
恋人と休日を楽しんで、翌日からの授業に備えて。普通の生活を送った日だ。
「悪いことをした=この世界に来る」と考えるのは、この世界で生きる人々に大変失礼ではある。
でも、何か理由が欲しかった。この世界に自分だけが来てしまった理由。
自分を納得させたかった。
ぽろぽろと涙が零れる。
口うるさくても優しい両親にも生意気で可愛い弟にも一緒にいるだけで楽しい大事な友人達にも穏やかで大好きな恋人にも。
もう会えない。
悲しいとか寂しいとか怒りとかやるせなさがぐるぐるとめぐる。
泣いていたって仕方ない。元気に頑張りたいと思う気持ちだってある。
でも、止まらないからどうしようもない。
「頑張る・・・がんばるよ・・・、でも・・うぅう」
嗚咽が漏れる。
そんな簡単に整理出来ない。
「だいたいっ、なんなの、この国のためにって。そればっか・・・」
思い返すと勝手なことばかり。
腹が立ってきてぽこぽこと枕を叩く。
皆勝手だ。
勝手に期待して勝手にお願いしてきて。
どうせ私が断ることなんて想定もしていないし許しもしてくれないのだろう。
「まあ、一人でなんて、生きていけないもん・・・」
どうせこの国にお世話になることはわかっている。
放浪の異邦人みたいなことは出来ない。なんせただの女子大生だ。
向こうだってそれがわかっているだろうから余計にムカつく。
良い人達なのはわかる。
自分が『異邦人』という特別なくくりであるからこそ優しくしてくれている面もあるだろうが、様々な気遣いはありがたかった。衣食住が確保されていることだって本当に幸運なのだろう。
あのまま山で野たれ死んでいたことだってあり得たのだから。
それでも、元の世界とは比べ物にならない。
比べることもおかしい。
「・・・・初めて元の世界に帰った『異邦人』第一号になってやる・・・」
唖然とした顔を浮かべるであろうお偉い面々の顔を見ながら、ざまあみろと言ってみたい。
ある程度泣いてすっきりした面もあるのか、怒りがまさってきたからか、前向きな気持ちになってきた。
「できること、やってやる」
大したことは求めていないと散々王様も言っていた。
見た目からも軍事的な戦力としては求められていないだろう。
最強の『異邦人』とか、漫画かよって感じだ。
自分に出来ることは少ないが、料理の改善くらいは出来そうだ。
大学から一人暮らしでありそこそこ料理は作る。恋人が甘いものが好きだったこともあってお菓子作りだって得意だ。
城内の食事は不味い訳ではないものの、パンが微妙に固かったり、スープが塩辛かったり、もっと美味しくできるんじゃないか?と思ってしまうのだ。
大学では法律を学んでいたけれどこんな小娘が口をだしたら怒られそう。
そもそも政治改革による責任も取れないし。
この国の制度や経済状況等に詳しくなってから小出しにするくらいが良いのだろう。
事務系のバイトをしていたから、事務作業は得意。
・・・・パソコンがあれば。
「そもそも、文字、懸けるのかな・・・・」
日本語で会話が出来ているので安心しているが、文字が全く違ったら勉強しなくてはいけない。
手伝えそうであれば手伝えればいいなと思う。公務員的な?
「コツコツお金貯めよう」
真面目に働いて、安くてもいいから給料が欲しい。公務員(料理研究家兼助っ人文官)なら待遇も安定と信じている。
お金を貯めたら『異邦人』に関する本を買ったり調べて、元の世界に頑張って帰る。
穴だらけの目標でしかないが、今の朔夜を奮い立たせるには十分であった。
「かえりたい」
頑張る。頑張る。だから、帰りたい。
夢であったら覚めてほしい。リアルな夢を見てしまった、と友人達とバカ笑いしたい。
「かえりたい」
頑張れることは頑張って、なんとか自立しないと。
国におんぶにだっこだとどうしようもなくなってしまう。
「公務員になるためにも、国とかお城のことを、知らなきゃ」
気持ちは就活生だ。
しばらくは待機期間として放っておいてくれるだろうし、何が出来るか考えようと決意をする。
この世界に来てから初めて、朔夜は少し前向きな気持ちで眠りについた。
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