神様のヒントでキャラメイク大成功!魔法も生産も頑張ります!

まるぽろ

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2巻

2-2

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「殿下、前半はその通りです。ですが、この現象自体は魔法ではありません。これは科学です。科学とは、簡単に言えば、現象を支配する法則を明らかにすることです」

 正しい結論を出したウィルヘルムに、朔は科学の中でも自然科学に分類されるものの考え方を伝えた。
 その後、朔はウィルヘルムに、井戸とタンクを繋ぐパイプがなぜタンクの下部ではなく上部まであるのか、なぜ風玉をゆっくり解放すると弁が開くかなどを、自然科学の理論に基づき説明していった。

「――最後に、これは宿題です」

 講義の最後、朔は名残惜しそうにしているウィルヘルムに紙の束を差し出した。

「これには、いくつかの現象が書かれています。それを利用した生活に役立つ物を考えてみてください。また、可能であれば実験をもとに法則を見つけてください」

 ウィルヘルムは紙束を受け取ると、大きな声で宣言する。

「はい! 師匠! 必ずや全ての法則を明らかにしてみせます!」

 朔が渡したものは、実験が割合簡単な自然現象(テコの原理、アルキメデスの原理、ボルタ電池、運動エネルギー保存の法則など)の紹介から始まり、朔もよくわかってない蒸気機関に繋がる提案(水が沸騰ふっとうしたときに蓋を動かす力を使って何か作ってみましょう)などが書かれていた。

(はて……俺はいつの間に師匠になったんだ? まあ、全部は無理だろうなあ。というか蒸気機関のことなんて俺もよく知らないから、正解かどうかなんてわからないよ。やる気になってくれたならいいか♪ 俺は気ままに旅がしたいから、科学を広めるのは、殿下、よろしくお願いします。俺の発表がかすむくらいのことをして、エジソンのような発明王として歴史に名を残してくださいね。さて、レオン様は俺のこの回答に気付いてくれるかな?)
「えー、頑張がんばってください、殿下」

 朔が笑顔でウィルヘルムに告げると、彼は元気よく答える。

「はい!」

 朔は知らなかったが、錬金術師の慣習では、オリヴィアが朔にしたように、個人的に課題を出すことは弟子入りを認めることになる。それゆえ、ウィルヘルムは喜んでいたのであった。


 ウィルヘルムが嬉しそうに紙束を持って帰った後、朔はシンとともに職人街へ来ていた。

「こんにちは、ガルムさん。頼んでいたものはできましたか?」

 朔が店の奥に声をかけると、髭面ひげづらの人族が顔を出す。

「ああ、けったいなものを注文した兄ちゃんか。新しい店でも始めんのかい? できてるぜ」

 髭面ひげづらの男の名はガルム。鍛冶魔法使いであり、基本的に注文を受けたものは何でも作るという、職人の中では珍しい部類の男である。

「とても早く制作していただき大変助かりました。ありがとうございます」

 朔が頭を下げると、ガルムはにやりと笑みを浮かべた。

「材料持ち込みの上に、全額前払いしてくれる客は上客だからな。俺が材料と金を持って逃げたらどうするんだよ。兄ちゃん、いつか痛い目をみちまうぞ」
「ご忠告ありがとうございます。私が失うものは働けば手に入りますが、あなたが失うのは貴重な上客と信用です。どちらが損をするのかは自明でしょ?」
「はっはっは、違いねえな!」

 朔の返しに、ガルムは豪快に笑った。


 そして二日後――

「できたー!」

 またしても徹夜で魔導具を作っていた朔は、オリヴィアの屋敷にある地下の部屋を出て階段を駆け上がった。そして、食事の用意をしていたミラを見つけると、そわそわしながらキリのいいところまで待ち――料理人に仕上げを託し、彼女を抱えて走る。

「サク、何?」

 オリヴィアの食事を作る邪魔をされたミラが無表情にたずねる。すると、朔はミラを抱えたまま嬉しそうに告げた。

「ミラがみんなと入れるお風呂ができたんだよ!」

 二人が浴場に着くと、そこにはバームクーヘンを四つに切り分け、少しすきを開けたような風呂があった。それぞれの湯船は個々に温度調整ができ、なおかつみんなで顔をあわせて入ることができる。ミラ待望の風呂である。


