53 / 133
第4章 後宮潜入編
10
しおりを挟む
後日、秀英と景雲の文は楓茗を介して晏寿の元へと渡った。
「へぇ~、二人とも頑張ってるんだ」
「何読んでるの?」
自室で文を読んでいた晏寿であったが、そこには京雅の姿もあった。
京雅は暇な時間はほとんど晏寿の所にいた。
最初の頃は晏寿も「何故」と思っていたが、毎日だと慣れてしまった。
「これは友人からの文です」
「友人?」
「はい、簡単な近況報告です」
京雅はしみじみと晏寿と文を見つめ、ぽつりと呟いた。
「その友人って女…?」
「え?」
「その文の相手って女?男?」
「男の方ですけど…」
男と知ると京雅は口を尖らせ、あからさまに機嫌が悪くなった。いきなりの京雅の態度に晏寿は戸惑ってしまう。
「安里は僕っていう旦那さんがいるのに違う男と連絡を取り合ってるんだ?僕には安里だけなのに」
「いや、まだ取り合ってはないです。それに、相手とは疑われるような関係ではないですし…」
「未遂でも、嫌なものは嫌だ」
「えぇ…」
このあと京雅の機嫌が直ることはなく、晏寿は文を京雅の前では読むことはできなかった。
「楓茗、どう思う?京雅様が文だけで機嫌が悪くなるだなんて…」
「良いことではありませんか?それは嫉妬でしょう?」
寝る支度を楓茗にしてもらっているときに昼間の京雅の態度について晏寿は話していた。髪を梳きながら、楓茗は晏寿に返答している。
「嫉妬…でも、文の相手は仕事仲間であってそれ以上の関係ではないし」
「安里様の近しい男性の存在が気に食わないのでしょう。殿下のお心が安里様に向いていて、良いことではありませんか」
「そうなのかなぁ…」
晏寿は京雅と親しくなっていくにつれて京雅のことを騙しているのではないかという気持ちになっていた。この関係には終わりがある。
だからこそ、だんだんと晏寿は京雅へと素直になれなくなっていたのだった。
「安里」
大体の寝る支度が終わった頃、京雅が晏寿の寝室にやってきた。京雅が来たら、楓茗は一礼して退出した。
「本日もお疲れ様でした」
「うん」
そう言って京雅は椅子に腰かける。晏寿はすかさずお茶を出した。京雅は嬉しそうに茶に手をつけた。
「そうだ。安里、まさか文に返事なんて書いてないよね」
「書いてないですよ。あれからほとんど京雅様は私の傍にいらして、全く隙を与えなかったじゃないですか」
「でも少し離れてる時間もあったから」
「あんな短時間じゃ書けませんよ…」
ついため息をつきそうになった。
これでは束縛ではないか。
そもそも今まで人に関心のなかった京雅がここまで自分に固執するとも思ってなかった晏寿。
だから少しでも慈しむ気持ちが生まれればという気持ちであった。
すると晏寿が色々模索している間に京雅が口を開いた。
「僕と安里は夫婦だよ。だから他の男のことを考えられるのは嫌なんだ。安里は僕だけの安里でいて?」
「でも」
「ある書物で読んだんだ」
安里の発言を遮るように話し続ける。
「ある男とある女が恋して、愛し合って、夫婦になった。僕は恋も愛もわかんないけど、安里と夫婦だ。僕は安里のことが好きだし、大事だし、必要。安里とずっと一緒にいたいって思う。こう思うことが『愛しい』ってことも書いてあった。
だから僕は安里のことを愛してる」
「へぇ~、二人とも頑張ってるんだ」
「何読んでるの?」
自室で文を読んでいた晏寿であったが、そこには京雅の姿もあった。
京雅は暇な時間はほとんど晏寿の所にいた。
最初の頃は晏寿も「何故」と思っていたが、毎日だと慣れてしまった。
「これは友人からの文です」
「友人?」
「はい、簡単な近況報告です」
京雅はしみじみと晏寿と文を見つめ、ぽつりと呟いた。
「その友人って女…?」
「え?」
「その文の相手って女?男?」
「男の方ですけど…」
男と知ると京雅は口を尖らせ、あからさまに機嫌が悪くなった。いきなりの京雅の態度に晏寿は戸惑ってしまう。
「安里は僕っていう旦那さんがいるのに違う男と連絡を取り合ってるんだ?僕には安里だけなのに」
「いや、まだ取り合ってはないです。それに、相手とは疑われるような関係ではないですし…」
「未遂でも、嫌なものは嫌だ」
「えぇ…」
このあと京雅の機嫌が直ることはなく、晏寿は文を京雅の前では読むことはできなかった。
「楓茗、どう思う?京雅様が文だけで機嫌が悪くなるだなんて…」
「良いことではありませんか?それは嫉妬でしょう?」
寝る支度を楓茗にしてもらっているときに昼間の京雅の態度について晏寿は話していた。髪を梳きながら、楓茗は晏寿に返答している。
「嫉妬…でも、文の相手は仕事仲間であってそれ以上の関係ではないし」
「安里様の近しい男性の存在が気に食わないのでしょう。殿下のお心が安里様に向いていて、良いことではありませんか」
「そうなのかなぁ…」
晏寿は京雅と親しくなっていくにつれて京雅のことを騙しているのではないかという気持ちになっていた。この関係には終わりがある。
だからこそ、だんだんと晏寿は京雅へと素直になれなくなっていたのだった。
「安里」
大体の寝る支度が終わった頃、京雅が晏寿の寝室にやってきた。京雅が来たら、楓茗は一礼して退出した。
「本日もお疲れ様でした」
「うん」
そう言って京雅は椅子に腰かける。晏寿はすかさずお茶を出した。京雅は嬉しそうに茶に手をつけた。
「そうだ。安里、まさか文に返事なんて書いてないよね」
「書いてないですよ。あれからほとんど京雅様は私の傍にいらして、全く隙を与えなかったじゃないですか」
「でも少し離れてる時間もあったから」
「あんな短時間じゃ書けませんよ…」
ついため息をつきそうになった。
これでは束縛ではないか。
そもそも今まで人に関心のなかった京雅がここまで自分に固執するとも思ってなかった晏寿。
だから少しでも慈しむ気持ちが生まれればという気持ちであった。
すると晏寿が色々模索している間に京雅が口を開いた。
「僕と安里は夫婦だよ。だから他の男のことを考えられるのは嫌なんだ。安里は僕だけの安里でいて?」
「でも」
「ある書物で読んだんだ」
安里の発言を遮るように話し続ける。
「ある男とある女が恋して、愛し合って、夫婦になった。僕は恋も愛もわかんないけど、安里と夫婦だ。僕は安里のことが好きだし、大事だし、必要。安里とずっと一緒にいたいって思う。こう思うことが『愛しい』ってことも書いてあった。
だから僕は安里のことを愛してる」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる