猫の手、貸します。

りー

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猫の手、貸します。4話

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ルカとシルクは胡瓜串を持って、河童が居る池へと向かった。
「ねぇ、シルク。河童からはどんな依頼が来てるの?」
「河童からは池を綺麗にして欲しいと言われているんだ。簡単に言うと掃除かな?」
「掃除かー!それなら私も出来そう!」
「…あはは。それは頼もしいや。」
「重曹と漂白剤は必須だね。持って行くわ!」
「…いや、それは必要ないよ。とりあえず現場に向かおう!」
シルクの力を使って瞬間移動をし、河童の家へと向かった。河童の家は木造の小さな小屋だが、清潔感のある雰囲気だ。
「シルクさーん!いらっしゃい!」
河童は小柄で1メートルくらいの大きさだ。目がクリクリと黒目がちで大きく、鳥のようなくちばしが印象的だった。声は高めで可愛らしい声をしている。
「こんにちは、河童さん。はい、これお土産の胡瓜串です。」
「わーい!ありがとう!頂きます!」
「喜んでもらえて良かったです。あと今回は助手のルカも連れてきました。」
「可愛らしい方ですね!宜しくお願いします!」
「…ルカです。宜しくお願いします。」
「こちらこそ!では早速、池へと案内しますね。」
河童がペタッペタッと可愛らしい足音を立てながら歩いている。足はカエルのような足で水かきがついている。
「池はこの坂を下ると着くんですか?」
「はい!近いですよ。ほら、ここです!」
あっという間に池へとたどり着いた。
池は濁っていてかなり汚れており、池というよりも沼のような感じである。河童は定期的に池を掃除していたが、それ以上に汚れるスピードが早く、手に負えなくなって依頼をしてきたそうだ。
これは確かに漂白剤では綺麗にならないだろうなと思った。
「これってどうやって掃除したら良いのでしょうか。」
「えーっと。網とブラシ、バケツ、スコップ、スポンジがあるのでこれを使ってもらえますか。」
思ったより現代的なアイテムが出てきて驚いた。たわしや箒しかないものだと思ったので、なんとか綺麗に出来るかもしれない。
「…分かりました。頑張ります!」
これはかなり時間がかかりそうだ。道具は使い古しているようで年季が入っている。シルクは早速、池に生き物がいないかを確認をしに網を持って池に入っていった。
「シルク!気をつけて!」
「うん。ありがとう。ルカはバケツを持っててくれない?」
「分かった!持って行くね!」
「足元滑るからゆっくり歩いて。」
「うん!わっ!」
つるんと足を滑らせてしまった。私は床に体を打ちつけ、池にバケツを落としてしまった。
「ご、ごめんなさい!」
「ルカ、大丈夫?!怪我はない?」
シルクは急いで池へと上がり、私を支えてくれた。
「だ、大丈夫。でもバケツが…」
ルカが落としたバケツは、ブクブクと池へと沈んでいってしまった。
「あらら。これは女神が出てきますね。」
「女神…?」
ルカは不思議そうに河童に質問した。
「シッ!静かに!」
河童はシルクと私に対して静かにするように促してからすぐに池が光りだした。
池から眩い光が差し、美しい金髪に真っ白なドレスを身に纏った女神が現れた。
「あなたが落とした斧は金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?」
私の目を見ながら、女神は聞いた。
「えっと…私は斧は落としていません。落としたのはバケツです。」
「ルカさん、貴女は正直者ですね。そんな心の美しいルカさんの願いを叶えます。」
「そんな…私何も…」
「……いやー!これ久しぶりにやってみたかったのよねー!!」
「え…?どういう…」
「テッテレー!ドッキリ大成功!アハハ!」
女神と河童がハイタッチして喜んでいる。私とシルクはキョトンとしていた。
「ドッキリ…?状況が読めないのですが。」
シルクも疑いの眼差しで2人を見ながら言った。
「この池、昔は美しくて女神も居るって事で色んな人が訪れたんですよ。でも最近土砂崩れが起きて、この周辺の村にも被害が及んだのです。」
「普段から掃除はしているのですが、私の力だけだとなかなか池は綺麗にならなくて。」
「なるほど…それは辛かったですね。」
シルクは残念そうにそう言った。
私はなんだか2人が被害者ぶっている様子が気になり、質問することにした。
「質問があります。よろしいですか?」
「ルカさん、何かしら?」
女神は微笑みながら私を見てそう言った。
「女神さんと河童さんは何故、そんな被害者のような言い方なんでしょうか?」
「え…?それはどういう意味ですか?」
女神は困惑した様子でルカに質問をした。
「自分自身の居る場所くらい自分で掃除したら良いじゃないですか。」
ルカは女神と河童の他力本願な態度にイラついてそう言った。
「ちょっと、ルカ!なんでそんな言い方をするんだ!謝りなさい!」
シルクは慌ててルカを叱った。
河童と女神はルカの言葉に戸惑っている様子だ。だが、ルカは構わずに話し続けている。
「普通、自分の部屋は自分で掃除します。なんで女神さんは自分の身なりは綺麗なのに、池は綺麗にされないんですか?不思議です。」
ルカは軽蔑の眼差しで女神を見ると、シルクがルカに警告した。
「ルカ、彼女は池の女神なんだ。この地域を守っている守り神。そんなお方に掃除をしろだなんておかしいんだよ。」
ルカはお構いなしに言葉を続けた。
「だって自分の居る場所は自分で掃除するべきだよ。」
シルクはルカの発言に対して怒っている。
「ルカ!依頼を受けているのは私達だから、女神さんにそんなこと言ったらいけないよ。」
シルクは私を叱った。
女神は微笑みながら、私に声をかけた。
「ルカさん。貴女の言っていることは尖っていますが正しいわ。」
「…女神さん!」
シルクは訂正しようと女神の言葉を遮って話そうとしたが、女神は右手を横に伸ばし、シルクの発言を止めた。
「いつも周りの人に甘えて居たの。でも、ルカさんに言われて分かったわ。私の住む場所を自分の力で綺麗にするべきだって…だからこれから一緒に手伝ってくれるかしら?」
「女神さん、何をおっしゃるんですか。貴女は何もしなくて良いんですよ?」
河童は女神の発言に驚いて立ち尽くしている。女神は私の手を取って話し始めた。
「ルカさん、目を閉じて。美しい池を想像するのです。」
透き通った池の周りには花が咲き誇り、蝶々が舞っている。
目を開けると、7割程度その想像が実現していた。
「女神さん…凄い…!」
「えへへ。ありがとう。でも力が弱くなっているから全てを実現する事が出来ないの。それが恥ずかしくて魔法を使いたくなかったのよ。」
「女神さん、恥ずかしいことなんか全くないです。こんな素晴らしい池になるなんて凄い…!」
残りは私とシルクで責任を持って掃除をすることにした。
女神はにっこりと笑い、河童と2人で近くの岩に腰掛けた。
「シルク!残りの汚れは私に任せて!河童さんと女神さんと胡瓜串でも食べてて!」
私は腕まくりをして、使い古されているブラシとスポンジを持って池の周りの苔や泥を懸命に擦り始めた。思ったより残りの汚れは頑固で取れづらい。


