柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

文字の大きさ
90 / 133
第7章 晏寿の奮闘編

2

しおりを挟む
そこにいきなり景雲がパンッと手を叩き、皆を驚かせる。
一様に景雲を見る。

「埒が明かん。一度二人きりで話をさせてくれないか」

景雲の提案に晏寿も秀英も面食らったが、ここは景雲が適任だろうと判断し任せることにした。

景雲と陽明だけを残し、晏寿・秀英・凱は部屋を出た。晏寿は即座に秀英に申し立てをした。

「秀英、さっきの言い方は陽明君を追い込むだけじゃない。もっと言い回しがあるわ」
「取り繕っても意味がない。陽明にははっきりとしたことを伝えなければならない」
「相手をおもんぱかることだって必要でしょ」
「だからと言って」
「あの!」

晏寿と秀英の口論が始まりかけるところで、凱が声をあげた。
そこで二人はしまったと思い、苦い顔をする。

「あのまま陽明を託してよかったのでしょうか…?」
「それに関しては問題ない」
「人に歩み寄るのは景雲が一番得意だから」

凱の疑問に二人は即答した。
淀みない発言には三人の今までに培った信頼があった。それぞれにおいては苦手なことがあったが、それを他の人で補ってきたのだ。

陽明については景雲頼みとなり、晏寿達はそれぞれの仕事に戻ることとなった。
そして終業後、晏寿と秀英は景雲から陽明のことを聞いた。

「陽明から話を聞いたところによると、元々文官希望ではなかったらしい。だが家の方針等もあり周りに強く意見が言えず、官吏試験に合格してしまい、現在に至るというわけだ」
「じゃあ何をしたかったの?」
薬師くすしになりたかったらしい」

陽明曰く幼いころ病にかかった際に薬師に看てもらい、とても頼もしく感じたとのこと。
そして自分もそうなりたいと強く願うようになったとのことだった。

「薬師なら今からでもできるのではないか」

秀英の発言に景雲が頷く。

「ああ、王宮の医療班配属になればいい。李大臣に推薦状を書いてもらう必要があったり、見習いからの始まりになるがな」
「きっとやりたいことなら、自信を持つこともできるんじゃないかしら?」

息勇んで行こうとする晏寿の腕を秀英が掴む。表情は険しい。

「そう簡単なことではない。決めるのは陽明だ。それに、陽明自身が行かねば大臣は許可は出さないと思う」
「先に私達から話しておいたほうがすんなりと進むと思うけど」
「悪いが晏寿、これに関しては俺も秀英と同意見だ。いつも誰かが手を貸してくれるわけじゃない」

二人に止められ、晏寿は渋々納得する。
手助けはしたいが、お節介にもなりうる。もやもやとした物を抱えたまま、帰路につくのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...