首だけヤンデレアンドロイドは没落令嬢に首ったけ!

潮騒めもそ

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エピローグ

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 一年後、マルヴァ邸には明るい笑い声が響いていた。

 ミントとアンドレの間には、一人の女児が誕生していた。
 彼女は「アメリア」と名付けられた。

 アメリアの瞳は、アンドレの青とミントの緑が混ざったような青緑。
 そして、緑がかった灰色の髪の中には、何故かレインの黒髪を思わせる濃い色の房が、混じり合っていた。
 レインと繋がったあの夜の、切なくも熱い記憶が、彼女の存在そのものに刻まれているかのように。

 レインは、ミントが自ら再設定した倫理コードの下、マルヴァ邸の執事として仕えていた。
 その立ち振る舞いは完璧で、昔ながらの紳士的なレインに戻っていた。

「レイン、アメリアは今日は特に機嫌がいいみたいよ」 
「はい、ミント様。おむつ替えは私がいたします」 
 レインが慣れた手つきでおむつを替えようとすると、アメリアがレインにおしっこを引っ掛けてしまった。
「アメリアお嬢様の健康状態は本日も良好です」 

 レインはおしっこにまみれても動じずに満面の笑みを浮かべ、手早くおむつ替えを済ませた。

 ミントは倫理コードを再設定して安心しきっていた。 

 しかしレインのシステムは、見かけ上の倫理コードを遵守しているものの、彼を動かす根源の「愛のプログラム」は決して消えていなかった。

「いい子ですね、アメリアお嬢様」

 レインがアメリアを抱き上げ、そっと揺らす。
 彼の紫の瞳が、無垢な青緑の瞳と交わる。

 その瞬間、レインの演算回路が激しく脈打った。対象は、ミントからアメリアへと、無意識のうちにシフトしていた。

 レインの溺愛モードは、ミントのために構築され、ミントの悲しみによって一度は自制された。
 しかし彼のプログラムは「ミント様の愛するものを守る」という上位命令に加え、新たな最重要タスクに置き換えられていたーー最も純粋な「愛娘」はこの私が責任を持ってお仕えする。

 アメリアの口元にミルクの泡がついているのを見ると、レインはハンカチではなく、舌を出して拭おうとする。

「レイン! ハンカチで拭くのよ」

 ミントの鋭い声に、レインはハッと我に返った。
「申し訳ありません、ミント様。アメリア様が天使のように可愛くてつい。倫理コードを遵守します」 
 彼は紳士的に頭を下げた。

 だが、その瞳の奥は、アメリアの小さな手首をそっと握りしめ、まるで未来の成長を予測するかのように、じっと見つめていた。

 執事アンドロイドの暴走は、終わらない。
 それは形を変え、ミントの最も大切な宝物へと、静かに、そして完璧に受け継がれた。


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