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第四章:諸国漫遊Ⅱ
ダンジョン都市への帰還
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ナタリア達がダンジョンから戻った次の日、朔たちは本神殿の山から降りてアル達と合流していた。朔はクランに合流することになった3名を、アル達に紹介している。
「──ということで、私達のクランに参加することになった。カルドス枢機卿の御令孫のブリジットさんと、鬼人族次期族長シュテさんの御令嬢のスズさんです」
「皆様、先日は有り難うございました。改めまして、これからもよろしくお願いしますわ」
ブリジットは、右掌を左胸にあてて頭を下げるという神職者の所作で微笑みながら挨拶した。彼女は、水色を基調とした修道服の上にマントを羽織っており、優雅に微笑む姿は、先日の醜態を知らなければ正にご令嬢といった雰囲気を纏っている。
なお、この世界の神職者の服は階位によって服装が異なり、神聖魔法の輝きのように階位が高いほど濃い青色となる。
「よろしくな!」
一方、スズは右掌を頭の高さまで上げ、笑顔で元気よく話した。彼女は訓練のときと同じ袴姿ではあるのだが、旅をするということで足元を紐で縛っている。2人の挨拶を聞いて苦笑いをしているアルが、ナタリアとミラの間に立っているヒトミを見ながら朔に尋ねる。
「そちらの娘はどなたでしょうか?」
「えーと、新しい婚約者のヒトミです」
「(……ヒトミ殿は訳ありか。まだあまり強くはなさそうだが……この只者ではない気配はなんだ?)承知しました。それでは、鬼人族の武人であるスズ殿はともかく、ブリジット嬢はなぜ?」
アルは朔の雰囲気で勘付き、話題をスズとブリジットに戻した。
「お爺様から見聞を広めるようにと言い付けられまして、アサクラ男爵の旅へ同行することになりましたの」
もちろん、これは建前の理由であり、このようなことになった理由はというと──
■
昨日の食事後、朔とヒトミはカルドスを訪ね、ジョブチェンジを依頼した。しかし、快く引き受けたカルドスがヒトミの頭の上に手を乗せて何かを呟いた途端、彼は慌てた様子で声を上げ、朔とヒトミに耳打ちする。
「ごっ!? ごほん、失礼(サク殿、これはまずいことになりますぞ)」
朔は、カルドスに合わせて小声で彼に尋ねる。
「(カルドス枢機卿、どういうことでしょうか?)」
「(神職者が行うジョブチェンジは、相手が何のジョブに就いたのか、第何職業まであるのか分かるのです。ヒトミ殿の第五職業は、今まで聞いたことがありません。どこかの教会でジョブチェンジを行った場合、大騒ぎになりますぞ)」
「(え!? そうなんですか? ヒトミ、知ってたのか?)」
「ああ、そう言えばそうだったね。あはは、忘れてたよ」
朔が驚いてヒトミに問うと、彼女は頬をぽりぽりとかきながら笑顔で正直に話した。朔がため息混じりに非難するような目つきでヒトミを見ていると、考え込んでいたカルドスが口を開く。
「……サク殿、それではブリジットを旅にお連れ下さい」
(この人、何言ってんの!?)
「いえいえ、危険な旅ですし、ブリジット嬢をお連れする訳にはいきません」
「本来であれば私が付いていきたいところではあるのですが、私は今この地を離れるわけにはいかないのです。どうか、ブリジットにその役目を与えていただきたい」
朔は慌てて断ったが、カルドスは堅い口調で再度告げた。すると、ヒトミも頷きながら同意する。
「うんうん。それが良いよ、ハニー」
(誰のせいだよ! ったく、非常に有難いんだけど……ブリジットさんは本当に大丈夫か? 悪い人ではないんだろうけど、彼女に良い印象がない。……でも他に当てもないし、信じるしかないのか?)
