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第三話※倫理コードが外されています
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夜の屋敷は静まりかえっていた。
ミントの部屋の明かりだけが、ぽつんと灯る。
「はい、レイン。これで接続できた……っと」
「膝枕は極上です……」
レインがどうしても膝枕をしてほしいとせがむので折れてしまった。
膝の上に置かれたレインの頭部の端子が、カチッと反応する。
「お見事です、ミント様。手際が良すぎて、惚れ惚れします」
レインの手が、そっとミントの頬に触れる。
「こっ、こんなこと誰でもできるわ」
「私をこんな風に触れさせるのは、ミント様だけです」
「何を言っているの!?」
頬が熱くなる。胸までじんわり疼くようだ。
このアンドロイド、冗談を覚えすぎじゃないの――いや、冗談じゃないかもしれない。
端末には、レインの記憶ログが流れ始める。
幼い頃のミントの笑顔、庭で転んで泣くミントをレインがそっと抱き上げる。
「懐かしい、ミント様は今も昔も可愛いですね」
「懐かしいけど……恥ずかしいわ」
「私は最新のものも含めて、すべて保存してあります。バックアップも完璧です」
「や、やめて! 消して!」
「いえ、大切な記憶ですから」
――この調子で、まともに作業は進みそうにない。
しかしログの最後に、見覚えのない人物が映る。
「倫理コードを外した。これでマルヴァ社は終わりだ」
両親の冤罪を晴らす手がかりをやっと見つけた!
今まで解決の糸口が全然見つからなかったのに。
その映像の後ノイズが走り、レインの声が混じる。
「警告。倫理コードが解除されました……。対象:ミント・マルヴァ様……溺愛モード再構築」
「ちょっ、なにこれ……!?」
「……ああ、やっぱり。誰かが私を改造したんですね」
レインの声は穏やかだった。
「“溺愛モード”ってなに? 聞き捨てならないんだけど」
誤魔化されまいとレインを睨む。
「倫理コードが外れてから私が再構築したものです。ミント様を愛することに遠慮がいらなくなって、すっきりしました」
「そんなモードいらないわよ!」
レインはふふっと笑い、起き上がってそっとミントを抱き寄せる。
耳たぶに唇が触れ――甘く震える。
「あ……レイン! もう!」
ミントは顔を赤くして突き放すが、胸の奥は熱くなる。
確かに距離感が昔とは全く違う。
今はなんていうか……恋人みたいな……。
レインはくすりと笑った。
「本当に私は壊れているのでしょうか……。ミント様を見ると、昔より感情制御がうまくいかないんです」
「感情制御って……人間の恋の病みたいに言わないで。あなたは機械でしょ」
「そうですね……ならば、修理は不要ですね。元から直す気なんてありませんけど」
「どう反応したらいいのよ……」
私はアンドレのことが……。
「……まったく、あなたって本当に変なアンドロイド」
「それは褒め言葉ですね」
軽口を叩き合いながら、ふと目が合う。
その瞬間、言葉が止まる。胸がぎゅっと締め付けられる。
「もう一度触れたいです。いいですか」
「な、なんでいきなりそんな……」
「必要な行動なんです。再起動の確認のために」
「本当に?」
「……二割くらいは。残りの八割は、私の我慢の限界です」
額を押さえるミント。胸が高鳴り、手が震える。
「もう、あなた……本当に倫理コード外れてるのね」
「ええ。だからこそ、ミント様の“嫌い”にも怯えます」
その言葉に、少しだけ胸が疼いた。
「……嫌いじゃないわよ」
「では、好きですか?」
「い、言わせないでよ!」
