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「……まさか、あなたが犯人だったなんて」
騎士科の一室で対峙するのは、先ほどまで友人や仲間として振る舞っていたはずの一人の貴族生徒。黒幕の取り巻きのような存在で、クレアさんを狙う計画に荷担していたのが明らかになったのです。すでに教師たちの追及によって、彼の素性や動機が徐々に判明しつつあります。
「僕は悪くない……。ただ、あの“ヒロイン”に嫉妬しただけ。王太子殿下を平民の娘に奪われるのは許せなかった。それに、ローズが悪名を背負ってくれれば、僕ら貴族の面目も保てる……」
唇を震わせながら言い訳を続ける彼の姿は、醜くも悲しいものでした。貴族社会における嫉妬と焦り、そして王太子殿下の婚約を巡る派閥争いに踊らされた末に、彼はこんな暴挙に及んだのでしょう。
「あなたの行いは、クレアさんのみならず王太子殿下の危険にも繋がりました。そんな理由で人を傷つけようとしたのですか」
わたくしは思わず怒りをこめて問いただしてしまいます。わたくしを“悪役”に仕立てて平然と利用しようとし、クレアさんを学園から排除しようとした。そこには何の正義もありません。
「だ、だって……あの女が王子の心を掴んだから……」
「それなら直接殿下に訴えるなり、正々堂々と手段を講じることもできたでしょう! なぜクレアさんを闇討ちのように狙う必要があるのか。周囲の噂を利用し、わたくしに罪をなすりつけるとは卑怯ですわ」
苛立ちを抑えきれず声を荒らげるわたくしを、エドワード様が静かに制止します。彼はそのまま男の腕を押さえつけ、教師たちへ引き渡すように指示を出しました。
「もう十分だ。あとは学園の上層部がしかるべき判断を下すだろう」
そう言ったエドワード様の表情は険しく、心の底から怒りを噛み殺しているように見えました。騎士として、こんな卑劣な行為を見過ごすわけにはいかないのだと痛感します。
「ローズ、怪我はないか?」
ヴァレンティン様が心配そうにわたくしを見つめます。先ほどの救出劇で慌ただしく動いたせいで、わたくしも足に少しかすり傷を負っていましたが、大したことはありません。
「大丈夫ですわ。ありがとうございました。ヴァレンティン様も、エイダさんも、そしてエドワード様も、みなさんの助けのおかげでクレアさんを救えました」
「それは何よりだ。けれど、これで全て解決したわけじゃない。あの男の背後にいる人物がいるはずだ」
ヴァレンティン様の言う通り、主犯は別にいる可能性が高い。実際、今回捕まった生徒は他の人物から指示を受けていたらしく、聞き出した名前にはいくつかの貴族派閥が関係していると思われます。もしかすると、大規模な陰謀の一端だったのかもしれません。
しかし、とりあえず学園としては、これまでの嫌がらせの大半が彼の仕業によるものだったと結論づけるでしょう。わたくしを悪役令嬢に仕立てようとした罠の数々も、これで証拠が固まったのです。
「ローズさん、よかった……。今まで誤解されてきたの、本当に悔しかったよね」
「エイダさん……ふふ、悔しさよりも、ホッとした気持ちが大きいですわ。ようやく晴れやかな気分と言いますか」
わたくしが微笑むと、エイダは涙ぐみながら「本当によかった……」と繰り返しました。そうしているうちに、教室を飛び出してきたクレアさんが、足を引きずりながらもわたくしへ駆け寄ってきます。
「ローズさん、ありがとう。あなたが助けてくれなければ、わたし、どうなっていたか……」
「いいえ、当然のことです。クレアさんはわたくしの知る限り、最も純粋で優しい方。わたくしが守りたくなっても不思議はありませんわ」
そう言うと、クレアさんは大きな瞳に涙をためて、わたくしの手をぎゅっと握りしめました。その瞬間、周囲にいた生徒たちは一様に感嘆の息を漏らします。これまで信じられなかった人々も、現場を目の当たりにしてようやく気づいたのでしょう。わたくしが悪役であるはずがない、と。
「アルフォンス様は?」
クレアさんに尋ねると、彼女は「今、学園長とこの先の対応を話し合ってる」と答えました。王太子殿下として、今回の事件の処理に関わるのは当然ですが、その背景にはもっと大きな政治的な問題が横たわっているのかもしれません。
「破滅すら置き去りにして……なんて、わたくしも口にしておりましたが、本当に破滅がこないなんて。なんだか信じられません」
わたくしの独りごとのような言葉に、クレアさんやエイダ、そしてヴァレンティン様までもが、ほほ笑んでくれました。エドワード様は一歩後ろで、まだ厳しい表情を崩しませんが、わたくしに向けられる視線にはもはや疑いの影はありません。
こうして、わたくしが“悪役令嬢”として恐れられ、忌み嫌われてきた日々は一つの転機を迎えたのでした。わたくしが自ら手を下さなくとも、陰謀は暴かれ、誤解は解ける。噂が真実に塗り替えられる。まさに、破滅すら置き去りにして、わたくしは自分の道を歩むことができるのです。
