16 / 20
第16話
しおりを挟む
「なに!?また、あいつ来たのか!?」
ガバス食堂でボッカさんと落ち合うと、トウダさんはさっきの出来事を早速話した。
「そうなんすよ!正午過ぎてるから荷物は没収だー!っていう言い出して。でも頭、こいつ凄えんですよ!時間が読めるんだって!それで、マルケルが部下の男に、まだ正午じゃねえ!ってビシッと言ったら、男が真っ赤になって!俺たちゃその間に荷物を全部移動させ立ってわけですよ!」
そんな、乱暴な言い方はしてないけど……。とマルケルはトウダを見て苦い顔をする。
「マルケル凄いな!時計が読めるのか!?え?もしかして、文字も読めるのか?計算は?」
「まあ、それなりに……」
「本当か!やっぱり俺の勘は冴えてるな!マルケルがいれば、ホスタイ伯爵の所の奴に言い負かされなくなるぞ!あいつら、俺らに制限かけて、自分等は他の時間に大量に仕入れてるらしいからな」
とボッカは眉根を寄せると店主のガバスを見て、何かを視線でやり取りしていた。
その様子にマルケルは、少し引っかかりながらもロッキン商会の役に立てた事に安心した後、神妙な顔付きになってボソリと呟いた。
「それにしても、ここの港町がこんなに厳しく制限されて、ホスタイ伯爵が好き勝手やってるって、ヴァロワ侯爵は知ってるのかなぁ」
するとその時、ガシャーンとレイラが持っていたトレーが落ちた。
「あ、も、申し訳ございません」
焦ってレイラは、トレーを拾うとマルケルの方を何か言いたげに見ていた。
「あの……、なにか?」
「な、何でもありませんわ!」
そう言って、レイラは厨房へ戻っていった。
なんだろう?何か言いたそうに見えたけど……。それに彼女ってもしかして貴族?染み付いた言葉や動作はなかなか取れないもんな。
彼女はどうしてここで働いてるんだろう。たまに聞くのは、政略結婚が嫌で娘が家出するとかあるけど……、彼女もそれなのか?一般人として生活するのは大変じゃないのか?
マルケルは、同じ貴族であろうレイラの事が気になっていた。
◇
一方、王宮では――
「アンドレス王子、こちらの書類に目を通して頂いてよろしいですか?」
「ああ」
ブラスに渡された書類にアンドレスは眉を寄せた。
「東部は輸入量が大幅に増えているな。なぜだ?」
「ええ。東部は昨今の干ばつ被害で作物の不作が続いているのです。他国からの輸入に頼るのは必然かと……」
「そうか……んん」
少し、唸った後アンドレスはマリベルを見た。
「マルケル、ウリオス領の最近の収穫量はどうだ?」
「ウリオス領では、特に被害もなく作物の収穫も盛んに行われています。収穫量にも余裕がありますよ」
「だったら、輸入ではなく国内で賄ったらどうだ?」
アンドレスはブラスに厳しい視線を向けた。
「……ええ。そうですね。検討致します」
ブラスは曖昧な笑みを浮かべると王子の執務室から出ていった。
検討ねぇ……。そもそも今年って干ばつ酷かったなんて話、お父様してたかしら?まあ、ヴァロワ家の領土の事は、私が口出し出来る事でもないけど。それよりも……今はこの状況の方が不味いわ。
アンドレス王子と二人になった執務室で、マリベルは気恥ずかしくて視線を彷徨わせていた。
ああ、誰かいれば大丈夫だけれど、二人になるとどうしてもアンドレス王子を意識しちゃう。
この間の事が脳裏を過る。
アンドレス王子に抱きしめられた感覚が、近付く唇がマリベルの頭を一杯にして頬を赤くさせた。
駄目よ!私はアンドレス王子を守るって決めたんだから!マリベルとしての気持ちなんて消し去るのよ!
気持ちを整え、キリッとしてアンドレス王子を見た。
すると、アンドレス王子は机に頬杖をついて、こちらを射抜くように見つめていた。
その視線に整えた気持ちは一瞬で崩れ去り、マリベルは再度、顔を赤らめてしまう。
な、なんて視線で見てるのよ!