「……承知いたしました、カルドス枢機卿。ブリジット嬢をお預かりいたします」
朔は不安を感じながらもカルドスの提案を了承し、深く頭を下げるのであった。
■
ブリジットの説明を受け、アルは大げさに頷きながら納得したそぶりを見せつつ、話しを進める。
「聖職者は各地に派遣されることも多いですからな。ダンジョンに潜る必要はありませんし。それで、スズ殿はどうするのですか?」
「とりあえずはアル隊長のパーティに加入ですね。ライ隊長にはラッキーフラワーの面倒を見て頂いていますし」
「アル隊長! よろしくな!」
「ああ、こちらとしても、純粋な前衛向きの戦士は有難い。宜しく頼む」
アルとスズはがっちりと握手を交わす。こうして、朔たちのクランに新たな仲間が正式に加入した。
その日のうちに、朔たちは聖光教国からダンジョン都市へと向けて出発した。
リトとスズ、ナタリアとヒトミは訓練室で稽古をしており、御者席にいるのは朔、シン、ミラのみである。御者をしている上機嫌そうなミラの隣に、シンを肩に乗せた朔が座り、のんびりと一度見た景色を楽しみながら馬車を走らせていた。
数時間ほど経った頃、御者席から馬車の中へと続く扉が開き、エマが朔たちの後ろに来る。
「エマさん、どうしたんですか?」
「邪魔して申し訳ありませんわ。でも、ちょっとだけ避難させてください」
「避難?」
後ろを振り向いた朔がエマを見て尋ねると、彼女はぐったりした様子で答える。
「ブリジット嬢へのロジャーのアピールを見ているだけで胸やけが……」
「ああ、ロジャーさんが一目ぼれしたんでしたっけ?」
「そうですわ。ロジャーは今のところ躱されていますが。アサクラ男爵は新しい女性を2人も連れてきていますし、私も素敵な方に巡り合いたいものですわ」
「サクはダメ」
「ミラ、エマさんはそう言う意味で言ってないから。ヒトミは……まあそうなんですけど、スズさんは違いますよ」
朔はエマの言葉に素早く反応したミラを窘めつつ、エマに釈明した。
「そうなのですか?」
「はい。スズさんはリトの友達っていうか親友というか……良く分からないけど、とにかく馬が合うみたいなんですよね。アル隊長達やラッキーフラワーの皆はどうですか?」
「アル様やウル様は渋いおじ様で好みではあるのですが、職業上結婚して二人での生活というのは難しいでしょう? カインさん達はちょっと若過ぎますわね……」
(年上好きなんだ)
「イルさんは?」
「イル様とルイ様の邪魔はできませんわ!」
(はい?)
「んんっ、ミラさん邪魔してごめんなさい。私はこれで失礼しますわね」
今来たばかりのエマは咳払いをし、慌てた様子で馬車の中へと戻っていった。よくわからないまま残された朔はミラに尋ねる。
「ミラ、男性同士って女の子的にはどうなの?」
「知らない」
「そっか」
よくわからない話をしながらも、久しぶりの役目に張り切っているイアンとトウカが牽く馬車は、ダンジョン都市へと向けて軽快に進む。心地よい初秋の風が彼らを後押しするように吹いていた。
2日後の夜、朔達はダンジョン都市へと辿りついていた。夜間ではあるが、朔は貴族証を見せて都市の中へと入る。朔達はラッキーフラワーたちとの連絡を取るために、ダンジョン入口の傍にある建物へと進む。そこはダンジョン管理局というパストゥール王国の機関があり、3000人を超えてはいけないというルールがあるため24時間ダンジョンへの出入りを管理している。
朔がダンジョン管理局の職員にラッキーフラワーについて尋ねると、職員は大量の紙をめくり、朔に淡々とした口調で告げる。
「3日前が帰還の期限でしたが、アサクラ男爵のクランに所属しているパーティ・ラッキーフラワーは現時点をもって未だ戻ってきていません」
※参考:朔のクランの現状※
第一パーティ:朔、シン、リト、ナタリア、ミラ、ヒトミ