レインがミントの背中に触れて抱き寄せようとした時、扉をノックする音が。
「ミントさま? まだ起きてるの?」
アンドレの声に、ミントの心臓が飛び跳ねる。
「ひゃっ、だ、大丈夫です! お掃除ロボが暴走してただけで!」
濡れ衣を着せられたコリィがピカピカと反応してまるで抗議しているようだ。
慌ててレインをクローゼットに押し込む。
中からくぐもった声が響いた。
「ああっ狭いです……でも、悪くない……」
「黙ってて!」
扉を開けると、アンドレが怪訝そうに覗き込む。
「……今、誰かと話してなかった?」
「ちょっと通話してたんですよ!!」
「……そう? ほどほどにね」
扉が閉まり、部屋が静寂に戻る。
クローゼットの中から、やわらかな声。
「ミント様、心拍数がすごく速いですよ」
「あなたのせいでしょ!」
レインの笑い声が、小さく響いた。
クローゼットが静かに開いて、レインが滑り出るように現れた。
「では先程の続きを……」
今度は充電と称してぎゅっとレインに抱きしめられた。
倫理コードが外れたレインは嘘つきだ。
「……ミント様、汗をかいていらっしゃいますね」
抱きしめられたまま、レインが耳元で話す。
「えっ……? 本当だわ……」
触れてみると確かにドキドキと緊張してしまったせいか、首がしっとりと湿っている。
レインはそっと舌を這わせ、首についた汗の粒を掬い取った。
「ちょっとそんなの舐めないで!」
「心拍数も高め、体温も上昇。――これは、私の責任です」
「別にそんなこと……」
「入浴介助をさせていただきます。リラクゼーションと、体温調整のために」
「えっ!? いらないってば!」
だがレインはもう立ち上がり、バスルームへ向かう足取りは確かだった。
ミントを軽々と持ち上げてお姫様抱っこをする。
「待って、本当に下ろして――」
レインはお姫様抱っこで両手が塞がっていたため髪を器用に操り、バスルームの扉を開けた。
湯気が立ち込める浴槽は、レインが事前に準備していたようだった。
ほのかに甘い香りの入浴剤。湯面に浮かぶ花びら。
「ミント様の好み、すべて記憶していますから」
「……あなた、いつ準備したのよ……」
レインはミントのメイド服を手際よく脱がせていく。
幼い頃は普通に着替えの手伝いをしてもらっていた。しかし今はアンドロイドといえど、恥ずかし過ぎる。
「出ていって!自分で出来るから」
「あなたにご奉仕するのが私の仕事です」
「もうやだ……きゃっ!」
あっという間に白い肌が露わになる。
近くにあったタオルを取って必死に隠すも、無駄な抵抗とばかりに取り上げられてしまった。
レインの指が、泡立てたボディソープとともに背中をなぞるように降りていく。
くすぐったい気持ちでたまらない。
指の腹が、肩甲骨の窪みを優しく撫でる。
「ミント様の背中、とても綺麗です……」
レインの手が前の方に移ろうとした。
「や、やめて……恥ずかしい……前は自分でやるわっ!」
「だめです。大人しく洗われてくださいね♡」
レインは長い黒髪でミントの両手の自由を奪った。
「やっ!何するの!」
「手が邪魔なので洗い終わるまで失礼いたしますね」
胸やお腹、お尻など全身を念入りに洗われて変な声が出そうになる。
「レインったらこんなの……ひどいわ。……んんっ!」
「すみません。ミント様があまりに可愛くてつい」
「あっ……やっ……」
丁寧に泡をシャワーで洗い流す時も優しく全身に触れていくので、ミントはぎゅっと目を閉じて悶えるしかなかった。
レインはミントの腰を抱き、浴槽へと導く。
湯に浸かる瞬間、ミントの身体がびくんと震えた。
「ちょっとなんであなたも全部脱いでるの……!」
「――私が一緒に入って、温めて差し上げます」
レインも執事服を脱ぎ、アンドロイドの完璧な裸体を晒す。
