柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

文字の大きさ
20 / 133
第2章 北楊村編

3

しおりを挟む
はっきりとした声で皆に聞こえるように秀英が言った。
すると、周りが少しざわつき始め
「村長、村長」
という声が聞こえた。
秀英は一番近くにいた人に声をかける。

「この村の村長は?」
「…奥に行った所にある家にいる」
「そうか、ありがとう」

訝しげに村人は答えたが、その態度に機嫌を悪くすることもなく秀英は礼を言った。

「村長がいるのね」

晏寿が秀英に話しかける。

「そうみたいだ。一度会ってみたほうがいい」

秀英の言葉に頷いて、村長に会うために三人は歩きだした。
村長の家だという場所に着くまで、三人は居心地の悪い視線に苛まれることになった。

この荒んだ村で立派な物を身につけているのだ。
好奇の目にさらされるのは仕方のないことだった。

そして村長の家という場所まで辿りついた。
扉と呼べるかどうかわからない戸を開けて中に入る。

「いきなりの訪問申し訳ない。
ここに北楊村の村長が御在宅と聞き、話をすべくはせ参じた。私は伯 秀英と申す」

秀英が先陣を切って名乗る。
すると、よろよろと村長と思われる初老の男が現れた。

「何用か」

村長は警戒している様子で晏寿達は肌でそれをひしひしと感じた。

「我々は今日付けでこの北楊村の担当となったのでその報告と、今の村の状況を伺いたく参った次第である。何とぞ話をさせていただきたい」
「話さずとも見ればわかろう。
この村は王からも国からも身捨てられた。
ここでは貴様らはただの厄介者なだけ。今すぐ出ていけ」

口調は激しくはないが、一つ一つの言葉に憎悪が込められている。
それを聞いていて、晏寿はだんだんと辛くなっていった。
そして、秀英がまた何かを言おうとしたがそれを制して晏寿が話す。

「今回はこの村の復興のために私達が派遣されたのです。
今までの担当者がどうであったかはわかりませんが、私達は違います。
ひとまず、この村の現状を知るために村を見て回ってもよろしいでしょうか?」

「…勝手にしろ」

晏寿は膝をつき、恭しい態度をとったのでまさか自分のような身分の低い者にそういう行為をとるとは思っていなかったのか村長も驚いていた。

とりあえずの村長からの許可も出たので、晏寿達は家を出て村を回ることにした。

家を出てすぐ晏寿は、秀英に先程の言動をたしなめた。

「秀英、ああいう高圧的な態度は相手を刺激するからよくない」
「…すまない」
「ふっ、怒られている秀英なんて良いものを見れたな」
「何もしてない景雲は何も言えないんだよ」
「…悪かった」

しっかり二人は晏寿から怒られた。

まずは村の水の確保はどうなっているのかを調べるために井戸を見に行った。
近くにいた村民の子供に頼み、連れていってもらう。

「お役人さん、なんでこの村に来たの?」
「偉い人からこの村を豊かにしてくれって言われたから、ここに来たんだよ」

やはりこういうときは女の身である晏寿のほうが安心するのか、子供は晏寿の傍を歩く。
晏寿も子供は好きなので、丁寧に接していた。

「お役人さん達、これが井戸だよ」

そう言われた井戸の水を釣瓶で掬い取って三人は唖然とした。

「これ…泥…」

景雲が思わず口にしてしまったが、すぐさま秀英が頭をひっぱたいた。
なんとか子供には聞こえてないみたいだった。

「この村に他に井戸は?」

秀英は先程晏寿に怒られたことを教訓に子供にも優しく接することを心がけ、しゃがんで尋ねた。

「ないよ、これだけ」
「そうか。
ならこれから言うものを集められるか?」
「何?」
「底の深い桶と砂利と砂、小さめの石、灰を皆で集めてもらえないか?
もちろん、俺達も協力する。できたらすごいものが見れる」
「本当?皆呼んでくる!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

処理中です...