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第四章:諸国漫遊Ⅱ
追いかけっこの始まり
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◆
「よし。上出来上出来♪」
「今度はアルス様ですか。私ではないので良いのですが……」
「神様のときのヒトミの像を造ったからさ。対になるのはアルス様にしようかなって」
「うんうん♪ きっと爺ちゃんも気に入るよ♪」
「孫馬鹿」
拠点から出発して2日後、朔たちは上層へ向かう階段の近くへと辿り着いていた。
ラッキーフラワーや、精神的に疲労しているレーヴのメンバーは、朔が造りだした簡易的な拠点で休んでおり、アルたちは一足先に上層の調査へと向かっている。そのため、暇になった朔はアルスの像を造っていたのだった。
なお、アルスの像は白い部屋でも持っていた杖で拠点への方向を指し示しており、少量のミスリル等を使うことによって、無駄に荘厳な雰囲気を纏ったものに仕上がっている。
「じゃあ像もできたことだし、俺たちも交代で休もうか」
「クックーッ」(ボクは見張りするー!)
「あはは、シンは元気だね。なら、最初はボクが見張りをするよ」
昼間の移動中、朔のフードで眠っていたシンは元気が有り余っており、ヒトミは笑いながら最初の見張り役を買って出た。
「フゴゴ~」(眠いです~)
「では、リト君は私と一緒に先に休みましょう」
一方のリトは疲れが溜まって、まぶたが閉じかかっており、ナタリアは慈しむように微笑みながらリトの頭を撫でた。朔はナタリアとリトに笑顔を向けた後、ミラの方へと視線を向ける。
「俺は中間でシンと一緒にするよ。ミラは暑さでバテてない?」
「少し。食事の仕込みはする」
「了解。何にしよっか?」
「カレー」
「やっぱりカレーなんだ。じゃあピアスリックスの肉でビーフカレーにしよっか。旨味が強いからカレーにもすごく合うと思うんだよね」
「やった! ボクは甘辛いのね!」
ミラがいつも通り即答し、朔が笑いながら提案すると、ヒトミは体全体で喜びを表現していた。さらに、朔の頭の中に聞きなれてきた声が響く。
《わしも甘辛じゃ》
《我は旨辛で頼むぞ婿殿》
(……なんでカレーのときはこだわるんだ──っと、アルス様、ミコト様、承知しました)
《サク・アサクラよ。好みじゃ》
《気分じゃな。何か揚げ物もあると嬉しいのう》
朔は思わずつっこみを入れてしまうが、すぐに頭の中でお辞儀をしながら了承した。アルスは気にもしていない様子で理由を告げ、ミコトは注文を追加した。朔はやれやれと思いながらも、アイテムボックスに収納している食材を思い浮かべて提案する。
(……それでは、カルドス枢機卿から頂いたエビを使った、エビフライカレーではどうでしょうか?)
《おお、エビふりゃーか! 良いぞ良いぞ、食してみたかったのじゃ! それではまたな、婿殿》
(はい。失礼いたします。ミコト様)
ミコトは朔が考えていた以上に感激した様子で念話を切った。しかし、アルスが威厳に満ちた声で話を続けてくる。
《それはそうと、サク・アサクラよ。ヒトミの像との対に造ったあの像は中々良い出来じゃったから褒美をやろう》
(褒美も何も、私は既に頂きすぎているのですが……)
《まあ気にするな。あの転移魔法陣はあと一週間もしない内に消える予定だったのじゃが、しばらくの間は固定しておいてやる》
(えっ!? ……ゆっくりしてたら救出に間に合わなかったかもしれないのか。アルス様ありがとうございます)
朔がアルスからの思いがけない言葉に驚き、間に合わなかったときのことを想像して慄いている中、アルスがぼそりと呟く。
《ヒトミと儂の像が無駄になるのは忍びないしの。ではな》
(……最後ぶっちゃけたな、おい)
アルスとの念話も切れた後、朔が呆れた表情をしてつっこみを入れていると、ヒトミが口をにぱっと開けて笑う。
「ハニー、気に入られて良かったね」
「ヒトミも聞こえてたのか?」
「まね。エビフライ久しぶりだからボクも楽しみだよ!」
「はあ、神様ってのは皆こんな感じなのか?」
「あはは、ボクは爺ちゃんとミコト様しか知らないからなあ」
ヒトミは笑って誤魔化した。そこに、何が起きたかわからず、話のきりが良くなるのを待っていたナタリアが朔に尋ねる。
「サクさん、アルス様はなんと?」
「こ飯はエビフライカレーが良いってさ。後、石像の褒美に転移魔法陣をしばらく固定しとくって」
「それは……アルス様のしばらくとはどの程度なのでしょう?」
「時代が変わる」
ナタリアの誰に尋ねた訳でもない疑問に、ミラが無表情で答えた。朔はアルスなら有り得るという思いから苦笑いが浮かんでしまう。
「攻略が進んで良いんじゃないかな?」
「それが本当であれば、偉大な功績なのですが……」