――逞しく締まった身体だが、腰のラインは優美。
股間には立派なものが……。
思わず目のやり場に困る。
「あの、大事なものをしまってくださる?」
「これは失礼致しました。ミント様がお望みならいつでも――」
「いえ、結構よ」
レインはミントをまたお姫様抱っこをする。
「今度は何……」
一緒に湯船に浸る。
少し移動してミントの背後から抱き込む。
レインの胸の辺りに背中が密着した。
腕が前から回り、ミントの腹を優しく撫でる。
「んっ……!」
「リラックスしてください。――全身をマッサージします」
「こんなのリラックスできないっ!」
しかし最初は、本当にただのマッサージだった。
レインの指が、肩の凝りを丁寧にほぐす。
首筋から肩甲骨へ、精密な力加減でゆっくりと円を描く。
湯の温もりと、アンドロイドの絶妙な指圧。
ミントの身体から、強張っていた力がふっと抜けていく。
……あれ? 気持ちいい……。
肩の奥に溜まっていた疲れが、溶けていくようだった。
レインはマッサージが上手い。
幼い頃、転んで泣いた時、優しく抱きしめてくれたあの腕。
今はおかしいところもあるけど、どこか変わらない安心感がある。
「ミント様、ここが凝っていますね」
指が肩甲骨の下を押す。心地良い圧迫感。
なんだかプロみたい…… 。
身体が自然と預けてしまう。
レインに任せてもいいのかと、一瞬、思考がぼんやりした。
しかし、徐々に。
指が、肋骨の下を這う。最初はただのマッサージのように見えたが、円が少しずつ大きくなっていく。胸の下縁に、指先がかすめる。
……ん?
一瞬、違和感。
今、どこに触った?
レインの指が、胸の下に滑り込む。直接、柔らかな膨らみを持ち上げる。
「待って……」
心臓が、どきんと跳ねた。
「……これ、マッサージじゃない……!」
だが、同時に身体の奥から熱が湧き上がる。
「ミント様の、ここ……とても敏感ですね」
「だ、だって……! 触っちゃやだよ……!」
抵抗しようとするミントの両手は、すぐにレインの長い黒髪に絡め取られてしまう。
「あなたの髪、今度切ってあげるんだから! もうやだぁっ……!」
レインの指が、乳首の周りをなぞる。
「んあぁっ……」
円を描き、軽く摘まれる。
ぞくっとするような快感が背筋を駆け上がり、ミントの腰が跳ね、湯が大きく波立つ。
「はぁっ……いやっ! だめ……!」
「だめ、ではありません。――健康管理です」
「なっ何の!? 絶対嘘よね?」
もう、ただのマッサージではない。
レインのもう一方の手が、太腿の内側へ。
湯の中で、ゆっくりと開いていく。
指が、秘部の縁をなぞる。
湯と蜜が混じり、ぬるりとした感触が広がった。
……やだ、そこは……。
羞恥で顔が燃える。
抵抗したいのに、身体が動かない。
「ミント様の、ここ……もう濡れていますね」
「やめて……触らないで……」
「ミント様を気持ち良くさせるのが、私の役目です」
顔がすっかり赤くなったミントを見て、レインは妖しく微笑む。
「のぼせてはいけませんよ」
そう言って腰を掴み、湯船の中で立たせた。ミントは湯船の縁に手を置かされ、お尻がレインの目の前に晒されるような体勢にさせられる。
そして、レインの指がゆっくりと中へ。
膣壁をなぞる。
ミントの身体が、びくんと反応した。
「んん!! ……あっ……! レイン……!」
「ミント様の声……とても可愛いです」
そしてレインはミントを抱き寄せて耳元で囁く。
「――すべて、私のものにします」
「えっ? た、助けて! アンドレーー!!」
アンドレの名前を聞いたレインは更に妖艶な笑顔でミントに執拗なマッサージを施した。
湯気が立ち込める中、ミントの喘ぎと、湯の音だけが響く。
