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学園編 3章

第102話 監視者 (???)

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スピット村近く。

巨大な不思議な森として恐れられている場所がある。

中に入るのは地元民でも危険とされており、人はほとんど訪れない。

そんな森の奥に人知れずある遺跡があった。

地下に存在しており、特殊な方法でしか入ることができない。

森に隠れた小さな丘に存在しており、木々に囲まれて遠方からは視認できない。

その丘に一人の怪しい人物が降り立った。

「逃げられたか・・・」

中性的な性別の分からない声。

黒いフードを被り、全身を黒一色で覆っている。

顔は見えず、ただその声色で笑っているのが分かる。

「まさかこの仕掛けに気づくなんて思ってもいなかったよ。ククク」

不気味に笑う。

「はて、どうやってここを脱出したのかな?」

その者はルイたちと同じ方法で遺跡の中へと入っていく。

階段を降りた所で、壊れた瓦礫群を見つける。

「なるほど、斬ってこの開かずの部屋を脱出したか。ふふふ、ずいぶんと大胆だな」

またも不気味に笑う。

「後で修理しなくては。さて、道は―」

部屋を抜け、その者はルイたちが壁に残した跡を追っていく。

その足取りは軽く、ルイたちが数時間も歩いた引き返し地点まで、僅か数分で着いた。

「まだ最深部まではだいぶ辿り着けない位置。とすれば、精霊術士では無く普通の魔法使いね」

ルイたちが何者なのか、推理していく。

「恐らく強力魔法使いと剣術使い。それに準ずる奴がその他数名・・・あの痕跡から察するに二人以上いるのは確実。でも、この遺跡の幅で擦り跡は無いから、そこまで多くないか」

ぶつぶつと呟く。

「それにしても汚らわしい魔法使いに侵入を許すなんて、我ながら不覚。もう少し改善ししなければ。と、その前に」

何かを思い出したようにその者は唱え出す。

すると突然風景が変わる。

先程までの石造りの廊下ではなく、辺りは巨大な部屋に変わった。

部屋と言っても薄暗く、出口は見えない。

そして、その者がまなざす正面には小さな祭壇があった。

祭壇の上には、ぐるぐる巻きにされて上から吊るされた檻があった。

その檻の中には、常人には見えないモノが鼓動していた。

「十、いや四、五年ぶりかしら」

その者は、目の前のモノへと話しかける。

[・・・・・・・・・・・・]
「つれないな。また、だんまりか」

なおも無言。

「君がここに封印されて早五百年。そろそろ計画が実行に移せそうなんだ。君のおかげでね」
[・・・・・・・・・・・・]

相変わらず無反応。だが、話を続ける。

「やっとこれで、長い長い耐えるだけの生活が終わる。精霊術士の時代が遂に来るんだ!これは精霊にとってもいい事だと思うんだ!君もそう思うだろ、精霊神?」

封印され、目の前の檻に入っているモノこそ精霊の最強格、精霊神だ。

[・・・・・・・・・・・・]
「何か答えてくれよ~~。いじけてしまうぞ」
[・・・もう興味無い]
「!!!わあ、久しぶりに喋った!」

精霊神が声を発したことに驚き、はしゃぐ。

「興味無いって、あの時、精霊のためにって暴れたのは君じゃないか?!」
[ああ、だがお前によって封印された]
「ええ、そうよ。あの時はまだ”時”じゃなかったし、計画が邪魔されそうになったから」

その者はニコニコと話す。

「いや~~流石に焦ったよ。何とか王国一個潰れただけで良かった」

昔の思い出を懐かしそうに喋る。

「あの後、ここを隠すのが大変だったよ。人が入れないような巨大な森を年月をかけて作り、百年に一回ほど侵入者が現れるからそれにも対処して」
[知らん]
「あ、そうそう。今日か昨日だか、久しぶりの侵入者が現れたんだよ!しかも初めて仕留め損なった」

興味なさげな精霊神へ、一方的に話す。

「まさかこの遺跡に施されている、最深部に引き寄せられる術が見破られるとは思ってもいなかった。魔法使いという外道の分際で、よくやったよ」

その声色は、ルイたちへの称賛と侮蔑が入り混じっていた。

「さて、そろそろ仕事もあるし戻るとするか」

一通り話し終えたのか伸びをする。

[勝手に帰ってろ]
「ちぇっ。もう少し寂しがってくれてもいいぞ」

無視する精霊神。

「じゃあ、バイバイ。あ!そうそう、くれぐれも変な気、起こさないように!外のアレを使って解放してもらったり不埒な事したら、タダじゃおかないからね」

そう言ってウィンクした後、その眼は殺戮者へと変化する。

[・・・・・・・・・・・・]

精霊王が返答しない様子に満足そうに頷いて、出口へと一瞬で移動する。

その者は一通り修復と補強を終えると、いずこへと去っていった。
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