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待ち伏せと
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一面を見渡すことができ、滅多に人が来ない、小高い丘に立つジョンを、《戦乙女》の面々は水晶玉越しに見ていた。
「本当にジョンさんを一人で行かせて大丈夫なんですか? わたしたちに任せたら、すぐに終わるのに自分でやるって……なんだか頑固な人ですね」
クレアは唇を尖らせて、すねたように言った。
「殿方には殿方のプライドがあるのよ、クレア。まあ、あの人が望んだとおりに、ことが進むといいけれど……」
セシルが話している最中、ジョンに動きがあった。ジョンは人影を見つけたようで、なにか話している。しかし水晶玉にはノイズが走り、相手を見ることができない。
「妨害ができるということは、やはりミュルディスか」
グレイの冷静な声のかたわら、エヴァは脳が沸騰しそうなほど怒っていた。ジョンの信頼を裏切った相手に、今すぐ裁きを下したくてたまらない。
ジョンのケガは幸い左肩だったため、利き腕は自由だ。そして胸元に隠していた銃で、相手の脚を撃った。
「うわー、すごいですね、ジョンさん」
相手はうずくまり、傷口を抑えている。魔法を使っている相手の集中力が切れたため、ノイズも薄れ始めた。
そのミュルディスは、冴えない中年男性だった。髪も薄くなり、腹も垂れている。日頃からグレイというハンサムを見ている《戦乙女》の面々には、男性としての魅力を全く感じさせない男だ。
ジョンはなにか言い、男の額に銃口を当てる。
「ダメです、ジョン様」
エヴァは水晶玉に語りかけたが、ジョンに届くはずもない。エヴァには段々とノイズの正体が分かり始めていたのだ。だから危機を察することができた。
男は必死の反撃に出た。ジョンの手を触ったのだ。エヴァが察するに、男の得意魔法は電気である。ジョンの体に電気ショックが走り、彼は意識を飛ばした。
「ああ、ジョン!」
男は隠していたじゅうたんで、丘から去っていった。男が集中力を取り戻したため、また水晶玉にノイズが走り出す。水晶玉で男を追うことは難しそうだ。
エヴァはどうにかノイズをとろうと水晶玉に触るが、無理だった。エヴァは肩を落とし、ジョンのことを思う。そしてどんな残虐も想像でき、恐怖に震えた。
「え、どうしますか!? 完全に圧勝だと思ってたんですけど!」
クレアは大きな声で、動揺をあらわにする。
「クレア、静かになさい」
セシルはエヴァの肩を抱いた。愛する人を失うかも知れない恐怖に震えているエヴァのそばで騒ぐことは、全くよろしくない。
「あ……ごめんなさい」
クレアはエヴァに目をやり、心の底から反省した。彼女に悪気がなかったことは、みんな分かっている。セシルは目を伏せるだけで答えた。
その間に、グレイはクリスを呼び、指示を与えていた。そして指示が行き渡ったことを、クリスの表情から理解したあと、隊員に向かって口を開いた。
「セシル、私たちをあの丘へ連れて行ってくれ。ジョンは手がかりを置いていった」
グレイが発言したことで、3人の視線は彼に注がれた。そんな風には思っていなかったため、3人とも、不意をつかれた動物のような顔をしている。
「早く」
その言葉で、我に帰ったセシルは異能を使う。すると、すぐに四人は丘に立っていた。セシルの異能で瞬間移動したのだ。
グレイはジョンが立っていたところに屈むと、何かを拾ってクレアに渡した。
「あいつのカフスボタンだ。クレアの能力を信頼してたんだろう。銃口を突きつける前に落としていた」
ジョンの落とした手がかりは、エヴァに一縷の希望を与えた。
「本当にジョンさんを一人で行かせて大丈夫なんですか? わたしたちに任せたら、すぐに終わるのに自分でやるって……なんだか頑固な人ですね」
クレアは唇を尖らせて、すねたように言った。
「殿方には殿方のプライドがあるのよ、クレア。まあ、あの人が望んだとおりに、ことが進むといいけれど……」
セシルが話している最中、ジョンに動きがあった。ジョンは人影を見つけたようで、なにか話している。しかし水晶玉にはノイズが走り、相手を見ることができない。
「妨害ができるということは、やはりミュルディスか」
グレイの冷静な声のかたわら、エヴァは脳が沸騰しそうなほど怒っていた。ジョンの信頼を裏切った相手に、今すぐ裁きを下したくてたまらない。
ジョンのケガは幸い左肩だったため、利き腕は自由だ。そして胸元に隠していた銃で、相手の脚を撃った。
「うわー、すごいですね、ジョンさん」
相手はうずくまり、傷口を抑えている。魔法を使っている相手の集中力が切れたため、ノイズも薄れ始めた。
そのミュルディスは、冴えない中年男性だった。髪も薄くなり、腹も垂れている。日頃からグレイというハンサムを見ている《戦乙女》の面々には、男性としての魅力を全く感じさせない男だ。
ジョンはなにか言い、男の額に銃口を当てる。
「ダメです、ジョン様」
エヴァは水晶玉に語りかけたが、ジョンに届くはずもない。エヴァには段々とノイズの正体が分かり始めていたのだ。だから危機を察することができた。
男は必死の反撃に出た。ジョンの手を触ったのだ。エヴァが察するに、男の得意魔法は電気である。ジョンの体に電気ショックが走り、彼は意識を飛ばした。
「ああ、ジョン!」
男は隠していたじゅうたんで、丘から去っていった。男が集中力を取り戻したため、また水晶玉にノイズが走り出す。水晶玉で男を追うことは難しそうだ。
エヴァはどうにかノイズをとろうと水晶玉に触るが、無理だった。エヴァは肩を落とし、ジョンのことを思う。そしてどんな残虐も想像でき、恐怖に震えた。
「え、どうしますか!? 完全に圧勝だと思ってたんですけど!」
クレアは大きな声で、動揺をあらわにする。
「クレア、静かになさい」
セシルはエヴァの肩を抱いた。愛する人を失うかも知れない恐怖に震えているエヴァのそばで騒ぐことは、全くよろしくない。
「あ……ごめんなさい」
クレアはエヴァに目をやり、心の底から反省した。彼女に悪気がなかったことは、みんな分かっている。セシルは目を伏せるだけで答えた。
その間に、グレイはクリスを呼び、指示を与えていた。そして指示が行き渡ったことを、クリスの表情から理解したあと、隊員に向かって口を開いた。
「セシル、私たちをあの丘へ連れて行ってくれ。ジョンは手がかりを置いていった」
グレイが発言したことで、3人の視線は彼に注がれた。そんな風には思っていなかったため、3人とも、不意をつかれた動物のような顔をしている。
「早く」
その言葉で、我に帰ったセシルは異能を使う。すると、すぐに四人は丘に立っていた。セシルの異能で瞬間移動したのだ。
グレイはジョンが立っていたところに屈むと、何かを拾ってクレアに渡した。
「あいつのカフスボタンだ。クレアの能力を信頼してたんだろう。銃口を突きつける前に落としていた」
ジョンの落とした手がかりは、エヴァに一縷の希望を与えた。
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