「あはは、攻略を進めるのは例のなんとかって王太子のクランでしょ? 俺はこれ以上深く潜るつもりなんてないし、頑張ってもらおうよ」
朔はナタリアのいう功績など意にも介さない様子で笑い飛ばすのであった。
◆
6日後、朔たちは順調に40階層へと続く階段前にたどり着いていた。これは、朔たちの実力が高いことに加え、アルたちやナタリアが持っていた情報により、転移した先が43階層であることや現在地が判明したことが大きく影響している。
そして現在、朔たちはボス戦前に全員で作戦会議を開いていた。
「アル隊長、ここのボスはわかりますか?」
「ああ。40階層のボスは、Cランクのハード・デザートスコルピオ一体とDランクのデザートスコルピオ複数体だ」
「スコルピオってどんな魔物でしたっけ?」
「サクさん、ワイバーンに食べられていた魔物ですよ」
「あの大きな蠍か。硬そうだけど、尻尾の毒針に気をつければなんとかなるかな?」
ナタリアが魔物の名前を言われてもいまいちピンと来ていない朔に補足し、朔がようやく思い出したようにぽんっと手を打っていると、話を聞いていたスズが声を上げる。
「次はあたしも前に出させてくれ!」
「スズさん?」
「あたしも役に立ちたいんだ!」
スズは肉厚の刃を持つ薙刀をぎゅっと握りしめながら、叫ぶように懇願した。戦闘を避けながら移動してきたこともあり、彼女は今まであまり役に立っておらず、貢献したいという気持ちが募っていた。
朔は、スズと一緒に行動することが多かったアルにちらりと視線を向ける。
「先走る気持ちを抑えて、慣れない偵察任務等を良くこなしていた。ステータスも悪くはない、Dランク相手であれば戦えるだろう」
「では、アル隊長たちのパーティでDランクを三体お願いできますか?」
「承知した」
朔がアルたちのパーティの割振りを決めると、今度はカインが手を上げて志願する。
「僕達にも一体お願いします!」
「……了解。付与魔法でステータスを底上げするけど、今まで戦ったこのない相手だから十分気を付けてね。レーヴの皆さんはどうします?」
朔はライに視線を向け、彼が頷いたのを確認してから了承した。次に、レーヴへと話しを振るが、彼らは及び腰で口を濁す。
「いや、我らは……」
「付与魔法はかけますし、魔石はこちらが貰いますが、ドロップした素材は皆さんの取り分にして良いですよ」
「本当ですか!?」
「サク男爵、ぜひお願いしたい!」
「おいおい、俺らにDランクの魔物の相手ができると思ってんのか?」
「しかし、ラッキーフラワーも一体引き受けると──」
「あはは、フォローはしますし、良く話合ってから決めてください。どのみち残りは私達が全て引き受けますので」
目の前に人参をぶら下げられ、ぎゃあぎゃあと仲間内で喚き始めたレーヴのパーティメンバーに苦笑するしかない朔たちであった。
◆
一方、七階層ではレオナルドが率いるクランが転移魔法陣の元に辿り着いていた。
「ここだな」
「は、はい!」
「お前らは戻って良いぞ。おい」
「ほら、情報料だ。我らが戻るのを地上にて待っておれ」
「あ、ありがとうございます!」
雇われたレーヴの三人は、護衛役を付けられることもなく、その場で少しの銀貨を渡されて帰るように命じられた。三人は異議を唱えることもできず、すごすごとその場を離れる。
「意気揚々と飛び込んだアサクラとやらは、今頃何階層にいるかな?」
「うふふ、手も足も出ない階層で、子猫のように震えているのではないかしら?」
レオナルドの言葉に、コーリンが妖艶な笑みを浮かべて答えた。レオナルドは鼻を鳴らすと、その場にいる全員に聞こえるように告げる。
「準備は良いな? 行くぞ!」
「「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」」
レオナルドたちは彼らを待ち受けるものも知らずに、自らを鼓舞するように雄叫びをあげた。
これから、レオナルドと朔の追いかけっこが始まる。
「よし。上出来上出来♪」
「今度はアルス様ですか。私ではないので良いのですが……」
「神様のときのヒトミの像を造ったからさ。対になるのはアルス様にしようかなって」
「うんうん♪ きっと爺ちゃんも気に入るよ♪」
「孫馬鹿」
拠点から出発して2日後、朔たちは上層へ向かう階段の近くへと辿り着いていた。
ラッキーフラワーや、精神的に疲労しているレーヴのメンバーは、朔が造りだした簡易的な拠点で休んでおり、アルたちは一足先に上層の調査へと向かっている。そのため、暇になった朔はアルスの像を造っていたのだった。
なお、アルスの像は白い部屋でも持っていた杖で拠点への方向を指し示しており、少量のミスリル等を使うことによって、無駄に荘厳な雰囲気を纏ったものに仕上がっている。
「じゃあ像もできたことだし、俺たちも交代で休もうか」
「クックーッ」(ボクは見張りするー!)