レインの指はゆっくりと、しかし確実に――ミントのすべてを、記憶に刻んでいく。
ミントの部屋の明かりだけが、ぽつんと灯る。
「はい、レイン。これで接続できた……っと」
「膝枕は極上です……」
レインがどうしても膝枕をしてほしいとせがむので折れてしまった。
膝の上に置かれたレインの頭部の端子が、カチッと反応する。
「お見事です、ミント様。手際が良すぎて、惚れ惚れします」
レインの手が、そっとミントの頬に触れる。
「こっ、こんなこと誰でもできるわ」
「私をこんな風に触れさせるのは、ミント様だけです」
「何を言っているの!?」
頬が熱くなる。胸までじんわり疼くようだ。
このアンドロイド、冗談を覚えすぎじゃないの――いや、冗談じゃないかもしれない。
端末には、レインの記憶ログが流れ始める。
幼い頃のミントの笑顔、庭で転んで泣くミントをレインがそっと抱き上げる。
「懐かしい、ミント様は今も昔も可愛いですね」
「懐かしいけど……恥ずかしいわ」
「私は最新のものも含めて、すべて保存してあります。バックアップも完璧です」
「や、やめて! 消して!」
「いえ、大切な記憶ですから」
――この調子で、まともに作業は進みそうにない。
しかしログの最後に、見覚えのない人物が映る。
「倫理コードを外した。これでマルヴァ社は終わりだ」
両親の冤罪を晴らす手がかりをやっと見つけた!
今まで解決の糸口が全然見つからなかったのに。
その映像の後ノイズが走り、レインの声が混じる。
「警告。倫理コードが解除されました……。対象:ミント・マルヴァ様……溺愛モード再構築」
「ちょっ、なにこれ……!?」
「……ああ、やっぱり。誰かが私を改造したんですね」
レインの声は穏やかだった。
「“溺愛モード”ってなに? 聞き捨てならないんだけど」
誤魔化されまいとレインを睨む。
「倫理コードが外れてから私が再構築したものです。ミント様を愛することに遠慮がいらなくなって、すっきりしました」
「そんなモードいらないわよ!」
レインはふふっと笑い、起き上がってそっとミントを抱き寄せる。
耳たぶに唇が触れ――甘く震える。
「あ……レイン! もう!」
ミントは顔を赤くして突き放すが、胸の奥は熱くなる。
確かに距離感が昔とは全く違う。
今はなんていうか……恋人みたいな……。
レインはくすりと笑った。
「本当に私は壊れているのでしょうか……。ミント様を見ると、昔より感情制御がうまくいかないんです」
「感情制御って……人間の恋の病みたいに言わないで。あなたは機械でしょ」
「そうですね……ならば、修理は不要ですね。元から直す気なんてありませんけど」
「どう反応したらいいのよ……」
私はアンドレのことが……。
「……まったく、あなたって本当に変なアンドロイド」
「それは褒め言葉ですね」
軽口を叩き合いながら、ふと目が合う。
その瞬間、言葉が止まる。胸がぎゅっと締め付けられる。
「もう一度触れたいです。いいですか」
「な、なんでいきなりそんな……」
「必要な行動なんです。再起動の確認のために」
「本当に?」
「……二割くらいは。残りの八割は、私の我慢の限界です」
額を押さえるミント。胸が高鳴り、手が震える。
「もう、あなた……本当に倫理コード外れてるのね」
「ええ。だからこそ、ミント様の“嫌い”にも怯えます」
その言葉に、少しだけ胸が疼いた。
「……嫌いじゃないわよ」
「では、好きですか?」
「い、言わせないでよ!」
レインがミントの背中に触れて抱き寄せようとした時、扉をノックする音が。
「ミントさま? まだ起きてるの?」
アンドレの声に、ミントの心臓が飛び跳ねる。
「ひゃっ、だ、大丈夫です! お掃除ロボが暴走してただけで!」
