4 / 55
2. 猫寺の和尚
しおりを挟む
助手席に移った私は、存田さんのスリル満点の運転で何度か死を覚悟した。これまで無感動だったが久しぶりに心が動いた瞬間であった。
正直なところお祓いで本当によくなるのかと半信半疑だったけれど、今縋ることができるのはこれだけだ。このままではいけないと漠然と思っていたが、猫が不憫な気持ちから行動に移せなかったのだ。
30分ほど走り着いたのは高台にあるお寺だった。『猫浄寺』と門に書いてあり、庭に黒、三毛、茶虎などいろんな柄の猫がわんさかいた。この町のどこかに猫がたくさんいる寺があると、前にどこかで聞いたことがあったのを思い出した。
車を降りると、竹箒で掃除をしていたお坊さんが私たちの姿に気づき近づいてきた。彼は私の顔を見るなり、「あらあら、可愛い白猫ちゃんを連れてきたのですね」と微笑み、何も事情を聞かず寺の中に案内してくれた。お坊さんの後ろから猫たちも近づいてくる。皆人馴れしているのか、撫でるとすぐ心を許しお腹を見せる子や手や脚にすりすりと顔を擦り付けてくる子もいた。久しぶりのリアルの猫との戯れにしばし心が和んだ。
通された広い畳の拝殿には、金色の猫の観音様が祀ってあった。脚の短い椅子に存田さんと並んで腰掛けると、まもなく祈祷が始まった。お坊さんのおっとりした外見に似つかない、力強く澄んだ声が部屋に響いた。たくさん修行を積んだお坊さんはお経が上手いのだと、ずっと前に祖母と観た心霊番組か何かで有名なお坊さんが言っていた。もしかしたら、このお坊さんは凄い人かもしれない。
途中私の名前が読まれ、『猫の魂とともに清めたまえ……』という言葉が続いた。
存田さんは横で鼻提灯を膨らませて寝ていた。
お祓いがクライマックスに入ったとき、侵入してきた茶虎猫が住職のつるつる頭によじ登った。かと思えば三毛猫が私の膝に乗ってきて、2匹が追いかけっこやプロレスを始めたためにほとんど内容が入ってこなかった。三毛猫に顔に飛びかかられた存田さんは後ろ向きに倒れ、そのはずみで柱に頭をぶつけた。
「あ~痛っ、星飛んどったわ……あと千昌夫の妖精も」
起き上がった存田さんが後頭部をさすりぼやいた。
猫たちが外に出て数分後、お経が終わるあたりに突然身体がスッと軽くなった。そして、
「にゃ~」
と可愛らしい猫の鳴き声がしたかと思うと、私の脚にすりっと身体が擦り付けられたような感触があり、あの子が私の中から出て行ったのだと分かった。
「あっ……」
声を上げた私を存田さんは不思議そうに見た。
「どないしたん?」
「多分、今出ていきました。だからもう大丈夫です」
祈祷が終わると、住職は私たちに向き直り微笑んだ。
「祈祷をしていたとき、白い猫ちゃんが私の膝に乗ってきましたよ。そのあとにゃあと一声鳴いて膝からおり、すっと消えました。大変な思いをしたと思いますが、猫ちゃんはあなたを困らせるつもりはなかったのでしょう。純粋に助けてもらったことが嬉しかったのと、あなたのそばにいるのが心地良かったのかもしれませんね」
帰りは私が運転した。長いこと続いていた重だるい感覚が嘘のように身体が軽く、頭はクリアになった。視界がぱっと開けて灰色だった景色が色を取り戻し、長い眠りから覚めたようだった。こんなにあっさり良くなるなら、何でもっと早く祈祷に行かなかったんだろう。
後悔する一方、猫の霊に対して申し訳なく感じていた。あの子にとっては私のそばにいるのが居心地良かったのに、お祓いで無理やり引き離してしまって悪いことをしたかもしれない。ずっと体調が悪いままなのはもちろん困る。辛かったししんどかったけど、猫の幽霊と一緒にいる生活は孤独じゃなかった。寝ているとき頬をくすぐるような感覚や、ずしりとしたお腹の重み、肌に感じるあたたかい温度も、今となっては全てが恋しくて懐かしい。
信号で停車したとき、急に日干した毛布みたいなあたたかい感覚が胸いっぱいに広がった。こんな感覚になったのは初めてだった。もしかしたらあの白猫が、私にありがとうと伝えてくれたのかもしれない。そう思ったとき、それまで感じていた後ろめたさがすっと消え、代わりに涙が溢れてきた。寂しさ、恋しさ、悲しさ——。名前のつけられないその涙は、しばらくの間私の頬を濡らし続けていた。
あの子は無事に虹の橋を渡れただろうか。だとしたら今天国で幸せで、自由にあちこち駆け回っていたらいい。そしてまた生まれ変わって、来世には素敵な飼い主に出会えるといい。
存田さんは泣いている私に何も聞かなかった。彼女なりに気を遣ってくれてるんだろうと思っていたら、「坊主に金渡すん忘れたわ、まあええか」とぼそっとつぶやいた。そこで玉串料を渡すのをすっかり忘れていたことに気づき、一瞬で涙が引いた。
「いやよくないですよ、戻ります」
