柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

文字の大きさ
104 / 133
第7章 晏寿の奮闘編

16

しおりを挟む
「文官の嬢ちゃん、何作ってるんだ?もう武官達の飯はできただろう?」
「これ?皆のご飯作ってるの。お腹空いたでしょ。余り物で作った簡単なものだけど」
「俺達にも飯があるのか!?」
「食べていいのか!」

晏寿の作っているものは余り物で作った所謂賄い料理であったが、下働き達は大層喜んで食べた。
その様子を見て満足した晏寿は 、今度は配膳をすべく武官達の休憩所に行った。

「なんだこれ!今日は祝い事か何かか?」

武官達はいつもより多い品数の料理に驚く。晏寿は心中でほくそ笑みながら、配膳を行う。

「今日は私も手伝ったの!沢山あるからいっぱい食べて!」
「娘文官ちゃんが作ったのか?どの飯だ?」
「野郎が作ったものより娘文官が作ったもののほうがいい!それを分けてくれ」
「俺も!」

武官達はこぞって列をなし、あっという間に休憩所は満員になった。そこでも晏寿はテキパキと動き、時折聞こえる「うまい」という声に喜びを隠せなかった。

その日作られた料理は武官達の腹に全て収まり、配膳が終わったところで朝からずっと立ちっぱなしだった晏寿はやっと座ることができた。
身体は料理に囲まれていたせいか、空腹を感じない。

ずしりとくる倦怠感は動き回っていたせいか、はたまた朝から号泣したせいか。
どちらもだろうなと考えがまとまったところで、あと自分が何をしなければならないのかを考える。

「残りの時間で、自分の仕事と陽明君から引き継いだ仕事、甜丈君と凱君にあれは指示を出して…そうだ、新しい調理長も探さなきゃ」

指折り数えて、そこで言葉を切り切なそうに目を細める。

「…秀英と景雲に謝らなくちゃ」

秀英は自分のことを思って怒ってくれていた。
秀英と喧嘩して大泣きした自分を景雲は必死に慰めてくれた。
二人とも晏寿のことを思って行動している。
それなのに晏寿は自分のことばかり考え、我儘を押し通してしまっている。
二人のために何かしたことがあっただろうかと考えてみるも、疲れた頭では何も浮かんでこず、ただ自分の未熟さだけが募っていく。

気持ちと身体を引きずりながら、片付けは下働き達に任せて晏寿は武官達の休憩所を出た。
とぼとぼと自分の持ち場に帰る途中で、「晏寿さん!」と声をかけられた。
そちらを振り向くと先日一緒に帳簿がおかしいと話した誠真が爽やかな笑顔で手を振っていた。

「誠真さん」
「お疲れ様。なんだか疲れた顔してるね。大丈夫?」
「ええ。朝から立ち仕事だったからそれでかもしれないです」

誠真は晏寿に近づくと、首を傾げながら心配してくる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...