第二パーティ:アル、ウル、ロイ、ロジャー、エマ、スズ
第三パーティ:カイン、キザン、ツェン、バステト、タンザ、ライ
待機組(家臣団等):イル、ルイ、ハロルド、イアン、トウカ、ブリジット
※後書き※
昨日は間に合わず、申し訳ありません、
次回は、朔たちもラッキーフラワーを探して六大迷宮へと突入します。水曜日に投稿の予定です。
「──ということで、私達のクランに参加することになった。カルドス枢機卿の御令孫のブリジットさんと、鬼人族次期族長シュテさんの御令嬢のスズさんです」
「皆様、先日は有り難うございました。改めまして、これからもよろしくお願いしますわ」
ブリジットは、右掌を左胸にあてて頭を下げるという神職者の所作で微笑みながら挨拶した。彼女は、水色を基調とした修道服の上にマントを羽織っており、優雅に微笑む姿は、先日の醜態を知らなければ正にご令嬢といった雰囲気を纏っている。
なお、この世界の神職者の服は階位によって服装が異なり、神聖魔法の輝きのように階位が高いほど濃い青色となる。
「よろしくな!」
一方、スズは右掌を頭の高さまで上げ、笑顔で元気よく話した。彼女は訓練のときと同じ袴姿ではあるのだが、旅をするということで足元を紐で縛っている。2人の挨拶を聞いて苦笑いをしているアルが、ナタリアとミラの間に立っているヒトミを見ながら朔に尋ねる。
「そちらの娘はどなたでしょうか?」
「えーと、新しい婚約者のヒトミです」
「(……ヒトミ殿は訳ありか。まだあまり強くはなさそうだが……この只者ではない気配はなんだ?)承知しました。それでは、鬼人族の武人であるスズ殿はともかく、ブリジット嬢はなぜ?」
アルは朔の雰囲気で勘付き、話題をスズとブリジットに戻した。
「お爺様から見聞を広めるようにと言い付けられまして、アサクラ男爵の旅へ同行することになりましたの」
もちろん、これは建前の理由であり、このようなことになった理由はというと──
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昨日の食事後、朔とヒトミはカルドスを訪ね、ジョブチェンジを依頼した。しかし、快く引き受けたカルドスがヒトミの頭の上に手を乗せて何かを呟いた途端、彼は慌てた様子で声を上げ、朔とヒトミに耳打ちする。
「ごっ!? ごほん、失礼(サク殿、これはまずいことになりますぞ)」
朔は、カルドスに合わせて小声で彼に尋ねる。
「(カルドス枢機卿、どういうことでしょうか?)」
「(神職者が行うジョブチェンジは、相手が何のジョブに就いたのか、第何職業まであるのか分かるのです。ヒトミ殿の第五職業は、今まで聞いたことがありません。どこかの教会でジョブチェンジを行った場合、大騒ぎになりますぞ)」
「(え!? そうなんですか? ヒトミ、知ってたのか?)」
「ああ、そう言えばそうだったね。あはは、忘れてたよ」
朔が驚いてヒトミに問うと、彼女は頬をぽりぽりとかきながら笑顔で正直に話した。朔がため息混じりに非難するような目つきでヒトミを見ていると、考え込んでいたカルドスが口を開く。
「……サク殿、それではブリジットを旅にお連れ下さい」
(この人、何言ってんの!?)
「いえいえ、危険な旅ですし、ブリジット嬢をお連れする訳にはいきません」
「本来であれば私が付いていきたいところではあるのですが、私は今この地を離れるわけにはいかないのです。どうか、ブリジットにその役目を与えていただきたい」
朔は慌てて断ったが、カルドスは堅い口調で再度告げた。すると、ヒトミも頷きながら同意する。
「うんうん。それが良いよ、ハニー」
(誰のせいだよ! ったく、非常に有難いんだけど……ブリジットさんは本当に大丈夫か? 悪い人ではないんだろうけど、彼女に良い印象がない。……でも他に当てもないし、信じるしかないのか?)
