六道プリンセス!~世界一民度の低い町で、人類を守るために闘う魔法少女たち~

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第6章 出現! 悪魔のプリンセス!

第57話 優子という義妹

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 優子はよく働く子だった。

 お手伝いしまくり。
 ご飯食べたらちゃんと食器下げて自分で洗うし。
 ゴミの分別するし。

 最近、庭で飼いはじめた羆の餌を買いに行くときなんか。

「お姉ちゃん、一緒に行くよ」

 ……羆の餌を買うときに手が要ることをちゃんと分かってて。
 手伝ってくれるんだよね。

「ありがとう」

 お礼を言って、2人で出て行った。



 2人で商店街のお肉屋さんにやってきた。

「お肉屋さん、病死肉50キロくださいな」

 羆の餌は病死肉がデフォ。
 病死肉は食用になんないから安いし。
 羆はシメるまで生きていればいいので、栄養バランスなんて考えなくて良いからね。

「ああ、花蓮ちゃん。まだ羆を飼ってるんだねぇ」

 肉屋のおじさんが病死肉をビニール袋に取り分けてくれながら、私の家の事情を察してくれる。

 今年の夏、私は飛騨の山に山籠もりに行って。
 そこで羆を何頭か倒したんだけど。

 その羆の子供を何頭か見つけちゃって。
 ほっとくと野垂れ死にするかもしれないし、しょうがないから拾って来たんだ。

「最期まで飼い切りますよ。成獣になる日が楽しみです!」

 熊は3年で成獣するみたいだし。
 で、子育て期間が約2年。

 だからまあ、あと1~2年で成獣なんだよね。

 成獣して、倒すのに十分な体躯に育ったら、庭で全頭倒す。

 その日は熊肉パーティーだよ!

「熊送りをするときは、おじさんも呼んでくれると嬉しい」

 熊の肉は珍味だからねえ。
 おじさんは遠い目をする。

「肉の消費を手伝っていただけるなら是非!」

 毛皮は売ってお小遣いにするけど、肉は生ものだから腐るもんね。
 無駄にしてはいけないから。

 そんな風に談笑していると

「はい、病死肉50キロ」

 持って来たリュックに、30キロと20キロに分けて詰めてくれた病死肉。

 私たち義姉妹は2人、分けて背負って持って帰るのだ。



「学校は楽しい?」

 30キロのリュックを背負って歩きながら、隣を歩く優子に訊く。
 20キロのリュックを背負っている優子は

「うん。体育の時間、先生が居ないから自習なのがちょっと困るけど」

 ……体育教師が存在すると不味いから、小中高、先生が体育を教えるのは禁止なんだよね。
 この阿比須町では。

「……体育では何をしてるの?」

「ランニングと自重筋トレ」

 ……まぁ、そうなるよねぇ。
 ウチの学校も、45分間延々走るだけか、延々腕立て伏せと腹筋背筋、懸垂。

 教師が居ないからしょうがないんだ。

 そんな会話をしながら帰宅した。

「ただいまー」

「ただいま帰りました」

「おかえり」

 お母さんの返事を聞きながら、私はドスンと買って来た肉を下ろした。
 そして

「お母さん、ちょっと羆に餌やりに行って来るね」

 そう言って、病死肉を買いに行く前に冷凍室から出して解凍していた肉数キロを持って、庭の檻に向かって行った。



 グオオオッ!

 広さ100平米くらいの檻で、飼育している羆たち。
 暴れまくってるなぁ。

「……荒れてるね」

 餌やりについてきた優子が、羆たちの様子を見て一言。

「まあ、出来れば熊送りに使用する羆の量は絞りたいし」

 最初、10頭の羆を拾って来たんだけど。

 そこに、9頭分の餌の病死肉を投げ込んだ。

 すると限界まで飢えた羆の子熊たちは、その9頭分の餌を奪い合い。
 10頭のうち、強い9頭が残った。

 そしてその次は8頭分の餌を投げ込み……

 現在、7頭。

 孤戮闘こりくとうっていうらしいんだけど。
 精鋭エリートを育てるための飼育法。

 その辺を優子に説明すると

「……なるほど。熊送りに相応しい羆になってもらうための、飼い主としての愛の鞭」

 優子はそういって、しきりに頷いていた。

 分かって貰えて嬉しいなぁ。

 私はそんなことを思いながら、熊の檻のダイヤル錠の番号を合わせていた。
 鍵がダイヤル錠なら、鍵を持ってこなくてもいいもんね。

 番号を合わせながら私は

「ちょっと危ないから、優子は離れててね」

「うん。分かったお姉ちゃん」

 番号は……9・0・9・6……と。

 鍵が開いたので、檻の扉を全開にし

「はーい、餌だよー」

 6頭分の肉を檻の中に入って、奥に向かって投げ込む。
 羆たちは、それに殺到していく。

 ……私には1頭も向かってこない。
 まあ、この子たちは親熊を目の前で私に倒されているからね。
 勝てない闘争は挑まんよね。

 所詮ケダモノだし。

 ……と、思っていたら。

 羆のうちの1頭が、全開になっていた檻の出入り口に向かって走り出したんだ。
 しまった、と思った。
 
 正直、油断していた。

 この子たち、すっかり心が折れて、私に襲い掛かって来ることはないと思っていたのに。
 まだ牙を抜かれていなかったなんて!

 その先には、優子がいた。
 自分の迂闊さで招いたこの事態……!

 肝が冷えた。
 だから私は叫んでいた。

「優子! 死んだふりしてぇぇぇぇっ!」

 羆は自分が仕留めた死体以外は存在を認識できなくなる習性がある。
 だから、羆に遭遇した場合、羆を倒す実力が無い人は死んだふりをするのが有効な解決手段なんだけど……

 その後起きた事態は、私の予想を超えていた。
 それは……

「阿比須族滅流奥義! 脊髄崩壊突き」

 自分に振り下ろされた羆の爪を、優子は左腕で弾くようにして上段受けをし。
 それと同時に、羆に拳を叩き込んだ。

 優子の拳を喰らった羆は、歪に二つ折れし。
 そのまま動かなくなる。

 自分に圧し掛かって来る、絶命した熊の身体を押しのけて

「ちょっとビックリした」

 そう、なんでもない風に言う優子。

 そして私はそれを見て、衝撃を受けていた。

 ……腹に突きを入れて、羆の背骨を崩壊させたの……?
 力の伝播……鎧通しのようなもの……?

 いや、それよりも……

 阿比須族滅流……阿比須真拳の源流……!
 それを使うなんて……!

 優子、この子って……

 何者なんだろうか……?
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