「お前さ、二人になった途端にそういう顔するなよ」
「そ、そういう顔ってなんですか!元々こういう顔ですけど!?」
すると、カタンと王子がイスから立ち上がり、マリベルの方へと近付いてくる。
「なるほど。ではお前は、元から俺を見て顔を赤くするという事だな?」
「あ……の、そ、それは……」
ジリジリと迫ってくるアンドレスに、マリベルは身動きが取れなくなる。
すると、アンドレスの指がマリベルの頬に触れた。
「こんなに頬を染めて……。マリベル、お前本当は俺の事……」
アンドレスの言葉にマリベルがギュッと瞳を閉じた時だった――
――コンコン
扉がノックされてサッとアンドレスの手がマリベルから離れる。
「誰だ?」
アンドレスが不機嫌そうな声で返事をすると扉が開いた。
「私よ」
執務室にやって来たのは王妃様であった。そして、王妃様は続けて言った。
「ねえ、アンドレス。今度の舞踏会、マリベルちゃんも出席するって本当なの?貴方がそう言ったって聞いたんだけど」
「え!?」
思わず私が驚きの声を出してしまったのは仕方がない。
「あら、マルケルも知らなかったの?」
「あ……、えーと」
マリベルが王妃様に問われて答えに詰まっていると、アンドレスはクスリと笑って言った。
「ああ。マリベルは参加する」
アンドレスは言い切るとマリベルを見てニヤリとした。
アンドレス王子、一体どういうつもりなの!?
マリベルが焦るのを見て、アンドレスは一人笑いを堪えるのだった――
ガバス食堂でボッカさんと落ち合うと、トウダさんはさっきの出来事を早速話した。
「そうなんすよ!正午過ぎてるから荷物は没収だー!っていう言い出して。でも頭、こいつ凄えんですよ!時間が読めるんだって!それで、マルケルが部下の男に、まだ正午じゃねえ!ってビシッと言ったら、男が真っ赤になって!俺たちゃその間に荷物を全部移動させ立ってわけですよ!」
そんな、乱暴な言い方はしてないけど……。とマルケルはトウダを見て苦い顔をする。
「マルケル凄いな!時計が読めるのか!?え?もしかして、文字も読めるのか?計算は?」
「まあ、それなりに……」
「本当か!やっぱり俺の勘は冴えてるな!マルケルがいれば、ホスタイ伯爵の所の奴に言い負かされなくなるぞ!あいつら、俺らに制限かけて、自分等は他の時間に大量に仕入れてるらしいからな」
とボッカは眉根を寄せると店主のガバスを見て、何かを視線でやり取りしていた。
その様子にマルケルは、少し引っかかりながらもロッキン商会の役に立てた事に安心した後、神妙な顔付きになってボソリと呟いた。
「それにしても、ここの港町がこんなに厳しく制限されて、ホスタイ伯爵が好き勝手やってるって、ヴァロワ侯爵は知ってるのかなぁ」
するとその時、ガシャーンとレイラが持っていたトレーが落ちた。
「あ、も、申し訳ございません」
焦ってレイラは、トレーを拾うとマルケルの方を何か言いたげに見ていた。
「あの……、なにか?」
「な、何でもありませんわ!」
そう言って、レイラは厨房へ戻っていった。
なんだろう?何か言いたそうに見えたけど……。それに彼女ってもしかして貴族?染み付いた言葉や動作はなかなか取れないもんな。
彼女はどうしてここで働いてるんだろう。たまに聞くのは、政略結婚が嫌で娘が家出するとかあるけど……、彼女もそれなのか?一般人として生活するのは大変じゃないのか?
マルケルは、同じ貴族であろうレイラの事が気になっていた。
◇
一方、王宮では――
「アンドレス王子、こちらの書類に目を通して頂いてよろしいですか?」
「ああ」
ブラスに渡された書類にアンドレスは眉を寄せた。
「東部は輸入量が大幅に増えているな。なぜだ?」
「ええ。東部は昨今の干ばつ被害で作物の不作が続いているのです。他国からの輸入に頼るのは必然かと……」
「そうか……んん」
少し、唸った後アンドレスはマリベルを見た。
「マルケル、ウリオス領の最近の収穫量はどうだ?」
「ウリオス領では、特に被害もなく作物の収穫も盛んに行われています。収穫量にも余裕がありますよ」
「だったら、輸入ではなく国内で賄ったらどうだ?」
アンドレスはブラスに厳しい視線を向けた。
「……ええ。そうですね。検討致します」
ブラスは曖昧な笑みを浮かべると王子の執務室から出ていった。
検討ねぇ……。そもそも今年って干ばつ酷かったなんて話、お父様してたかしら?まあ、ヴァロワ家の領土の事は、私が口出し出来る事でもないけど。それよりも……今はこの状況の方が不味いわ。
アンドレス王子と二人になった執務室で、マリベルは気恥ずかしくて視線を彷徨わせていた。
ああ、誰かいれば大丈夫だけれど、二人になるとどうしてもアンドレス王子を意識しちゃう。
この間の事が脳裏を過る。
アンドレス王子に抱きしめられた感覚が、近付く唇がマリベルの頭を一杯にして頬を赤くさせた。
駄目よ!私はアンドレス王子を守るって決めたんだから!マリベルとしての気持ちなんて消し去るのよ!
