聖女の証を持っていますが、転生前に聖女は断っていたようなので、国を救う事は出来ません

花見 有

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時間停止ルタンサレタ!」

 高位魔術である時間を操る魔術、時間停止ルタンサレタにかかると魔獣は数秒動けなくなる。その内にルーベルトが魔獣を切り裂いていく。
 二人の活躍ぶりに他の騎士等は目を見張っていた。

「団長、さすがマデリーナ様ですね。ああやって魔獣の動きを止めてもらえれば、こちらとしても楽に魔獣を倒す事ができます」

「ああ、本当に頼りになるな。それにルーベルトだ。久しぶりに前線だがやはり腕は確かだな。こちらに引き抜きたいくらいだ」

「ダメですよ!団長!ルーベルトには聖女様をお守りする大事な役目があるんですから!」

「も、もちろん分かっている。しかし、惜しいなぁ……」

 騎士団員と団長の会話はマデリーナにも聞こえてきていた。自分の力が役に立っている事が嬉しい反面ルーベルトの事が気にかかってしまう。

 そうかよね。ルーベルトは実力を買われて聖女の護衛騎士になったんだもの。私の護衛になってからはこういう場所には来られなかったのよね。私の存在がルーベルトの活躍の場所を奪ってしまっているのよね……。


 ◇◆◇


 魔獣討伐の間の寝食は森で野営をする事になっている。

「マデリーナ様?どうしましたか?食事が全然進んでいませんが、口に合いませんか?」

 なかなか夕食が進まないでいるとルーベルトが心配そうに見てきた。

「いいえ、そんな事ないわよ。大丈夫」

 この世界に転生してからはいつも料理人が作った料理を食べていたから心配されるのも無理はないが、野営の食事は前世の戦場に比べれば全然マシである。食事が進まないのは先程の団長と騎士等の話しを気にしてしまっているからだった。

「明日はもっと魔界の境界近くに行きますから、今日よりも魔獣と戦う事になります。ですから、しっかりと食べて身体を休めて下さいね」

「ええ。分かったわ」

 マデリーナが食事を再開すると、ルーベルトは安心したように自分も食べ始めた。

「ねえ、ルーベルト。本当はもっと違う仕事をしたいんじゃない?」

「どういう事ですか?」

「ほら、私の護衛っていっても世話係のような事ばかりさせられているでしょう?せっかく騎士になって、実力もあるのだからもっとあなたの力を活かせる仕事をしたいんじゃないかと思って」

「あなたの護衛は最も力を活かせると思っております。それとも私の力ではマデリーナ様の護衛は務まりませんか?」

「そ、そんな事ないわ。むしろ私を護衛する為にあなたを独占しているのが申し訳なくて」

すると何故かルーベルトは照れて頬を赤く染める。

「独占ですか……?それは私も同じだと思うんですが……」

「え?」

「私もマデリーナ様の護衛をする事であなたの事を独占してしまっている……」

照れた顔で見つめられてこちらも移ったかのように頬が熱くなる。

「あ!いや、失礼致しました。聖女様を独占しているなどと、大変ご無礼な事を申しました」

「い、いえ、いいのよ。気にしないで。元々私が言い始めた事だもの」

少し気恥ずかしい空気が二人を包んで、たまらずマデリーナは空気を誤魔化すように食事を口にかきこんだ。


そんな二人の空気を知ってか知らずか討伐隊の女性騎士が話しかけてきた。

「あの!マデリーナ様、少しよろしいですか?」

「スジャーナ、マデリーナ様はまだ食事中だ。後にしてくれ」

とルーベルトが言った。

「いいよ、ルーベルト。もう食べ終わったわ。どうしたの?」

マデリーナはスジャーナと呼ばれた女性騎士の方を向いた。

「今日、マデリーナ様が使っていた時間停止ルタンサレタの術、私も習得しようと練習しているのですが、なかなか上手くいかなくて。よろしければアドバイスなど頂ければと……」

「ええ、いいわよ」

 騎士団に所属する人達は大なり小なり魔術が扱える人が殆んどだと聞く。特にこの魔物討伐隊は剣術と魔術に優れた者で構成されている。

「ええ!良いなあ!俺も見てもらいたいんですが」「あ、じゃ、じゃあ僕も」

 次々と騎士団員等が集まってきて、皆でワイワイと騒ぎ始めた。マデリーナはそんな賑やかな事はこの世界に来て初めてだった事もあり、初めは驚いていたが次第に前世のように仲間と騒いでいた時の感覚が蘇りとても楽しくなってきた。

「フフフッ。じゃあ、みんなでやってみましょう」

 いつもオクージュ先生と二人で鍛錬をしていたマデリーナにとって同世代の者らと慣れ合うこともなかった為、この状況がとても嬉しかった。
 そんな楽しそうなマデリーナをルーベルトは優しい笑みで見守っていた。

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