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1章
1.
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『時計の魔女ルー・ルー』である私の一番初めは、山の中で一人おいていかれる記憶だった。
その年は、雨が降らなかった。
稀なる凶作で、飢饉だった。
それなのだから、仕方のないことで当時は、別段珍しいものでもなかった。
私は、別に怒ってはいないし恨んでもいなかった。
幼くも早熟だった私には、当時から仕方のないことだとわかっていたから。
小さい体の小さな心のどこかがチクリといたんだのを、気付かないふりをした。
幾たびも、幾たびも私の向かって泣きながら謝り続ける男女の姿。
きっとあれが私の両親だったのだろう。
もう顔も覚えていない人たち。
その人たちがいなくなってから私はほてほてと歩き出した。
その人たちとは、逆の方へ。
行く当てはなかった。
目指す場所もなかった。
ただ、もう帰れないと知っていたから、違うところへ行きたかったのだ。
そうして、幾日か私は山の中を彷徨った。
そうして、出会ったのだ。
大切な、大切なひとたちに。
「おや。子供がこんな所でなにしてるんです?親御さんは?」
ほてほてと一人歩いていた#ルリ__・_は、声をかけてきた真っ暗のマントを切ってフードをかぶっているその人を見上げた。
はらりと落ちた髪は艶やかな漆黒。
ルリは、まるで夜みたいな髪の毛の人だと思った。
「わかんない。とうさんとかあさんはいないよ。」
「……いない?」
「あんね、ことしはきょーさくでね、だからね、いちゃだめなんだって。くちべらし?なの。」
「凶作に口減らしですか…。難しい言葉をよく知っていましたね。ああ、だからこんなところに一人でいるのですか…。君はもう、帰れないのですね。行く当てはありますか?」
「なーよ」
「ないのですね、さてどうしますか。見殺しはちょっとアレですし…。」
きれいなその人は困ってたようにルリを見る。
だから、ルリもその人の目を見返した。
その人の目は森の色だった。
深い深い緑色。
でも、光に当たるとちょっとだけ明るい緑になる。
後のルリならこういっただろう。
”エメラルドの目”と。
「おや。随分と魔力の多い…。なら…。」
その人は、そういうと少し考え込んでいった。
「君、私の弟子になりませんか?」
「でし?」
「はい。君に魔法を教えましょう。」
「魔法…!」
ルリはキラキラと目を輝かせた。
魔力はほとんどの人が持っている。
しかし、魔法に変換できるほど魔力を持つ者は少ない。
平民ともなれば、なおさらだ。
だから、ルリにとって魔法は特別で憧れだった。
「ルリ、でしなるっ!」
「でよろしくお願いしますね。私は、『宝石の魔法使いシュム・クー』君を私の弟子と認めましょう。」
では、帰りましょうか。とそのひとー『宝石の魔法使いシュム・クー』はいって、ルリに手を差し伸べた。
ルリはその手を取って『宝石の魔法使いクレイ・スー』に手を引かれながら歩き出した。
ゆっくりと、日は傾いてそろそろ地平線に、沈むころ合いになってきた。
ほてほてとルリが手を引かれながら歩いていると、前に塔が見えてきた。
それは、山の中腹におびえ立つ高い塔があった。
コツコツととをたたいて、『宝石の魔法使いシュム・クー』は扉を開けた。
「ただいま帰りました。」
すると奥から、金の髪に真紅の目の人が出てきた。
ー後のルリは”ガーネットの目”といった。
「先生ずいぶんとおそかったですね。で、どこで何してたんですか。あと、そこの子だれですか。」
「さっき拾った子です。弟子にします。というかもうしてますね。」
「……はい?」
その人は理解不能といった様子で固まった。
「先生。すみませんがもう一度いってもらえますか?」
「さっき拾って弟子にしました。」
「わけわかりません。」
「今年は、凶作だったでしょう。それで、口減らしで捨てられたらしいです。なので、魔力が結構あったので弟子にしました。」
「なるほど…?」
ルリはうとうとし始めていた。
今までほとんど寝ずに彷徨っていたのだから無理もないことだった。
ずるり
ルリの体から力が抜けてへたり込んでしまった。
「「え…」」
慌てて2人が確認すると寝落ちているだけだった。
「まあ。無理もないことですね。私で出会う前から彷徨っていたみたいですし…。」
「その子、怪我とかはないですか?」
