草花の祈り

たらこ飴

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コーラとポカリ、混ぜたらどうなる?②

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 階段を降りてキッチンへ向かい、冷蔵庫にちょうどあったコーラとポカリを取り出す。赤い缶が私で、青い缶がシエル。こんなに真逆なのに、私はシエルの考えていることがよく分かる。彼女はオーシャンだけじゃなく、私の幸せも心から願っているのだ。だけど、私にとって何が幸せかを決めるのはきっと彼女ではなく、私自身であったほうがいい。

「それ、混ぜたらどんな味がすると思う?」

 いつのまにか来ていたシエルが、後ろから私が手に持った二つの缶を覗き込む。

「さあね」

 そっけなく答え、ダイニングテーブルに赤と青の缶を置く。

「エイヴェリー、思ってることがあるなら言って」

 シエルの口から、少し怒ったような声が出る。私は一度息を吐いて、胸の内を吐き出した。

「あなたは最近オーシャンと私に気を遣って、一緒にいても彼女の話ばかりしてる。遊ぶ約束をしていてもすっぽかす。わざとだって分かってるの」

「それは‥‥‥今は違っても、いずれあなた達の関係が進展すればいいと‥‥‥」

「私が望んでいないとしても?」

 無言になるシエル。気まずい沈黙が辺りを満たす。この空気をやり過ごすみたいに、棚からグラスを二つ取り出してテーブルに並べる。

「あなたと遊んでいる時は、その時間を大切にしたいの。オーシャンが嫌いなわけじゃない。あなたがオーシャンを大切に思ってることも、私への思いやりも理解してる。だけど、たまには私の意志も尊重してよ」

 シエルはしばらく考え込むように俯いた後で、

「分かったわ。ごめん」

 と素直に謝った。思えばシエルとこんな風に言い合いのようなことをしたのは初めてだった。私たちは仲が良かった。今だってそうだ。だけど、こうして本音をぶつけたことはなかった。彼女との関係が壊れる怖さを、どこかで感じていたからかもしれない。

「姉に幸せになって欲しいと思ってばかりで、あなたの気持ちを考えてなかったわ。いいわ、もう辞める」

 友人はあっさりと答えた後で、

「早く混ぜてみて」

 といつになく無邪気な笑顔を見せた。心の中で、ほっと息を吐く。何も溜め込む必要などなかったのだ。元々、私たちは言いたいことを我慢するような間柄じゃない。早く話しておけば、こんなにもやもやする感情を蓄積させなくてもよかったのに。

 コーラを手り、二つのグラスに半分ずつ注く。次にポカリを注ぎ、スプーンで混ぜ合わせる。

「ジャンケンで負けた人から飲むってのはどう?」

 その提案に、いいわねとシエルは頷く。

「ジャンケンぽん!」

 負けたのはシエルだった。彼女はゆっくりとグラスを手に取って持ち上げ、その茶色の液体を口に運んだ。

「うん、案外イケる」

「嘘でしょ」

「嘘じゃない。飲んでみて」

 言われるがままグラスを手に取り、口をつける。コーラのスパイスの効いたピリッとした苦味と人工甘味料の甘味、ポカリスエットのさわやかな味が溶け合って、確かにそれほど悪くは無い。むしろ、思っていたよりも美味しい。

「うん、イケる」

「でしょ?」

「これは私たちのお泊まり会の定番商品になりそうね」

「今度のバザーで売ってみようかしら」

 冗談を返した私に、シエルはいいわねと笑顔を向ける。

 きっと私と彼女はコーラとポカリのように、一見正反対で相性が悪いようでもほどよく混ざりあって、絶妙なバランスで友人関係を続けていくのだと思う。いつか激しくぶつかる日も来るかもしれない。だけど、きっと私たちは何らかの形で修復をするのだろう。大抵の場合、喧嘩をしてもこんなふうにすぐに後腐れなく話して、何事もなかったみたいに笑い合うに違いない。
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