         ■


(どうしてこうなった……)

 朔は今、新しく制作したバームクーヘン型の風呂に入っている。
 そして――

「フゴー」(温かいですー)
「気持ちいいですね。このお風呂は自分好みに温度を変えられるので、熱いお風呂が好きな私には大変ありがたいです。サクさん、ありがとうございます」
「リト、かなり熱めだからのぼせる前にこっちにおいでね。リアはもっと早く言ってくれたらよかったのに」
「いえいえ、普通の温度のお風呂も大好きですから、入れるだけでも大変嬉しいです」

 朔の左隣の風呂には、リトとナタリアが入っている。リアは熱めの風呂が好みということで、温度が高めになるように設定している。ナタリアは湯浴み着を着て風呂に浸かっているのだが、ぴったりと肌に貼りついたそれ越しでも、彼女のスタイルのよさがわかる。

(……ナタリアさん、意外と大きいな)

 見てはいけないと思いつつも、朔はちらちらとナタリアの胸に目線がいっていた。ナタリアは当然気付いており、耳まで真っ赤になっているが、朔はバレていることに気付いていない。

「極楽だにゃ~。お風呂に入るのはこれが最後かもしれないと思うと残念だにゃ~」

 朔の対面にはバステトが入っていた。獣人族には風呂に入るときに湯浴み着を着る習慣がなく、また彼女が隠そうともしないため、大きくはないが形のいい胸が露わになっている。

「バスたちもダンジョン都市に向かうの?」
「カインが修業をやり直そうって言ってるから、私たちはスタットに戻るにゃ~」

 研究発表後、カインたちは依頼を受けずに、王都のギルドで共同訓練を受けていた。しかし、訓練を受けている人数が多いため、どうしても個別に対応してくれる時間が少なく、あまり効率がよくないと感じていたのだった。

「そっか、さびしくなるね」
「その内また会えるにゃ~。皆、サク様に恩返しするってやる気満々だからにゃ♪」
「無理はしないようにね。困ったことがあったら、老師に連絡するんだよ?」
「にゃははは、サク様は優しいにゃ~。しばらく会えないし、子種でももらっとくかにゃ」
「ダメです」
「ダメ」

 朔が反応するよりも早く、ナタリアとミラが風呂から身を乗り出して否定した。
 ミラは、朔から見て右側で冷水に浸かっている。サウナにある水風呂くらいの温度がちょうどいいとのことで、冷蔵庫と同じように氷を作り出し、温度を調整している。なお、ミラも湯浴み着を着ているのだが、わずかにふくらみがあるのがわかる程度である。
 ミラは乱れた湯浴み着を直しながら朔の方に寄っていくと、無表情のまま告げる。

「リアはいい。けど、バスはダメ。もししたら……こおらせる」
(ナニを!? ミラさん、怖いです! というか、なんで許可がいるんだろうか)
「はい」

 疑問に思いつつも、へたれな朔はミラに強く出ることもできずにうなずいた。

「にゃははは、サク様は愛されてるにゃ。冗談じょうだんにゃ~」

 バステトがからからとご機嫌そうに笑ったその後も、皆でわいわいと話していると、突然リトが顔を真っ赤にしてお湯の中に沈んだ。
 朔は風呂から飛び出し、ナタリアとリトが入っていた風呂のふちに足をつけ、リトを引っ張り上げる。その際、自分の湯浴み着がはだけていたことに気付かないまま、リトを脱衣所に運び、制作していた魔導冷風機の風をリトに向け、氷嚢を首、両脇、太ももの付け根に当てて、体を冷やした。
 一方、朔とリトが出ていった後の風呂では、ガールズトークが盛り上がっていた。ナニについての話かは言うまでもない。

「クッ? クッ?」(あれ? パパは?)

 後日、一匹のスパイによってその話が朔に伝わり、悶絶もんぜつすることになるのであった。


         ■


 風呂を満喫まんきつした次の日――
 朔は、シン、リトとともに旅のための買い出しで市場に来ていた。すると、一匹のオークを連れた、本人もまたオークのような人族の男が、前方から歩いてくるのが見えた。

(テイマー仲間か? どっちがオークかわからないな)

 朔がさして気に留めずに買い出しを続けていると、後ろから声が聞こえた。

「ほう、お前珍しいな。俺が飼ってやるからこっちに来い」

 朔が振り返った先では、オークのような男がリトの腕を引っ張っていた。

「フゴッ?」(何?)