シルクは思い付いたかのように胡瓜串を河童と女神に食べるようにと促した。
「胡瓜…?私は初めて食べるわ。どうやって食べるの?」
「こうやって齧ってみてください!」
パリッと胡瓜を齧る音が聞こえた。女神は少し恥ずかしそうに胡瓜にかぶりついた。
すると、辺りに光が差し込み、残りの汚れもピカピカになって神秘的な池へと変わったのだった。


「女神さん!やったぁ!全部綺麗になりましたよ!」
ルカは女神の手を取り、喜んだ。
「…なるほど。やっぱり女神さんの魔力を上げるのはお供え物だったんですね。」
「は…!確かに、胡瓜串のお供え物を食べて復活しましたね。最近はお供え物を備えてくれる人も居なかったので、気づきませんでした。」
河童も納得した様子で頷いている。
「ルカさんのお陰です。本当にありがとう。お礼に私の魔力を与えます。」
女神が私の手を握る手から銀色の光を放っていた。眩しくて目を閉じて、すぐに目を開けると私の手の中で銀色の光が眩く輝いている。
「これでまた魔力がアップしましたね。」
女神は嬉しそうに私を見た後、人が戻ってきた池の姿を見て嬉し涙を静かに流し、ルカとシルクに手を振りながら姿を消したのだった。


「シルクさん、ルカさんありがとうございました。お陰様で池の美しさが戻りました。本当に感謝しています!」
河童は感動して目がうるんでいる。
「河童さん、ありがとうございました。生意気なことをルカが言ってすみませんでした。あとでキツく叱っておきます。」
シルクはルカを睨みながら河童にそう言った。
「いえいえ!ルカさんは若いのにしっかりと大事なものが見えています。これからますますも頑張ってくださいね。」
河童はシルクに布の袋を渡した。神社についてから開けるようにと言って、見送ってくれた。
「「ありがとうございました!」」
2人は同時にお礼を言うと、瞬間移動で神社へと向かった。


「ルカ、今日はよく頑張った。多少強引だったけど、ルカのお陰で上手くいったよ。」
「今思うと失礼なことを言っちゃったな。反省します…!」
「ルカのことみんな褒めてたよ。この調子で頑張ろうね。」
シルクはルカの頭を撫でた。
「…うん!ありがと!」
ルカはシルクに笑顔を向けた。
シルクはさりげなくルカの頭を撫でた事実が恥ずかしくなり、目を背けた。


神社に着くと、河童からもらった紙袋をすぐに開いた。手紙と陶器の皿が数枚入っている。
「小岩さんを慰めて欲しいです。このお皿を彼女に渡してあげて下さい。」と書かれていた。
「小岩さんって四谷怪談に出てくるあの有名な妖怪?」
「…たしかに有名な方だ。でも慰めるなんてかなり難しいな。」
「失恋を癒すには新しい恋愛でしょ!イケメンな妖怪を紹介してあげようよ!」
「ルカ、そんなことどこで習ったんだ。」
「前に読んだ少女漫画に書いてあったの!私は恋愛未経験だから分からないわよ。」
シルクはルカが恋愛未経験と知り、なぜか安心した。
「じゃあ、今日は一旦お休みして明日から早速行こうよ。」
「うん。そうしよう。」
シルクはルカの部屋へ瞬間移動を使って移動した。
「おやすみ、ルカ。」
「おやすみなさい。シルク。また明日ね。」
そう言ってルカはベッドへと入っていった。
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