「あはは、シンは元気だね。なら、最初はボクが見張りをするよ」
昼間の移動中、朔のフードで眠っていたシンは元気が有り余っており、ヒトミは笑いながら最初の見張り役を買って出た。
「フゴゴ~」(眠いです~)
「では、リト君は私と一緒に先に休みましょう」
一方のリトは疲れが溜まって、まぶたが閉じかかっており、ナタリアは慈しむように微笑みながらリトの頭を撫でた。朔はナタリアとリトに笑顔を向けた後、ミラの方へと視線を向ける。
「俺は中間でシンと一緒にするよ。ミラは暑さでバテてない?」
「少し。食事の仕込みはする」
「了解。何にしよっか?」
「カレー」
「やっぱりカレーなんだ。じゃあピアスリックスの肉でビーフカレーにしよっか。旨味が強いからカレーにもすごく合うと思うんだよね」
「やった! ボクは甘辛いのね!」
ミラがいつも通り即答し、朔が笑いながら提案すると、ヒトミは体全体で喜びを表現していた。さらに、朔の頭の中に聞きなれてきた声が響く。
《わしも甘辛じゃ》
《我は旨辛で頼むぞ婿殿》
(……なんでカレーのときはこだわるんだ──っと、アルス様、ミコト様、承知しました)
《サク・アサクラよ。好みじゃ》
《気分じゃな。何か揚げ物もあると嬉しいのう》
朔は思わずつっこみを入れてしまうが、すぐに頭の中でお辞儀をしながら了承した。アルスは気にもしていない様子で理由を告げ、ミコトは注文を追加した。朔はやれやれと思いながらも、アイテムボックスに収納している食材を思い浮かべて提案する。
(……それでは、カルドス枢機卿から頂いたエビを使った、エビフライカレーではどうでしょうか?)
《おお、エビふりゃーか! 良いぞ良いぞ、食してみたかったのじゃ! それではまたな、婿殿》
(はい。失礼いたします。ミコト様)
ミコトは朔が考えていた以上に感激した様子で念話を切った。しかし、アルスが威厳に満ちた声で話を続けてくる。
《それはそうと、サク・アサクラよ。ヒトミの像との対に造ったあの像は中々良い出来じゃったから褒美をやろう》
(褒美も何も、私は既に頂きすぎているのですが……)
《まあ気にするな。あの転移魔法陣はあと一週間もしない内に消える予定だったのじゃが、しばらくの間は固定しておいてやる》
(えっ!? ……ゆっくりしてたら救出に間に合わなかったかもしれないのか。アルス様ありがとうございます)
朔がアルスからの思いがけない言葉に驚き、間に合わなかったときのことを想像して慄いている中、アルスがぼそりと呟く。
《ヒトミと儂の像が無駄になるのは忍びないしの。ではな》
(……最後ぶっちゃけたな、おい)
アルスとの念話も切れた後、朔が呆れた表情をしてつっこみを入れていると、ヒトミが口をにぱっと開けて笑う。
「ハニー、気に入られて良かったね」
「ヒトミも聞こえてたのか?」
「まね。エビフライ久しぶりだからボクも楽しみだよ!」
「はあ、神様ってのは皆こんな感じなのか?」
「あはは、ボクは爺ちゃんとミコト様しか知らないからなあ」
ヒトミは笑って誤魔化した。そこに、何が起きたかわからず、話のきりが良くなるのを待っていたナタリアが朔に尋ねる。
「サクさん、アルス様はなんと?」
「こ飯はエビフライカレーが良いってさ。後、石像の褒美に転移魔法陣をしばらく固定しとくって」
「それは……アルス様のしばらくとはどの程度なのでしょう?」
「時代が変わる」
ナタリアの誰に尋ねた訳でもない疑問に、ミラが無表情で答えた。朔はアルスなら有り得るという思いから苦笑いが浮かんでしまう。
「攻略が進んで良いんじゃないかな?」
「それが本当であれば、偉大な功績なのですが……」
「あはは、攻略を進めるのは例のなんとかって王太子のクランでしょ? 俺はこれ以上深く潜るつもりなんてないし、頑張ってもらおうよ」
朔はナタリアのいう功績など意にも介さない様子で笑い飛ばすのであった。