 しかし、彼の力はリトには全く及ばないため、リトは何をしているかよくわからず、無邪気に首をかしげる。

「フゴッ、フゴゴッ」(坊主、逃げなっ)
「余計なことを言うな!」

 男の連れていたオークがさけぶと、オークのような男はそれをとが短鞭たんべんを振り上げた。そこへ、朔が一瞬でオークのような男に近づき、短鞭たんべんの先端を掴んだ。

「貴族様、このような公共の場でそうした振る舞いはおやめになったほうがよろしいかと」
「誰だお前は! コション男爵家の次期当主であるこのベイブ・フォン・コション様に向かって無礼だぞ!」

 激昂げきこうした男は、顔を真っ赤にしてつばを飛ばした。

「……私は、上……級学師の、サク・アサ……クラ……と申します」

 朔の肩は若干じゃっかん震え、返答も途切れ途切れだった――実は、笑いをこらえているだけなのだが……

(コション! コションって! フランス語の豚じゃん! ベイブって古い洋画の主人公豚の名前だし! 豚・フォン・豚って! いい出汁だし出てそうだな!)

 朔が心の中で笑い転げていることを知らないベイブは、朔が恐れて萎縮いしゅくしていると思い、にやにやと嫌らしい笑みを浮かべて近づいた。

「サクアサ・クラか。変な名前だな。それより、この魔物はお前のだな?」
(お前にだけは言われたくないわ! それに、区切るところが違う!)
「学師程度の似非えせ貴族風情が、私に歯向かうとは……今なら、この魔物を私に寄越せば許して――」
「――断る」
「――やる……ぞ?」

 朔は、ベイブが言い切る前に答えた。ベイブは予想外の答えに混乱し、聞き間違いかと思い、再度口を開く。

「その魔物を――」
「――断る!」

 しかし、朔は先程よりも毅然とした口調で答えた。

(俺の息子を、貴様みたいな豚貴族にやるわけないだろうが!)

 ベイブは顔を真っ赤にして癇癪かんしゃくを起こしはじめた。掴んでいたリトの手首についていた、ナタリアが結んでくれた従魔のあかしであるひもを引きちぎり、地面に投げ捨て足で何度も踏む。
 その光景を見た瞬間、朔はベイブをなぐり飛ばそうかと思ったが、行動を起こす前に、リトの雰囲気ふんいきが変化していることに気付いた。

「フゴゴゴゴッ!」(母上からもらったひもが!)

 リトは地面に膝をつき、ぼろぼろになったひもを手に取る。

「フゴ? フゴゴ? フギャ? グギャ!」(なんで? なんでです? なゼ? ナゼダ!)

 リトは鱗を逆立たせ、クリクリしたつぶらな瞳から、爬虫類はちゅうるいのそれに変化し、強烈な殺気をまとう。

「グギャギャッ!」(コロスッ!)

 危険を察知した朔はベイブを軽く突き飛ばし、彼に掴みかかろうとしたリトと、プロレスで言う手四つの体勢になる。

(……これがリト!? リザードマンの性質か? 力が強くなってるな。今はまだ余裕があるけど、ランクが上がると、俺で止められるのか?)
「グギャ!」(ドケッ!)
「リト! 落ち着け!」
「グギャギャ!」(ソイツヲコロス!)

 リトは朔を振り払おうとするが、リトよりもかなり高いSTR力の強さを持つ朔はビクともしない。むしろ、朔はリトに怪我けがをさせないように手加減をしていた。そして、頃合いを見て、リトを落ち着かせようとする。

「ダメだよ、リト。家に帰ろう」
「グギャ! グギャギャ!」(イヤダ! ハナシテ!)
(……口調が少し戻ってきてるし、もうちょいかな。怒りに任せて、ごく短時間能力が上がるスキルか? それはともかく……)
「リト、リアが悲しむよ? いつもの優しいリトに戻ろうね」

 朔はリトをいつくしむように優しく声をかける。

「グギ、グギャ……ゴッ?」(コロ……ハハウ……え?)
「そうだよリト。家に帰って、リアにもう一度あかしをつけてもらおうね」
「グギ……ゴ、ギャ……フゴッ!」(コロ……母、ス……母上!)