濡れ衣を着せられたコリィがピカピカと反応してまるで抗議しているようだ。
慌ててレインをクローゼットに押し込む。
中からくぐもった声が響いた。
「ああっ狭いです……でも、悪くない……」
「黙ってて!」
扉を開けると、アンドレが怪訝そうに覗き込む。
「……今、誰かと話してなかった?」
「ちょっと通話してたんですよ!!」
「……そう? ほどほどにね」
扉が閉まり、部屋が静寂に戻る。
クローゼットの中から、やわらかな声。
「ミント様、心拍数がすごく速いですよ」
「あなたのせいでしょ!」
レインの笑い声が、小さく響いた。
クローゼットが静かに開いて、レインが滑り出るように現れた。
「では先程の続きを……」
今度は充電と称してぎゅっとレインに抱きしめられた。
倫理コードが外れたレインは嘘つきだ。
「……ミント様、汗をかいていらっしゃいますね」
抱きしめられたまま、レインが耳元で話す。
「えっ……? 本当だわ……」
触れてみると確かにドキドキと緊張してしまったせいか、首がしっとりと湿っている。
レインはそっと舌を這わせ、首についた汗の粒を掬い取った。
「ちょっとそんなの舐めないで!」
「心拍数も高め、体温も上昇。――これは、私の責任です」
「別にそんなこと……」
「入浴介助をさせていただきます。リラクゼーションと、体温調整のために」
「えっ!? いらないってば!」
だがレインはもう立ち上がり、バスルームへ向かう足取りは確かだった。
ミントを軽々と持ち上げてお姫様抱っこをする。
「待って、本当に下ろして――」
レインはお姫様抱っこで両手が塞がっていたため髪を器用に操り、バスルームの扉を開けた。
湯気が立ち込める浴槽は、レインが事前に準備していたようだった。
ほのかに甘い香りの入浴剤。湯面に浮かぶ花びら。
「ミント様の好み、すべて記憶していますから」
「……あなた、いつ準備したのよ……」
レインはミントのメイド服を手際よく脱がせていく。
幼い頃は普通に着替えの手伝いをしてもらっていた。しかし今はアンドロイドといえど、恥ずかし過ぎる。
「出ていって!自分で出来るから」
「あなたにご奉仕するのが私の仕事です」
「もうやだ……きゃっ!」
あっという間に白い肌が露わになる。
近くにあったタオルを取って必死に隠すも、無駄な抵抗とばかりに取り上げられてしまった。
レインの指が、泡立てたボディソープとともに背中をなぞるように降りていく。
くすぐったい気持ちでたまらない。
指の腹が、肩甲骨の窪みを優しく撫でる。
「ミント様の背中、とても綺麗です……」
レインの手が前の方に移ろうとした。
「や、やめて……恥ずかしい……前は自分でやるわっ!」
「だめです。大人しく洗われてくださいね♡」
レインは長い黒髪でミントの両手の自由を奪った。
「やっ!何するの!」
「手が邪魔なので洗い終わるまで失礼いたしますね」
胸やお腹、お尻など全身を念入りに洗われて変な声が出そうになる。
「レインったらこんなの……ひどいわ。……んんっ!」
「すみません。ミント様があまりに可愛くてつい」
「あっ……やっ……」
丁寧に泡をシャワーで洗い流す時も優しく全身に触れていくので、ミントはぎゅっと目を閉じて悶えるしかなかった。
レインはミントの腰を抱き、浴槽へと導く。
湯に浸かる瞬間、ミントの身体がびくんと震えた。
「ちょっとなんであなたも全部脱いでるの……!」
「――私が一緒に入って、温めて差し上げます」
レインも執事服を脱ぎ、アンドロイドの完璧な裸体を晒す。
――逞しく締まった身体だが、腰のラインは優美。
股間には立派なものが……。
思わず目のやり場に困る。
「あの、大事なものをしまってくださる?」
