上 下
27 / 31
ライト

8

しおりを挟む
しゃらんっ

静かな鈴の音が響くと同時に、蒼い光の魔法陣が私を包むように現れる。
「っリズ!」
ライトがとっさに抱き寄せてくれる。

トクンっ
ーあれ?何だろう、発展途上の少年のはずの彼に守られているのに安心する感じ。そんな場合じゃないのに。

蒼い光が集まって、だんだんと人のカタチになっていく。

「・・・うそでしょう?」
私は思わず口にする。だって、現れた人が、さっき、私を追いかけてきた女の人だったから。
無意識にライトの上着を握る手に汗がのる。

彼女の顔には背筋が凍るような嫉妬と憎悪が映っていた。

「お前は誰だ!」

私を睨む眼がライトへ移る。

「アイラよ。この世界のヒロインで、唯一の浄化の力を持つはずだったのに。」

しゃらんっ

手につけられていた鈴が鳴るとダイヤモンドダストが空中に散らばっていた。

えっ?綺麗だけれど。一体何??

私を抱きしめるライトの腕に力が入る。
そしてダイヤモンドダストに見えたのが、私を目掛けて飛んできた氷の塊で、とっさにエメロスさんが魔法で砕いてくれたのだと、理解して背筋が凍る。

私たちの間にエメロスさんとミラさんが盾になるように割って入り、アイラと名乗る少女を見据える。

「私が愛してあげないと、この国は滅びるのよ?何で邪魔をするの?」

「言っていることがわかりません、どういうことでしょうか」
エメロスが静かに問いかける

「エメロス様。そこの女を片付けたら、全てが正常に戻ります、そうすれば、貴方も」

すっと、アイラが片手を上げると、私の頭上に巨大な氷の剣が現れる

「っっな。」
私は、こういう時、何か出来ないのかな。守られてばかりで、何かみんなの力になりたいのに。
無力感に支配されそうになった時、そっとライトが呟いた
「リズは、僕たちが護るよ。」
ライトから黄金の光が立ち上り、私たちを守るように包みこむ

ーー考えなくちゃ、そもそも何故私が殺されないといけないの?

私はすっと立ち上がり、アイラへ手を差し伸べる

「私はリズ。この街のただのおにぎり屋の店主です!!」

どーーーん。と効果音が似合いそうなくらい、声を張り上げて自己紹介してやりましたよ。空気読めないキャラは最強説に1票!

そして、パチンっと指を鳴らせば!いつものように、妖精さんたちが色々とセッティングしてくれます。

いつのまにか魔法陣も、頭上の氷も消えて(たぶん妖精さんたちが消してくれた)

「今日のおやつは、きな粉のおにぎりと、白ゴマのおにぎりにしました!スープは、甘いお芋のポタージュよ!」

・・・・・・

みんなが呆気に取られている間に、植物の妖精さんがツタを出現させて、さりげなくアイラを拘束して椅子に座らせる。

「さあ、みんなも座って!」

身動きが取れないアイラに、小さめのおにぎりを強引に口へ押し込めば、仕方ないので頬張ってくれた。

「ゔんんっおっ美味しい!?」

はぃ、嬉しい第一声いただきました。

しゃらんっっ
鈴が静かに鳴り響いた
しおりを挟む

処理中です...