無理やり連れて行かれた異世界で私はカースト最下位でした。でも好きな人がいるから頑張れます!

太もやし

文字の大きさ
7 / 21
学校生活

図らずも改造制服

しおりを挟む
 あの魔法騒動の次の日、私に制服が支給された。ブリジットちゃんや私と揉めた子が着ていた、かっちりとしたワンピースは制服だったのだ。制服だから、私も当然着ることになったのだけれど……

 ワンピースにはフリルやレースがたっぷりついていて、重たくて動きづらい。だから私は、制服を改造することにした。

 少しヒールがあるローファーを履かなければ、床についてしまう裾を、思いっきり膝丈まで切った。切れ目が見えないように、端を折って縫う。自己流でスカート上げる。女子高生といえば、こんな感じでしょ。正直、偏見と思い込みだ。

 試着してみると、予想していたより少し上まで上がってしまったけど、許容範囲だと思う。

 自分の仕事に満足して、鏡の前でクルクルと回りながら鼻歌を歌っていると、部屋を真ん中で仕切るカーテンからブリジットちゃんが覗いてきた。

「なんだか楽しそうだね、どうしたの? って、きゃあ!」

「どうしたの、ブリジットちゃん?」

 ブリジットちゃんは自分の目を両手で覆い隠して、真っ赤な顔をしていた。

「リンカちゃん、足が見えてる! いったい、なにがあったの?」

「足? 普通だと思うけど……」

「ここでは、女性は足を隠すものなの! 裸で歩いているようなものだよ!」

 ブリジットちゃんの早口に、ヒクッと口が引きつる。支給された2枚とも、もう改造してしまったんですけど!

「向こうじゃ、これが普通だったから、やっちゃった! 校則違反になっちゃうの!?」

「足を隠すことは常識過ぎて、校則には書いてないよ! でも風紀に引っかかるよ!」

 うわあああ! なんてことをしてしまったんだ、私は!

「時間を戻す魔法とかない!?」

「あるかも知れないけど、わかんないよ! 早く新しい制服をもらわないと!」

 そうやって騒いでいると、隣の部屋に壁ドンされ、私たちは大人しく黙った。



 次の日、私は初めて学校に登校した。全生徒から奇異の目で見られ、針のむしろというやつだった。足を出していることが、そんなに珍しいのか!

 ブリジットちゃんは途中で茶色の襟の子に呼び止められて何か話していたけど、私は緊張で心臓がどうにかしそうで、話に入る余裕はなかった。

「リンカちゃん、リンカちゃん」

 ブリジットちゃんが私の肩に手を置いた。私はビクッと大きく跳ねてしまう。

「はいっ!」

「あ、驚かせてごめんね。昨日の事件、もう噂(うわさ)になっているんだって。全寮制だから、噂も広がるのが早いの」

 恐るべし、全寮制。

「ヴァンがソルに恥をかかされたって、噂が走ったから、ヴァンの子たちが怒ってるんだって。気をつけてね、リンカちゃん」

「うん、気をつける。というか、もっと気合入れるね、ブリジットちゃん。ありがとう」

 そう気合が足りなかったのだ。高校に入るからと、浮かれていたのだ。私は自分のほっぺを叩いて、気合を入れる。

 そして教員室の前で、私はブリジットちゃんと別れた。入るの、嫌だなあと思っていると、中から扉が開いた。

 私と中から出てきた人がぶつかりそうになるのを、私が横に移動することで避ける。中から出てきた人は、ハリアー先生だった。

「ハルゾノさん!」

 焦りと怒りがごちゃまぜになった表情で名前を呼ばれ、もう逃げられないことを悟る。大人しく、出頭します。

「おはようございます、ハリアー先生。あの、おっしゃられた通り来ました」

 言葉がおかしくなる。自分が悪いことをしたとわかっているから、半端ない罪悪感が襲う。

 先生は眼を剥いて、私を上から下まで見た。

「ピーテット夫人から連絡がありました。あなたがお尻丸出しで歩いていると」

 思わず目が点になる。膝から下を出しているだけで、お尻丸出しなの!?

「お尻丸出し!? 私が変態みたいな言い方、やめてくださいよ!」

「言い過ぎでは、ありません! あなたはこの世界の常識を知らないとはいえ、あまりにもやり過ぎです!」

 何も言い返せない。昨日支給されたばかりの新品のローファーを見ながら、おっしゃる通りだと頷いた。

「まあ、替えができるまでは、その姿でいなさい。反省になるでしょう」

「はい、すみませんでした」

 大人しく謝ると、先生は分かってくれたようだった。大きな溜息を、私の頭の上でつかれる。

「これからは、あちらの常識で行動しないこと。いいですね?」

「はい、注意します」

 そして先生に怒られたあと、私と先生はこれから私のホームルームになる教室に向かった。



 誰からも話しかけられることなく、1日の授業が終わった。ブリジットちゃんは話しかけようとしてくれたけど、他の子たちに連れて行かれ、話すことはできなかった。クラスは階級ごとに分かれていて、ここはソルのクラスだから大丈夫だと思ったけど、そうじゃなかったらしい。

 幸いだったことは、これが初学期の初授業の日だったことだろう。意味は分からなかったけど、そんなものかと聞いていたら、なんとなく分かった気がする授業たちだった。

 帰る準備をしていると、大きな音を立てて教室のドアが開いた。教室にいた全員の視線がドアに集まる。
 そこには怒った顔をした、昨日のリーダー格の子がいた。

「リンカ・ハルゾノさんに用事があるんだけど、いいかしら?」

 別のドアから逃げようと、別のドアを見た。そっちには既に取り巻きがいて、大人しく名乗るしかないと悟った。

 ドアの前に行き、堂々とリーダー格と対峙する。こういうときに隙を見せたら、相手の思うツボだからだ。

「私だけど、何? 私は、あなたの名前も知らないんだけど」

 少し辛辣な声を出す。あっちは大人数だし、また魔法を使われたら、怖いけど、怯えちゃダメだ。

 リーダー格は自分の緑色の襟を指した。茶色はソルの色、緑はヴァンの色だと、昨日の内にブリジットちゃんから教わったから知っている。

「第3階級ヴァンの学年5位、サラ・ライコネンよ。ここではできない話をするから、ついてきなさい」

 名前を名乗った! 絶対に名乗らないと思ったのに、名乗ったということは安全なのかな?

 そう考えている内に、ライコネンさんと取り巻きたちは歩き出す。どうすればいいか、わからなかったけど、ハルトさんの名刺もワンピースの上に着るブレザーのポケットに入れているし、大丈夫だろう。

 私は大人しくついていくことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...