 いつもの声でさけんだ途端とたん、鱗と瞳が元に戻り、リトの体から力が抜けた。朔は、尻もちをついて失禁しているベイブを見下ろすと、殺気を込めて告げる。

「ベイブ卿、私がリトを手放すことはありません。もし私の家族に無理矢理手を出そうとするなら……シン」

 朔がシンの名前を呼ぶと、ベイブの膝の上に、気配遮断を解除した真っ黒なフクロウであるシンがやってきて、じーっと彼を見つめる。ベイブからすると、シンはとても禍々まがまがしく不吉なものに見えたため、あわてて振り払い、ふごふごと息を乱しながら逃げていった。オークはこちらに目礼すると、ベイブを追いかけていく。

(……やってしまったかな? まあいいか。リトをあんな豚貴族に渡すわけにはいかないし)


 その日の夜――

「リトにそんな性質があったとはねえ。まあ、男爵程度どうにでもなるさね。そもそも、その豚は家督を継いでいないなら、まだ貴族ですらないがね。しかし、サクがここにいると面倒だ。予定より早いが、ダンジョンにでも潜るかい?」

 オリヴィアに報告と相談をしていると、朔の頭の中に久しぶりにアルスの声が響いた。

《そんなハニーに朗報でーす♪ ここから歩いて四日くらいのところに、自然発生した若いダンジョンがあるよー♪ 今のところ氾濫はんらんする危険性もないから、神託も告げずに放ったらかしてたけど、ハニーが攻略してもいいよ。どうせ転移門なんて魔導具を作るんなら、Sクラス級の魔石がいるんだし、ダンジョンの最奥にある魔石――ダンジョンコアは素材にぴったりだから、ちょうどいいんじゃない?》

 突然黙り込んだ朔に、オリヴィアはにやりと笑い、冗談じょうだんのつもりでたずねる。

「どうした、サク、神託でも降りてきたのかい?」
(どうしよ。老師には伝えていた方が、あとあと都合がいいか)

 朔は少しだけ悩んだ上で、オリヴィアに告白する。

「……はい。ここから四日くらいのところに、氾濫はんらんの危険性がない若いダンジョンがあるそうでして、そこを攻略したらどうかと」

 オリヴィアは、目を見開いたまま固まった。


         ■


 朔たちは今、草原を東に歩いている。
 あの晩、驚きで固まったオリヴィアが再起動した後、朔は色々と問い詰められた。そこで、ごくまれにアルスから話しかけられることを説明した。そして、ナタリアを含めて今後のことを話し合った。その結果、ダンジョンを放っておくことはできないため、次の日の昼に朔たちは王都を出発したのだ。
 朔、シン、リト、ナタリア、ミラは、ダンジョン都市に近い西門から出発した後、とある理由から王都を大きく迂回うかいする形で、若いダンジョンがある東に向かった。
 そして、カイン、キザン、ツェン、バステト、タンザら、パーティ『ラッキーフラワー』もまた、スタット方面である南門から出た後、朔たちと同じように王都を迂回うかいして東に向かい、朔たちと合流していた。
 草原を歩きながら、朔はカインに話しかける。

「カイン、付き合わせて悪いね」
「いえいえ、サクさんたちのお役に立てることであれば何でも言ってください! ただ、薬草はともかく、ダンジョンなんて本当にあるのでしょうか?」

 オリヴィアの策で、朔たちはダンジョンがある地域の調査依頼を、ギルドで受けていた。
 通常、確度が高いダンジョンの情報に関しては軍が処理し、低いものは冒険者ギルドで処理をする。当然、まずは調査をするところから始められるのだが、今回の件についても朔たちが動けるよう、オリヴィアの伝手つてでギルドに報告した。そして、普通は冒険者たちが確度の低い調査依頼を単体で受けることはないので、朔たちはポーション類の原料となる薬草類の採取依頼も同時に受けている。
 また、朔はオリヴィアから特殊な薬草を探してくるように頼まれたと、ギルド職員やカインたちに説明している。つまり、調査依頼はあくまでもついでだと、皆に余計な心配をさせないのが目的だった。なお、ラッキーフラワーを雇ったのは、万が一ダンジョンを発見できたときの王都への伝令役になってもらうためだ。