気持ちを整え、キリッとしてアンドレス王子を見た。
すると、アンドレス王子は机に頬杖をついて、こちらを射抜くように見つめていた。
その視線に整えた気持ちは一瞬で崩れ去り、マリベルは再度、顔を赤らめてしまう。
な、なんて視線で見てるのよ!
「お前さ、二人になった途端にそういう顔するなよ」
「そ、そういう顔ってなんですか!元々こういう顔ですけど!?」
すると、カタンと王子がイスから立ち上がり、マリベルの方へと近付いてくる。
「なるほど。ではお前は、元から俺を見て顔を赤くするという事だな?」
「あ……の、そ、それは……」
ジリジリと迫ってくるアンドレスに、マリベルは身動きが取れなくなる。
すると、アンドレスの指がマリベルの頬に触れた。
「こんなに頬を染めて……。マリベル、お前本当は俺の事……」
アンドレスの言葉にマリベルがギュッと瞳を閉じた時だった――
――コンコン
扉がノックされてサッとアンドレスの手がマリベルから離れる。
「誰だ?」
アンドレスが不機嫌そうな声で返事をすると扉が開いた。
「私よ」
執務室にやって来たのは王妃様であった。そして、王妃様は続けて言った。
「ねえ、アンドレス。今度の舞踏会、マリベルちゃんも出席するって本当なの?貴方がそう言ったって聞いたんだけど」
「え!?」
思わず私が驚きの声を出してしまったのは仕方がない。
「あら、マルケルも知らなかったの?」
「あ……、えーと」
マリベルが王妃様に問われて答えに詰まっていると、アンドレスはクスリと笑って言った。
「ああ。マリベルは参加する」
アンドレスは言い切るとマリベルを見てニヤリとした。
アンドレス王子、一体どういうつもりなの!?
マリベルが焦るのを見て、アンドレスは一人笑いを堪えるのだった――
1
あなたにおすすめの小説
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
ヒュントヘン家の仔犬姫〜前世殿下の愛犬だった私ですが、なぜか今世で求愛されています〜
高遠すばる
恋愛
「ご主人さま、会いたかった…!」
公爵令嬢シャルロットの前世は王太子アルブレヒトの愛犬だ。
これは、前世の主人に尽くしたい仔犬な令嬢と、そんな令嬢への愛が重すぎる王太子の、紆余曲折ありながらハッピーエンドへたどり着くまでの長い長いお話。
2024/8/24
タイトルをわかりやすく改題しました。
氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!
屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。
どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。
そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。
そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。
望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。
心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが!
※あらすじは時々書き直します!
捨てられ聖女は、王太子殿下の契約花嫁。彼の呪いを解けるのは、わたしだけでした。
鷹凪きら
恋愛
「力を失いかけた聖女を、いつまでも生かしておくと思ったか?」
聖女の力を使い果たしたヴェータ国の王女シェラは、王となった兄から廃棄宣告を受ける。
死を覚悟したが、一人の男によって強引に連れ去られたことにより、命を繋ぎとめた。
シェラをさらったのは、敵国であるアレストリアの王太子ルディオ。
「君が生きたいと願うなら、ひとつだけ方法がある」
それは彼と結婚し、敵国アレストリアの王太子妃となること。
生き延びるために、シェラは提案を受け入れる。
これは互いの利益のための契約結婚。
初めから分かっていたはずなのに、彼の優しさに惹かれていってしまう。
しかしある事件をきっかけに、ルディオはシェラと距離をとり始めて……?
……分かりました。
この際ですから、いっそあたって砕けてみましょう。
夫を好きになったっていいですよね?
シェラはひっそりと決意を固める。
彼が恐ろしい呪いを抱えているとも知らずに……
※『ネコ科王子の手なずけ方』シリーズの三作目、王太子編となります。
主人公が変わっているので、単体で読めます。
【完結】年下幼馴染くんを上司撃退の盾にしたら、偽装婚約の罠にハマりました
廻り
恋愛
幼い頃に誘拐されたトラウマがあるリリアナ。
王宮事務官として就職するが、犯人に似ている上司に一目惚れされ、威圧的に独占されてしまう。
恐怖から逃れたいリリアナは、幼馴染を盾にし「恋人がいる」と上司の誘いを断る。
「リリちゃん。俺たち、いつから付き合っていたのかな?」
幼馴染を怒らせてしまったが、上司撃退は成功。
ほっとしたのも束の間、上司から二人の関係を問い詰められた挙句、求婚されてしまう。
幼馴染に相談したところ、彼と偽装婚約することになるが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる