無理やり連れて行かれた異世界で私はカースト最下位でした。でも好きな人がいるから頑張れます!

太もやし

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始まり

ハルトさんとの約束

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 昔見た囚われた宇宙人の写真みたいに2人の間に挟まれ連れて行かれたから、私は諦めて目を閉じた。

「おい、ついたぞ」

 目を開けると、そこは異世界でした。

 さっきまで路地裏にいた私たちは気づくと、テレビで見たことがあるヨーロッパの建築物で、大きな教会みたいな場所の前にいた。

「ようこそ、イルドの入口へ。子猫ちゃんはこれから、ここで検査だよ」

「中で魔法因子の検査がある。大人しく、ついてこい」

 大人しくのところをえらく強調しながら、ハルトさんは私の腕を引いた。襟首は解放されたけど、手錠のような光る輪を両手首につけられた私は、警察に連れて行かれる犯罪者のように2人にトボトボついていった。

 検査場の中に入る。検査場の天井は高く、奥行は何人入れるかわからないぐらい広かった。そんでもって、ものすごい豪華! 天井画が描かれていたら、私が想像する大聖堂だったくらい豪華だった。

 そして私たちに、可愛らしい水色でミニスカのメイド服みたいな服を着たお姉さんが駆け寄ってくる。もしかしてこれは夢で、この間見たアニメに影響されているのかな?

「アンリさま、ハルトさま、お疲れ様です」

 あ、夢じゃないや。もし夢なら、お姉さんは私を特別扱いしてくれるだろうけど、ハルトさんたちを見て頬を染めて、私を一切眼中に入れてくれない。これが無意識の自意識なら切なすぎるでしょ。

 アンリと呼ばれたハンサムは名札をチラッと見たあと、柔らかい笑顔を浮かべた。私、目がすごいいいんだよね。アンリさんの笑顔は、心からの笑顔じゃないとみた。

「お迎えありがとう、ハリエルちゃん。子猫ちゃんの検査をお願い。誤診だって騒ぐんだよねえ」

 ハリエルと呼ばれたお姉さんは、エプロンの前ポケットから透明なビー玉みたいな球体を取り出した。

「それは簡易検査の道具だろ。もっと高性能なやつはどうした?」

 ハリエルさんが近寄ってから黙っていたハルトさんがようやく口を開いた。女の人が苦手なタイプなのかな、いや、それにしては私の扱いが雑だけど。

 ハリエルさんは困った顔で、ハルトさんを見上げた。

「あちらは前回の子の魔法因子が強すぎたせいで壊れたままでして……こちらなら、どれだけ力が強くても測れますから安心してください」

 ハリエルさんが私に球体を差し出す。

「これが反応しなかったら、私は家に帰れますか?」

 私の言葉に、ハリエルさんは驚いた顔をしたあと、とりあえずの笑顔を作ってくれた。

「はい、これが透明なままなら誤診ですね。でも少しでも白くなったら、魔法因子がある証拠ですよ」

「あっ、たぶん違うんで大丈夫です」

 私は自信満々の笑みを浮かべながら、球体を受け取った。

 自分が魔法使いでない確信があるから、みんなに見せつけるように手を開いた。が、すぐに球体を手で隠した。

「真っ白だったねえ」

「真っ白だったな」

「真っ白ですね」

 3人は一斉にそう言った。

「ちっ、違いますう! 見間違えってやつですよ!」

 焦りを感じながら、私は自分の顔の前でもう一度、手を開いて球体を見た。

 球体は間違いがないほど、真っ白だった。嘘でしょ、さっきの透明に戻ってよ。球体を握り締めてブンブンと振る。

「おい、そろそろ諦めろ」

 私の手を、ハルトさんは片手で押さえた。私は勢いよく手を振っていたから、急の制止に球体は手からこぼれ落ち、それをアンリさんが受け取った。

「はい、キャッチ。これは間違いないくらい、真っ白だねえ」

 アンリさんは球体を光にかざすけれど、真っ白なそれは光を通すことはなかった。
視界が段々と真っ暗になっていく。これが失神ってやつ? 私は心のどこかでそう思いながら、意識を手放した。



「夢だっ!」

「うおっ」

 自分の大声で目が覚めた。あとガン、ドスンという物音で。だけど見知らぬ天井に、さっきのことが夢じゃないことを知る。

「起き方、怖すぎだろ。ビビらせんな」

 この嫌味なぐらい、いい声の持ち主はハルトさんだ。すごいドスの聞いた声に、うんざりした気持ちで、起き上がってハルトさんを見る。ドスンという音はハルトさんがイスから落ちた音だったらしく、倒れたイスとそばにいるハルトさんという不思議な構図が目に入った。

 思わず吹き出してしまった私を横目に、ハルトさんは不機嫌な顔で立ち上がり、イスを立てた。

「これからお前をイルドに連れて帰る。長くて詳しい話は担当が違うから話さないが、お前を連れ帰るまでが、おれの仕事だからな」

 ここは腹をくくるしかないよ。私の良心が囁く。渋々ベッドから降り、ハルトさんの横に並んだ。

「え?」

 しかしハルトさんは間抜けな顔で私を見下ろした。ちょっと背が高くてイケメンだからって、ときめかないんだからね! 嘘です、その気が抜けた顔に思わずときめきました。

「なんですか?」

 私が見上げながら尋ねると、ハルトさんは口を押さえて、モゴモゴと言った。どうやら照れているようで、少し顔が赤い。

「……そう大人しくしていると、可愛いと思う。大人しくしていると、だからな」

 えっ、可愛いって言った? 言ったよね! 嬉しさのあまり、顔がぶわあっと熱くなって、思わずニヤニヤとしてしまう。

「おい、その顔やめろ」

 ハルトさんはムッとした顔で、私の顎を掴むと、2つある扉の右の方を向かせた。

「あの扉を超えたら、イルドだ。新しい世界が、お前を待っている。色んなやつがいるけど、ビビるなよ」

 そしてハルトさんは私の背中を押した。

「行きたくないけど、行かなきゃいけないんですよね」

 肩をがっくり落とした私に、ハルトさんは溜息混じりの呆れた、でも少し面白そうな声を出した。

「まだ言ってんのか」

「そんなに切り替え早くないんですもん。でも、ビビらないって約束します」

 できるだけ、カッコつけた声を出す。でも本音は、滅茶苦茶ビビってる。新しい世界に飛び込むのに、ビビらない訳ない。

「ハルトさんに次会うときは、私は一流の魔法使いになっていますからね。なんでも頑張る、がモットーなんで!」

 私は扉に向かって駆け出した。そして目をつむりながら扉を開けて、扉の先に足を一歩踏み入れた。

 が、私の可愛い鼻が何か硬いものにぶつかった。めっちゃ痛い。

「子猫ちゃんは元気だねー」

 目を開けると、私はアンリさんに抱きしめられていた。

「そっちの仕事はお願いね、ハルトくん」

「わかりました、アンリさん。そちらは頼みます」

 私の後ろで、扉が閉まる。ああ、もう二度と帰れないんだ。でも頑張るって決めたから、精一杯頑張ってやる!
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