「金もったいないし、このままバックレよ」
「だめです、気持ち的に許せません。せっかくお祓いしてもらったし、親切にしてもらいましたし、恩を仇では返せません」
「そか、ほな戻ろか」と存田さんは顎が外れそうな大欠伸をかました。
あのお坊さんの優しい笑顔を見たあとでは、玉串料を渡さずバックレるなんて非道なことはできない。猫神様に祟られそうだ。
結局20分かけて来た道を戻り、途中文房具屋で封筒を買い5千円を入れ、お寺についたあと出てきたお坊さんに渡した。
お坊さんは全く責める様子はなく、
「私もうっかりお金もらうのを忘れていました、ごめんなさい。てっきり逃げられたかと思いました。何かあったらまた来てくださいね」
とだけ言った。優しく微笑むお坊さんの頭にまた三毛猫がよじ登っていて、頭皮に血が滲んでいた。
「あの……血出てますが大丈夫ですか?」
「大丈夫です、舐めときゃ治ります」
「いや治らへんやろ、てか舐められんやろ」
しばらく猫たちと遊び、その間存田さんがお坊さんの傷の手当てをしていた。
玉串料を奉納した我々は今度こそ無事に道の駅に戻った。
帰り際存田さんにお礼を言った。
「本当にありがとうございました。おかげで気力もいい感じに戻りまして、何とか生きていけそうです」
「そんなら良かったわ。あんた元々元気ある方やないからな、調子悪いの気づかれにくいんやと思うけど……なんかあったら相談してや」
「ありがとうございます、これからは頼らせてもらいます」
存田さんと別れたあと急激にお腹が減って、道の駅で買った炊き込みご飯とおにぎり二つとアップルパイとソフトクリームを食べながら考えた。これまでいかに視野が狭くなっていたことか。私の周りにはこうして力になってくれる人がいるのに、力を借りようとしなかった。というか完全に判断力を失っていてそこまで気が回らなかった。こうして客観的にここ数ヶ月のことを振り返り、自分が馬鹿みたいに思えてきた。せっかくもらった人生だ。あの子の分まで精一杯生きよう。そしてほんの小さなことでもいいから、今度は自分が誰かを助けられたらいい。
正直なところお祓いで本当によくなるのかと半信半疑だったけれど、今縋ることができるのはこれだけだ。このままではいけないと漠然と思っていたが、猫が不憫な気持ちから行動に移せなかったのだ。
30分ほど走り着いたのは高台にあるお寺だった。『猫浄寺』と門に書いてあり、庭に黒、三毛、茶虎などいろんな柄の猫がわんさかいた。この町のどこかに猫がたくさんいる寺があると、前にどこかで聞いたことがあったのを思い出した。
車を降りると、竹箒で掃除をしていたお坊さんが私たちの姿に気づき近づいてきた。彼は私の顔を見るなり、「あらあら、可愛い白猫ちゃんを連れてきたのですね」と微笑み、何も事情を聞かず寺の中に案内してくれた。お坊さんの後ろから猫たちも近づいてくる。皆人馴れしているのか、撫でるとすぐ心を許しお腹を見せる子や手や脚にすりすりと顔を擦り付けてくる子もいた。久しぶりのリアルの猫との戯れにしばし心が和んだ。
通された広い畳の拝殿には、金色の猫の観音様が祀ってあった。脚の短い椅子に存田さんと並んで腰掛けると、まもなく祈祷が始まった。お坊さんのおっとりした外見に似つかない、力強く澄んだ声が部屋に響いた。たくさん修行を積んだお坊さんはお経が上手いのだと、ずっと前に祖母と観た心霊番組か何かで有名なお坊さんが言っていた。もしかしたら、このお坊さんは凄い人かもしれない。
途中私の名前が読まれ、『猫の魂とともに清めたまえ……』という言葉が続いた。
存田さんは横で鼻提灯を膨らませて寝ていた。
お祓いがクライマックスに入ったとき、侵入してきた茶虎猫が住職のつるつる頭によじ登った。かと思えば三毛猫が私の膝に乗ってきて、2匹が追いかけっこやプロレスを始めたためにほとんど内容が入ってこなかった。三毛猫に顔に飛びかかられた存田さんは後ろ向きに倒れ、そのはずみで柱に頭をぶつけた。
「あ~痛っ、星飛んどったわ……あと千昌夫の妖精も」
起き上がった存田さんが後頭部をさすりぼやいた。
猫たちが外に出て数分後、お経が終わるあたりに突然身体がスッと軽くなった。そして、
「にゃ~」
と可愛らしい猫の鳴き声がしたかと思うと、私の脚にすりっと身体が擦り付けられたような感触があり、あの子が私の中から出て行ったのだと分かった。
「あっ……」
声を上げた私を存田さんは不思議そうに見た。
「どないしたん?」
「多分、今出ていきました。だからもう大丈夫です」
祈祷が終わると、住職は私たちに向き直り微笑んだ。
「祈祷をしていたとき、白い猫ちゃんが私の膝に乗ってきましたよ。そのあとにゃあと一声鳴いて膝からおり、すっと消えました。大変な思いをしたと思いますが、猫ちゃんはあなたを困らせるつもりはなかったのでしょう。純粋に助けてもらったことが嬉しかったのと、あなたのそばにいるのが心地良かったのかもしれませんね」