(マッチポンプだからね。そりゃあるよ。アルスが嘘をついてなければね)
《ハニー、嘘なんてつかないよ。誤魔化ごまかすことはあるけどね》
(……それはよく知ってるよ)
「本命は老師から頼まれた薬草だからね。万が一ダンジョンがあったら、俺たちはできるだけ進んでダンジョンの規模を確認するけど、カインたちは安全マージンを十分とりつつ、一層か二層でGランクを討伐しててね。俺たちが定刻までに戻らない場合は、カインたちだけで王都に走ってダンジョンの位置と情報をギルドに伝えること。間違っても自分たちで助けに行こうとか考えたらダメだよ」

 朔はのんびりした口調で忠告したが、カインは一旦立ち止まり、真剣なまなざしで答える。

「……はい。僕たちの今の実力で、サクさんたちが勝てない相手から助けられるとは思っていません。僕たちは一秒でも早く王都へ戻り、一秒でも早く兵士やギルドの精鋭を連れて帰ってきます!」

 朔は満点の回答をしたカインの頭をぽんぽんとたたき、心の中でつぶやく。

(純粋だなあ。ミラじゃないけど心が痛い……。まあ安全性については……ナタリアさんいわく、大分だいぶ離れてるけど、俺たちを護衛してる手練てだれが六人いるらしいから、よほどのことがなければ大丈夫だとは思うけどね)

 護衛とは、オルレアン辺境伯のアベルがつけた密偵が三人と、レオン王がつけた暗部が三人の計六人である。この六人は早い段階で連携しており、各グループの内一人ずつが常に朔を遠巻きに護衛していた。当然、豚貴族のこともレオン王の耳に届いており、今回は朔たちが王都を出発する動きを見て、護衛全員でついてきていた。
 しばらく歩き、小川についた朔たちは食事がてら休憩きゅうけいをとることにした。歩き続ける必要があるため、腹持ちがよく、消化もしやすいホワイトソースのチキンドリアを作って食べている。すると、カインが話しかけてきた。

「お米もこうして食べると美味おいしいですね」

 以前朔が作った、かゆではない白飯は、食べ慣れないためか、ナタリアとリト以外からの評判はよくなかった。ちなみに、異世界に来て初めて米をいたとき、朔は何杯もおかわりをした挙句あげく、食べすぎで倒れてしまっていた。

「白飯も美味おいしいんだけどなあ」
「僕は、サクさんが作ってくれた米料理の中では、パエリアかこのドリアが好きです!」
「気に入ってくれて嬉しいよ」
(俺は味噌汁みそしるで白飯が食べたい。大豆だいずはあったけど、こうじなんてどうやって手に入れるか知らないしなあ)

 魚醤ぎょしょうらしきものはどうにか作ったものの、朔は醤油しょうゆ味噌みそにはいまだに巡り会えていなかった。
 朔たちは休憩きゅうけいを終えて出発する。王都を出発してから、朔は朝・昼の食事休憩きゅうけいの後に、その場に風呂敷に包んだあるものを残していた。
 朔たちが出発した後、風呂敷を見つけた護衛が周りの者たちにも伝える。

「おっ、またあったぞ!」
「おお! 今度は何だろうな?」
「お前たち、任務中だぞ」
「そんなこと言って、隊長もさっき保存食食べなかったでしょ」
「……早く配れ。食べながら追いかけるぞ」

 朔が置いていったものとは護衛たちの食事であった。動きつつ食べられるように、サンドイッチや小さめのおにぎりを布に包んでいたのだ。

(……この距離で人数がバレてるって、ナタリアって女はどれだけ索敵能力にすぐれてるんだ? 西門から出たのは俺たち以外の尾行をくためで、依頼で東に向かうと地面に書いてあったし、用心深さも大したものだ。お! 今回はタマゴベーコンサンドか! まあ、俺たちが命令されたのは、彼らを守ることだけだからな。余計なことは考えないでいいか)

 (――魚心あれば水心ってね。こんな出費で護衛たちの心証がよくなるなら安いもんだよ。本当は彼らもきたかったけど、俺とナタリアさんとシンだけならともかく、リトとミラがいるからすぐ追いつかれるしな)
 一方、朔は相変わらず腹黒いことを考えているのであった。


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