白薔薇の紋章

サクラ

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第二章 仲間 

第4話

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長く続いた口げんかは
お互いの疲労で終了した。

私なんで知り合ったばかりの人とケンカしてるんだろ…
本当、疲れる。

「あぁ、マジ疲れる。いいからさっさとついて来い」

「言われなくてもついて行きますよ!って痛い!放してください!」

「面倒だからこのまま引きずってく!」

「やーめーてー!!」


私の腕をつかんだまま
戒さんは歩き出す。
私がどんなにやめてと訴えてもやめてくれない
しまいには「このまま騒ぐなら担ぐからな」とまで言われた。
さすがに担がれたくないので大人しく引っ張られるがままになってしまった。



「ついた!多分ここにいると思うんだけど…」

「図書室?」

「んなようなもん」

「で、誰がいるんですか?」

「入ればわかる」



といつもの調子でウインクをする
普通の女子生徒だったら
ここでキャーとか黄色い声を張り上げるんだろうけど

やっぱりキモいし、ムカつく!


教室の中は本棚でいっぱいだった。
普通の図書室と違うのは
古い巻物や本しかないところ。

光で本が悪くなるのを防ぐためなのか
天井に近いところに小さな窓がいくつかあるだけで
教室と言うよりは倉庫に近かった。




「蛍!いないのか?」


「けい…?」


「四霊の一人で麒麟の力を持つやつ」



けい!けい!と戒さんは名前を呼び続けるが返事はなく
図書室の奥へとどんどん進んでいく。

一体どれだけの本がここに納められているんだろう。
地震が来たら大変だなとか
どうでもいいことをつい考えてしまいたくなるような量だ。


広い図書館の一番奥には
机と椅子が数個。
そこに男の人が一人机に顔を伏せて眠っていた。


「蛍、起きろー!お姫様連れて来たぞー」

この人が「けい」さんか…
戒さんがけいさんの体を強く揺さぶる。
するとけいさんはゆっくりと机から顔をあげて
目をこすったあと、近くに置いてあった眼鏡を手にする。


「…あんたが白薔薇姫か…」

「は、はい、初めまして…私…」


うわ…
思わず息を飲んだ。

なんてきれいな人なんだろう

薄暗い部屋に差し込む光が彼に当たって
彼の周りがキラキラしているから余計にそう思う。


「…何固まってんだ?」

戒さんにひじで小突かれて我に返る。
あーびっくりた。
あんなキレイな人初めて見た。
かっこいいとか、イケメンとか言う言葉じゃなくて
「キレイ」という言葉がしっくりくる。

「すみません!私は一之瀬珠姫です!よろしくお願いします!」

何がよろしくなんだよ
という戒さんの言葉は無視する。


「オレは麟崎 蛍りんざき けいよろしく」

スッと右手を差し出されたので
私も右手を差し出して握手する。
手までキレイだ…

「さーて、蛍のことも紹介できたし!あとは放課後だな。お前のせいで時間なくなったからな」

「私のせいじゃないです!戒さんがつかかってくるから!」

「あ?オレのせいだっていうのか?ざけんな!」

「二人ともやめろ!」


戒さんが口を開くとすぐにケンカになってしまう。
私たち相性が悪いのかもしれない。

遠くで昼休みの終わりを告げる音が小さく響いていた。

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