「かすり傷くらいだと思いますよ。」
「では、このまま寝かせますか。詳しいことは明日聞きます。もう、遅いですし。」
その年は、雨が降らなかった。
稀なる凶作で、飢饉だった。
それなのだから、仕方のないことで当時は、別段珍しいものでもなかった。
私は、別に怒ってはいないし恨んでもいなかった。
幼くも早熟だった私には、当時から仕方のないことだとわかっていたから。
小さい体の小さな心のどこかがチクリといたんだのを、気付かないふりをした。
幾たびも、幾たびも私の向かって泣きながら謝り続ける男女の姿。
きっとあれが私の両親だったのだろう。
もう顔も覚えていない人たち。
その人たちがいなくなってから私はほてほてと歩き出した。
その人たちとは、逆の方へ。
行く当てはなかった。
目指す場所もなかった。
ただ、もう帰れないと知っていたから、違うところへ行きたかったのだ。
そうして、幾日か私は山の中を彷徨った。
そうして、出会ったのだ。
大切な、大切なひとたちに。
「おや。子供がこんな所でなにしてるんです?親御さんは?」
ほてほてと一人歩いていた#ルリ__・_は、声をかけてきた真っ暗のマントを切ってフードをかぶっているその人を見上げた。
はらりと落ちた髪は艶やかな漆黒。
ルリは、まるで夜みたいな髪の毛の人だと思った。
「わかんない。とうさんとかあさんはいないよ。」
「……いない?」
「あんね、ことしはきょーさくでね、だからね、いちゃだめなんだって。くちべらし?なの。」
「凶作に口減らしですか…。難しい言葉をよく知っていましたね。ああ、だからこんなところに一人でいるのですか…。君はもう、帰れないのですね。行く当てはありますか?」
「なーよ」
「ないのですね、さてどうしますか。見殺しはちょっとアレですし…。」
きれいなその人は困ってたようにルリを見る。
だから、ルリもその人の目を見返した。
その人の目は森の色だった。
深い深い緑色。
でも、光に当たるとちょっとだけ明るい緑になる。
後のルリならこういっただろう。
”エメラルドの目”と。
「おや。随分と魔力の多い…。なら…。」
その人は、そういうと少し考え込んでいった。
「君、私の弟子になりませんか?」
「でし?」
「はい。君に魔法を教えましょう。」
「魔法…!」
ルリはキラキラと目を輝かせた。
魔力はほとんどの人が持っている。
しかし、魔法に変換できるほど魔力を持つ者は少ない。
平民ともなれば、なおさらだ。
だから、ルリにとって魔法は特別で憧れだった。
「ルリ、でしなるっ!」
「でよろしくお願いしますね。私は、『宝石の魔法使いシュム・クー』君を私の弟子と認めましょう。」
では、帰りましょうか。とそのひとー『宝石の魔法使いシュム・クー』はいって、ルリに手を差し伸べた。
ルリはその手を取って『宝石の魔法使いクレイ・スー』に手を引かれながら歩き出した。
ゆっくりと、日は傾いてそろそろ地平線に、沈むころ合いになってきた。
ほてほてとルリが手を引かれながら歩いていると、前に塔が見えてきた。
それは、山の中腹におびえ立つ高い塔があった。
コツコツととをたたいて、『宝石の魔法使いシュム・クー』は扉を開けた。
「ただいま帰りました。」
すると奥から、金の髪に真紅の目の人が出てきた。
ー後のルリは”ガーネットの目”といった。
「先生ずいぶんとおそかったですね。で、どこで何してたんですか。あと、そこの子だれですか。」
「さっき拾った子です。弟子にします。というかもうしてますね。」
「……はい?」
その人は理解不能といった様子で固まった。
「先生。すみませんがもう一度いってもらえますか?」
「さっき拾って弟子にしました。」
「わけわかりません。」
「今年は、凶作だったでしょう。それで、口減らしで捨てられたらしいです。なので、魔力が結構あったので弟子にしました。」
「なるほど…?」
ルリはうとうとし始めていた。
今までほとんど寝ずに彷徨っていたのだから無理もないことだった。
ずるり
ルリの体から力が抜けてへたり込んでしまった。
「「え…」」
慌てて2人が確認すると寝落ちているだけだった。
「まあ。無理もないことですね。私で出会う前から彷徨っていたみたいですし…。」
「その子、怪我とかはないですか?」
「かすり傷くらいだと思いますよ。」
「では、このまま寝かせますか。詳しいことは明日聞きます。もう、遅いですし。」
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