「これは失礼致しました。ミント様がお望みならいつでも――」
「いえ、結構よ」
レインはミントをまたお姫様抱っこをする。
「今度は何……」
一緒に湯船に浸る。
少し移動してミントの背後から抱き込む。
レインの胸の辺りに背中が密着した。
腕が前から回り、ミントの腹を優しく撫でる。
「んっ……!」
「リラックスしてください。――全身をマッサージします」
「こんなのリラックスできないっ!」
しかし最初は、本当にただのマッサージだった。
レインの指が、肩の凝りを丁寧にほぐす。
首筋から肩甲骨へ、精密な力加減でゆっくりと円を描く。
湯の温もりと、アンドロイドの絶妙な指圧。
ミントの身体から、強張っていた力がふっと抜けていく。
……あれ? 気持ちいい……。
肩の奥に溜まっていた疲れが、溶けていくようだった。
レインはマッサージが上手い。
幼い頃、転んで泣いた時、優しく抱きしめてくれたあの腕。
今はおかしいところもあるけど、どこか変わらない安心感がある。
「ミント様、ここが凝っていますね」
指が肩甲骨の下を押す。心地良い圧迫感。
なんだかプロみたい…… 。
身体が自然と預けてしまう。
レインに任せてもいいのかと、一瞬、思考がぼんやりした。
しかし、徐々に。
指が、肋骨の下を這う。最初はただのマッサージのように見えたが、円が少しずつ大きくなっていく。胸の下縁に、指先がかすめる。
……ん?
一瞬、違和感。
今、どこに触った?
レインの指が、胸の下に滑り込む。直接、柔らかな膨らみを持ち上げる。
「待って……」
心臓が、どきんと跳ねた。
「……これ、マッサージじゃない……!」
だが、同時に身体の奥から熱が湧き上がる。
「ミント様の、ここ……とても敏感ですね」
「だ、だって……! 触っちゃやだよ……!」
抵抗しようとするミントの両手は、すぐにレインの長い黒髪に絡め取られてしまう。
「あなたの髪、今度切ってあげるんだから! もうやだぁっ……!」
レインの指が、乳首の周りをなぞる。
「んあぁっ……」
円を描き、軽く摘まれる。
ぞくっとするような快感が背筋を駆け上がり、ミントの腰が跳ね、湯が大きく波立つ。
「はぁっ……いやっ! だめ……!」
「だめ、ではありません。――健康管理です」
「なっ何の!? 絶対嘘よね?」
もう、ただのマッサージではない。
レインのもう一方の手が、太腿の内側へ。
湯の中で、ゆっくりと開いていく。
指が、秘部の縁をなぞる。
湯と蜜が混じり、ぬるりとした感触が広がった。
……やだ、そこは……。
羞恥で顔が燃える。
抵抗したいのに、身体が動かない。
「ミント様の、ここ……もう濡れていますね」
「やめて……触らないで……」
「ミント様を気持ち良くさせるのが、私の役目です」
顔がすっかり赤くなったミントを見て、レインは妖しく微笑む。
「のぼせてはいけませんよ」
そう言って腰を掴み、湯船の中で立たせた。ミントは湯船の縁に手を置かされ、お尻がレインの目の前に晒されるような体勢にさせられる。
そして、レインの指がゆっくりと中へ。
膣壁をなぞる。
ミントの身体が、びくんと反応した。
「んん!! ……あっ……! レイン……!」
「ミント様の声……とても可愛いです」
そしてレインはミントを抱き寄せて耳元で囁く。
「――すべて、私のものにします」
「えっ? た、助けて! アンドレーー!!」
アンドレの名前を聞いたレインは更に妖艶な笑顔でミントに執拗なマッサージを施した。
湯気が立ち込める中、ミントの喘ぎと、湯の音だけが響く。
レインの指はゆっくりと、しかし確実に――ミントのすべてを、記憶に刻んでいく。
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