「……承知いたしました、カルドス枢機卿。ブリジット嬢をお預かりいたします」
朔は不安を感じながらもカルドスの提案を了承し、深く頭を下げるのであった。
■
ブリジットの説明を受け、アルは大げさに頷きながら納得したそぶりを見せつつ、話しを進める。
「聖職者は各地に派遣されることも多いですからな。ダンジョンに潜る必要はありませんし。それで、スズ殿はどうするのですか?」
「とりあえずはアル隊長のパーティに加入ですね。ライ隊長にはラッキーフラワーの面倒を見て頂いていますし」
「アル隊長! よろしくな!」
「ああ、こちらとしても、純粋な前衛向きの戦士は有難い。宜しく頼む」
アルとスズはがっちりと握手を交わす。こうして、朔たちのクランに新たな仲間が正式に加入した。
その日のうちに、朔たちは聖光教国からダンジョン都市へと向けて出発した。
リトとスズ、ナタリアとヒトミは訓練室で稽古をしており、御者席にいるのは朔、シン、ミラのみである。御者をしている上機嫌そうなミラの隣に、シンを肩に乗せた朔が座り、のんびりと一度見た景色を楽しみながら馬車を走らせていた。
数時間ほど経った頃、御者席から馬車の中へと続く扉が開き、エマが朔たちの後ろに来る。
「エマさん、どうしたんですか?」
「邪魔して申し訳ありませんわ。でも、ちょっとだけ避難させてください」
「避難?」
後ろを振り向いた朔がエマを見て尋ねると、彼女はぐったりした様子で答える。
「ブリジット嬢へのロジャーのアピールを見ているだけで胸やけが……」
「ああ、ロジャーさんが一目ぼれしたんでしたっけ?」
「そうですわ。ロジャーは今のところ躱されていますが。アサクラ男爵は新しい女性を2人も連れてきていますし、私も素敵な方に巡り合いたいものですわ」
「サクはダメ」
「ミラ、エマさんはそう言う意味で言ってないから。ヒトミは……まあそうなんですけど、スズさんは違いますよ」
朔はエマの言葉に素早く反応したミラを窘めつつ、エマに釈明した。
「そうなのですか?」
「はい。スズさんはリトの友達っていうか親友というか……良く分からないけど、とにかく馬が合うみたいなんですよね。アル隊長達やラッキーフラワーの皆はどうですか?」
「アル様やウル様は渋いおじ様で好みではあるのですが、職業上結婚して二人での生活というのは難しいでしょう? カインさん達はちょっと若過ぎますわね……」
(年上好きなんだ)
「イルさんは?」
「イル様とルイ様の邪魔はできませんわ!」
(はい?)
「んんっ、ミラさん邪魔してごめんなさい。私はこれで失礼しますわね」
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「ミラ、男性同士って女の子的にはどうなの?」
「知らない」
「そっか」
よくわからない話をしながらも、久しぶりの役目に張り切っているイアンとトウカが牽く馬車は、ダンジョン都市へと向けて軽快に進む。心地よい初秋の風が彼らを後押しするように吹いていた。
2日後の夜、朔達はダンジョン都市へと辿りついていた。夜間ではあるが、朔は貴族証を見せて都市の中へと入る。朔達はラッキーフラワーたちとの連絡を取るために、ダンジョン入口の傍にある建物へと進む。そこはダンジョン管理局というパストゥール王国の機関があり、3000人を超えてはいけないというルールがあるため24時間ダンジョンへの出入りを管理している。
朔がダンジョン管理局の職員にラッキーフラワーについて尋ねると、職員は大量の紙をめくり、朔に淡々とした口調で告げる。
「3日前が帰還の期限でしたが、アサクラ男爵のクランに所属しているパーティ・ラッキーフラワーは現時点をもって未だ戻ってきていません」
※参考:朔のクランの現状※
第一パーティ:朔、シン、リト、ナタリア、ミラ、ヒトミ
第二パーティ:アル、ウル、ロイ、ロジャー、エマ、スズ
第三パーティ:カイン、キザン、ツェン、バステト、タンザ、ライ
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