異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

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学園編 3章

第101話 監視者

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閉められた部屋を出て一時間。

道に迷わないように印を付けながら進む。

「何か凄い変な気持ちですね」
「ああ、初めてダンジョンに訪れたときの感覚に似ているな」

上手く言葉では表しにくいが、時間の流れが遅くなっているように感じるし、体もどんどん重くなっている感覚に襲われていた。頭の中もさっきから、どんよりしている。

「最深部は何処なのでしょうか?階段を降りたり登ったり、右に行ったり左に行ったり、前に進んでいるかと思えば逆向きに進んだりしていて、どこに向かっているか全く分かりません」

オールドが言う。

分かっている、分かっているが、とりあえず前に進むしか無い。

進むしか・・・いや、いや、何をしてるんだ、俺たちは?! 我に返れ!

「もう退いたほうが良さそうだ」
「ルイ様、急にどうされたのですか?」

立ち止まった僕に、三人が顔を向ける。

「今回は迂闊だった。何らかの作用が働いて、僕らは最深部へと引き寄せられている」
「引き寄せられて?え、そうなのですか?」

パッチン パッチン パッチン バッチーン

僕は自分、アルス、レーナ、オールドの頬を次々と引っ叩いていく。

「目が覚めたか?」

先程まで、少し馬鹿っぽかった三人の顔が、ようやく普段通りの顔つきに変わった。

「ありがとうございます!スッキリしました!」
「ええ、私もです!」

アルスとレーナが礼を言う。

だがオールドは何故か頬をさすりながら、僕の顔を窺う。

「ルイ様。さっき、私だけ強く叩きませんでしたか?」
「ん、何のことだ?気のせいだろ」

僕は無視して話し始める。

「おそらくこの遺跡には監視者がいる」
「監視ですと!何処に!」
「今、ここにいる訳では無いだろう。おそらくだが、この場所に誰かが入った時、何らかの手段でその監視者に伝達が行くのだろう」
「なるほど」

僕は皆に、ここに入る前の話をした。

「ここに入る前、村長が言っていただろ。かつて、荒らしをした貴族が忽然と姿を消したと」
「ええ」
「おそらく、その監視者が殺った。その貴族は建石を抜いた、という話から察するに、それが侵入の合図になっているはず」
「つまり、建石を抜くと監視者に伝達される?」
「ああ」

三人は互いに顔を見合った。

「監視者はこの場所を管理する者だ。ここで、そいつと戦闘になってはまずい。魔法も使えない。ともかく、いつ鉢合わせになるか分からないから、今すぐここを出た方がよい」

そう僕が言うと、すぐさま行動に移す。

来た道を小走りで僕らは戻っていく。

体感三時間。ようやく、あの開かずの部屋に到着する。

「オールド!」
「分かっていますよ」

オールドは一歩前に出て剣に手を掛ける。

そして深呼吸をすると目にも止まらぬ速さで斬る。

ザシン―――ドッ

入口まで繋がる階段が見えた。

僕らは急いで駆け上がる。

しばらくすると地上が見えてきた。

小高い丘になっているため、空の明るさから今、どのくらいの時刻かおおよそ分かる。

「おいおい、もう夜が明けるぞ!」

暗くなった空の東の端が、ほんのり赤く染まっている。

「あそこで十二時間以上も彷徨っていたようですね」

僕たちは自分たちの身に起きている状況を整理できずにいたが、それでも足だけは動かしていた。

ひたすら、村までの暗い道を通っていく。

足元が見えず、途中何度も転びそうになる。

それでも急いで、あの場所から離れる。



「はぁ~~疲れた」

無事村に辿り着いた僕らは、そこで一眠りすることになった。

ただ、ボロ小屋(普通の民家)で寝るのが嫌だった僕は、仮眠を取るために馬車の中で横になったので、あまり眠れず背中も痛い。

「まさか、あんな場所があったなんて。気になるが、もう一度行く気にはなれないな」

一人呟いた。

この旅(調査)ももう終わりだ。

明日、家に帰る。色々と謎を残したまま。

でも、夏は長い。

調べることは山ほどある。

だから、悩んでもいられない。

「ルイ兄様、失礼します」

ノックをして馬車へと入ってくるアルス。

「よく寝れましたか?」
「まあまあな」

ぶっきらぼうに答える。

正直言えば、寝不足気味。

「それは良かったです。それよりも・・・」

アルスは何か言いたそうな顔をする。

「ああ、例の件だな。順次、行動を起こしておいてくれ」
「分かりました」

アルスは僕の指示を受けるとその場を後にし、闇の奥へと消えた。

闇はまだまだ深い。
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