柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

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第2章 北楊村編

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子供は嬉しそうに走って行き、人を呼んできた。そして五人ほど集まったところで皆で収集した。
集まった人達は渋々といった感じで作業していたが、何とか必要な材料は集まった。

そのあと、桶の側面の下の方に小さめの穴を開け秀英の指示に従って順々に桶に詰めていった。

「お役人さん、まだー?」

子供達は飽きてきて、大人は先が見えないことをやらされているため苛立ち始めていた。

「あとは井戸の水を上から流すだけだ」

そう言って秀英が上から井戸の水を流していき、下の穴で景雲が椀でその水を受けた。
景雲はしゃがんで水が入った椀を子供に見せた。

「わぁ!水が綺麗になってる!」
「本当だ!」

子供達は大はしゃぎし、大人達も目を見張った。

「これからはこれで濾過して一度沸騰させてから飲むといい」

景雲も秀英の意図がわかっていたようで、そう助言する。

「えー、まだ飲めないのー?」
「早く早く!」

子供達が急かす中、景雲は「わかったから」と言いながらも満更ではなさそうだった。

晏寿はそんな姿を見て微笑み、秀英と景雲を見ていてふと気付いた。

二人ともせっかくの上質の服は泥や砂で汚れ、
顔も汚していた。
名家の男子には見えない。

晏寿が着ていた物はもともとそんなに質も良くないので汚れていいかと二人に負けじと働いたので、きっと自分もあんな感じなのだろうと思った。

「お役人さん、お役人さん」
「何?」

一人の女の子が晏寿の裾を引っ張るので話を聞くために、女の子と同じ目線になる。

「お役人さんの名前は何?」
「私?私は柳 晏寿。
あなたは?」
花蘭からんだよ!
晏寿お姉ちゃんもあのお役人さんみたいに色々知ってるの?」
「あのお兄さんは私より頭良いから。
でも何かわからないことがあったら言って?協力するわ」
「ありがとう!」

花蘭と名乗った女の子は嬉しそうに笑った。
晏寿は花蘭の笑顔を見て、子供はどこにいても変わらないと感じた。
自分の家の近所で走り回っている子供と、目の前の花蘭と何が違うだろうか。

強いて挙げるならば、身分というだけ。
身分という括りで子供達を縛り付けてはいけないとも感じた。


水の確保はできたので、次に田畑の確認へと行く。
花蘭や他の子供達は水の濾過の一件以来、三人に憧れの眼差しを向け嬉しそうに畑まで案内してくれた。

「お役人さん!俺もお役人さんみたいになれる?」
「そうだな。
必死に勉強すれば俺が後ろ立てになれないことはないぞ?」
「うぅ…、勉強か…」

景雲の傍でそう尋ねたのは最初に井戸に案内してくれた男の子。
名前は燕歩えんほ

「秀英、様、僕勉強がしたいんだ、です。
今度教えてほしい、です!」
「俺も!」
「私もしたい!」
「ああ、でもその前に言葉遣いからだ」

秀英の周りにいるのは順に大南だいなん
双子の兄の悠準ゆうじゅんと妹の悠杏ゆうあん
皆それぞれ、一生懸命秀英や景雲に自分の思いを伝えていた。

「花蘭も勉強したいの?」

横にいる花蘭に晏寿も尋ねた。

「私もしたいなぁ。
いっぱい勉強して、おとうさんとおかあさんに楽になってもらいたい」
「そっか」

子供たちの純粋な気持ちを大事にしたい。
晏寿は澄んだ目を見ていると、切にそう感じた。
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