白薔薇の紋章

第5章 涙

第1話

空がだんだん白んでいく。
そうか朝が来たんだ…。

時計を見るとまだ起きるには早かった。
でも二度寝する気にはなれなくて
体を起こしでグッと腕を上げて体をのばした。

まだ早いけど、ご飯を食べて学校に行く準備をしよう。

戒さんは昨日家に帰った後
きちんと眠れたんだろうか…

藤堂さんと言う人に会ってから
皆の様子が変になって
戒さんに至っては意識を失ってしまった。

あんな戒さんを見たのは初めてで驚いたけど
そもそも私は戒さんを含めて
まだ出会ったばかりなんだから
知らないことが多くて当たり前なんだ。
それなのに、もう何年も一緒にいるような安心感があるのは
白薔薇姫と四霊の絆というものが関係しているのかもしれない。


なんだかんだと起きてから一時間も経っていた。
それでも学校に行くにはまだ早い。

あぁ、そうだ
神社に行ってみようかな。
神社の管理も白薔薇姫の仕事とか戒さんが言ってたし
境内の掃除でもしていればあっという間に時間になるだろう。










「ここが白薔薇姫の刀を祀っている場所か…」

板って普通の神社だ。
真っ白な鳥居をくぐって
境内があって社がある。

でもここで何人もの人が犠牲になったんだ。
生贄の儀式と言う名のもとに
人の命が削られたんだ…。

戒さんの両親もここで…

もしかしてお母さんは
私がこんな運命を背負うことを嫌って
この村を出たのかもしれない。
もしそれが事実なら
ごめんねお母さん

私はここに戻ってきてしまった。


境内をぐるぐる回って見る
もしかしたらあの木の影で
戒さんは両親が殺されるのを見ていたのかな。

怖かっただろうな
苦しかっただろうな

大事な人が目の前で二人もいなくなる瞬間を見たんだ。
それでも戒さんは強く生きているんだ。
チャライだけの人だと思ったけど
きっといろんなことを考えて苦しんでいるんだ。

そしてそんな戒さんを苦しめることになったのが
藤堂さんと
理事長…

理事長のことを信じていいんだろうか。
お母さんの親友だと言っていたけど
それをどこまで信じればいいんだろう。

そもそも生贄の儀式なんて本当に必要なんだろうか。
そんなことをしなくても封印の力を維持する方法があるかもしれない。
そうすれば、これ以上誰も犠牲になる必要なんかない。
そうだ、あの蔵に行ってみよう！
まだ誰も見つけられなかった方法があるかもしれない！