騎士科の一室で対峙するのは、先ほどまで友人や仲間として振る舞っていたはずの一人の貴族生徒。黒幕の取り巻きのような存在で、クレアさんを狙う計画に荷担していたのが明らかになったのです。すでに教師たちの追及によって、彼の素性や動機が徐々に判明しつつあります。
「僕は悪くない……。ただ、あの“ヒロイン”に嫉妬しただけ。王太子殿下を平民の娘に奪われるのは許せなかった。それに、ローズが悪名を背負ってくれれば、僕ら貴族の面目も保てる……」
唇を震わせながら言い訳を続ける彼の姿は、醜くも悲しいものでした。貴族社会における嫉妬と焦り、そして王太子殿下の婚約を巡る派閥争いに踊らされた末に、彼はこんな暴挙に及んだのでしょう。
「あなたの行いは、クレアさんのみならず王太子殿下の危険にも繋がりました。そんな理由で人を傷つけようとしたのですか」
わたくしは思わず怒りをこめて問いただしてしまいます。わたくしを“悪役”に仕立てて平然と利用しようとし、クレアさんを学園から排除しようとした。そこには何の正義もありません。
「だ、だって……あの女が王子の心を掴んだから……」
「それなら直接殿下に訴えるなり、正々堂々と手段を講じることもできたでしょう! なぜクレアさんを闇討ちのように狙う必要があるのか。周囲の噂を利用し、わたくしに罪をなすりつけるとは卑怯ですわ」
苛立ちを抑えきれず声を荒らげるわたくしを、エドワード様が静かに制止します。彼はそのまま男の腕を押さえつけ、教師たちへ引き渡すように指示を出しました。
「もう十分だ。あとは学園の上層部がしかるべき判断を下すだろう」
そう言ったエドワード様の表情は険しく、心の底から怒りを噛み殺しているように見えました。騎士として、こんな卑劣な行為を見過ごすわけにはいかないのだと痛感します。
「ローズ、怪我はないか?」
ヴァレンティン様が心配そうにわたくしを見つめます。先ほどの救出劇で慌ただしく動いたせいで、わたくしも足に少しかすり傷を負っていましたが、大したことはありません。
「大丈夫ですわ。ありがとうございました。ヴァレンティン様も、エイダさんも、そしてエドワード様も、みなさんの助けのおかげでクレアさんを救えました」
「それは何よりだ。けれど、これで全て解決したわけじゃない。あの男の背後にいる人物がいるはずだ」
ヴァレンティン様の言う通り、主犯は別にいる可能性が高い。実際、今回捕まった生徒は他の人物から指示を受けていたらしく、聞き出した名前にはいくつかの貴族派閥が関係していると思われます。もしかすると、大規模な陰謀の一端だったのかもしれません。
しかし、とりあえず学園としては、これまでの嫌がらせの大半が彼の仕業によるものだったと結論づけるでしょう。わたくしを悪役令嬢に仕立てようとした罠の数々も、これで証拠が固まったのです。
「ローズさん、よかった……。今まで誤解されてきたの、本当に悔しかったよね」
「エイダさん……ふふ、悔しさよりも、ホッとした気持ちが大きいですわ。ようやく晴れやかな気分と言いますか」
わたくしが微笑むと、エイダは涙ぐみながら「本当によかった……」と繰り返しました。そうしているうちに、教室を飛び出してきたクレアさんが、足を引きずりながらもわたくしへ駆け寄ってきます。
「ローズさん、ありがとう。あなたが助けてくれなければ、わたし、どうなっていたか……」
「いいえ、当然のことです。クレアさんはわたくしの知る限り、最も純粋で優しい方。わたくしが守りたくなっても不思議はありませんわ」
そう言うと、クレアさんは大きな瞳に涙をためて、わたくしの手をぎゅっと握りしめました。その瞬間、周囲にいた生徒たちは一様に感嘆の息を漏らします。これまで信じられなかった人々も、現場を目の当たりにしてようやく気づいたのでしょう。わたくしが悪役であるはずがない、と。
「アルフォンス様は?」
クレアさんに尋ねると、彼女は「今、学園長とこの先の対応を話し合ってる」と答えました。王太子殿下として、今回の事件の処理に関わるのは当然ですが、その背景にはもっと大きな政治的な問題が横たわっているのかもしれません。
「破滅すら置き去りにして……なんて、わたくしも口にしておりましたが、本当に破滅がこないなんて。なんだか信じられません」
わたくしの独りごとのような言葉に、クレアさんやエイダ、そしてヴァレンティン様までもが、ほほ笑んでくれました。エドワード様は一歩後ろで、まだ厳しい表情を崩しませんが、わたくしに向けられる視線にはもはや疑いの影はありません。
こうして、わたくしが“悪役令嬢”として恐れられ、忌み嫌われてきた日々は一つの転機を迎えたのでした。わたくしが自ら手を下さなくとも、陰謀は暴かれ、誤解は解ける。噂が真実に塗り替えられる。まさに、破滅すら置き去りにして、わたくしは自分の道を歩むことができるのです。
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