◆
6日後、朔たちは順調に40階層へと続く階段前にたどり着いていた。これは、朔たちの実力が高いことに加え、アルたちやナタリアが持っていた情報により、転移した先が43階層であることや現在地が判明したことが大きく影響している。
そして現在、朔たちはボス戦前に全員で作戦会議を開いていた。
「アル隊長、ここのボスはわかりますか?」
「ああ。40階層のボスは、Cランクのハード・デザートスコルピオ一体とDランクのデザートスコルピオ複数体だ」
「スコルピオってどんな魔物でしたっけ?」
「サクさん、ワイバーンに食べられていた魔物ですよ」
「あの大きな蠍か。硬そうだけど、尻尾の毒針に気をつければなんとかなるかな?」
ナタリアが魔物の名前を言われてもいまいちピンと来ていない朔に補足し、朔がようやく思い出したようにぽんっと手を打っていると、話を聞いていたスズが声を上げる。
「次はあたしも前に出させてくれ!」
「スズさん?」
「あたしも役に立ちたいんだ!」
スズは肉厚の刃を持つ薙刀をぎゅっと握りしめながら、叫ぶように懇願した。戦闘を避けながら移動してきたこともあり、彼女は今まであまり役に立っておらず、貢献したいという気持ちが募っていた。
朔は、スズと一緒に行動することが多かったアルにちらりと視線を向ける。
「先走る気持ちを抑えて、慣れない偵察任務等を良くこなしていた。ステータスも悪くはない、Dランク相手であれば戦えるだろう」
「では、アル隊長たちのパーティでDランクを三体お願いできますか?」
「承知した」
朔がアルたちのパーティの割振りを決めると、今度はカインが手を上げて志願する。
「僕達にも一体お願いします!」
「……了解。付与魔法でステータスを底上げするけど、今まで戦ったこのない相手だから十分気を付けてね。レーヴの皆さんはどうします?」
朔はライに視線を向け、彼が頷いたのを確認してから了承した。次に、レーヴへと話しを振るが、彼らは及び腰で口を濁す。
「いや、我らは……」
「付与魔法はかけますし、魔石はこちらが貰いますが、ドロップした素材は皆さんの取り分にして良いですよ」
「本当ですか!?」
「サク男爵、ぜひお願いしたい!」
「おいおい、俺らにDランクの魔物の相手ができると思ってんのか?」
「しかし、ラッキーフラワーも一体引き受けると──」
「あはは、フォローはしますし、良く話合ってから決めてください。どのみち残りは私達が全て引き受けますので」
目の前に人参をぶら下げられ、ぎゃあぎゃあと仲間内で喚き始めたレーヴのパーティメンバーに苦笑するしかない朔たちであった。
◆
一方、七階層ではレオナルドが率いるクランが転移魔法陣の元に辿り着いていた。
「ここだな」
「は、はい!」
「お前らは戻って良いぞ。おい」
「ほら、情報料だ。我らが戻るのを地上にて待っておれ」
「あ、ありがとうございます!」
雇われたレーヴの三人は、護衛役を付けられることもなく、その場で少しの銀貨を渡されて帰るように命じられた。三人は異議を唱えることもできず、すごすごとその場を離れる。
「意気揚々と飛び込んだアサクラとやらは、今頃何階層にいるかな?」
「うふふ、手も足も出ない階層で、子猫のように震えているのではないかしら?」
レオナルドの言葉に、コーリンが妖艶な笑みを浮かべて答えた。レオナルドは鼻を鳴らすと、その場にいる全員に聞こえるように告げる。
「準備は良いな? 行くぞ!」
「「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」」
レオナルドたちは彼らを待ち受けるものも知らずに、自らを鼓舞するように雄叫びをあげた。
これから、レオナルドと朔の追いかけっこが始まる。
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