帰りは私が運転した。長いこと続いていた重だるい感覚が嘘のように身体が軽く、頭はクリアになった。視界がぱっと開けて灰色だった景色が色を取り戻し、長い眠りから覚めたようだった。こんなにあっさり良くなるなら、何でもっと早く祈祷に行かなかったんだろう。
後悔する一方、猫の霊に対して申し訳なく感じていた。あの子にとっては私のそばにいるのが居心地良かったのに、お祓いで無理やり引き離してしまって悪いことをしたかもしれない。ずっと体調が悪いままなのはもちろん困る。辛かったししんどかったけど、猫の幽霊と一緒にいる生活は孤独じゃなかった。寝ているとき頬をくすぐるような感覚や、ずしりとしたお腹の重み、肌に感じるあたたかい温度も、今となっては全てが恋しくて懐かしい。
信号で停車したとき、急に日干した毛布みたいなあたたかい感覚が胸いっぱいに広がった。こんな感覚になったのは初めてだった。もしかしたらあの白猫が、私にありがとうと伝えてくれたのかもしれない。そう思ったとき、それまで感じていた後ろめたさがすっと消え、代わりに涙が溢れてきた。寂しさ、恋しさ、悲しさ——。名前のつけられないその涙は、しばらくの間私の頬を濡らし続けていた。
あの子は無事に虹の橋を渡れただろうか。だとしたら今天国で幸せで、自由にあちこち駆け回っていたらいい。そしてまた生まれ変わって、来世には素敵な飼い主に出会えるといい。
存田さんは泣いている私に何も聞かなかった。彼女なりに気を遣ってくれてるんだろうと思っていたら、「坊主に金渡すん忘れたわ、まあええか」とぼそっとつぶやいた。そこで玉串料を渡すのをすっかり忘れていたことに気づき、一瞬で涙が引いた。
「いやよくないですよ、戻ります」
「金もったいないし、このままバックレよ」
「だめです、気持ち的に許せません。せっかくお祓いしてもらったし、親切にしてもらいましたし、恩を仇では返せません」
「そか、ほな戻ろか」と存田さんは顎が外れそうな大欠伸をかました。
あのお坊さんの優しい笑顔を見たあとでは、玉串料を渡さずバックレるなんて非道なことはできない。猫神様に祟られそうだ。
結局20分かけて来た道を戻り、途中文房具屋で封筒を買い5千円を入れ、お寺についたあと出てきたお坊さんに渡した。
お坊さんは全く責める様子はなく、
「私もうっかりお金もらうのを忘れていました、ごめんなさい。てっきり逃げられたかと思いました。何かあったらまた来てくださいね」
とだけ言った。優しく微笑むお坊さんの頭にまた三毛猫がよじ登っていて、頭皮に血が滲んでいた。
「あの……血出てますが大丈夫ですか?」
「大丈夫です、舐めときゃ治ります」
「いや治らへんやろ、てか舐められんやろ」
しばらく猫たちと遊び、その間存田さんがお坊さんの傷の手当てをしていた。
玉串料を奉納した我々は今度こそ無事に道の駅に戻った。
帰り際存田さんにお礼を言った。
「本当にありがとうございました。おかげで気力もいい感じに戻りまして、何とか生きていけそうです」
「そんなら良かったわ。あんた元々元気ある方やないからな、調子悪いの気づかれにくいんやと思うけど……なんかあったら相談してや」
「ありがとうございます、これからは頼らせてもらいます」
存田さんと別れたあと急激にお腹が減って、道の駅で買った炊き込みご飯とおにぎり二つとアップルパイとソフトクリームを食べながら考えた。これまでいかに視野が狭くなっていたことか。私の周りにはこうして力になってくれる人がいるのに、力を借りようとしなかった。というか完全に判断力を失っていてそこまで気が回らなかった。こうして客観的にここ数ヶ月のことを振り返り、自分が馬鹿みたいに思えてきた。せっかくもらった人生だ。あの子の分まで精一杯生きよう。そしてほんの小さなことでもいいから、今度は自分が誰かを助けられたらいい。
11
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
雨上がりの虹と
瀬崎由美
ライト文芸
大学受験が終わってすぐ、父が再婚したいと言い出した。
相手の連れ子は小学生の女の子。新しくできた妹は、おとなしくて人見知り。
まだ家族としてイマイチ打ち解けられないでいるのに、父に転勤の話が出てくる。
新しい母はついていくつもりで自分も移動願いを出し、まだ幼い妹を含めた三人で引っ越すつもりでいたが……。
2年間限定で始まった、血の繋がらない妹との二人暮らし。
気を使い過ぎて何でも我慢してしまう妹と、まだ十代なのに面倒見の良すぎる姉。
一人っ子同士でぎこちないながらも、少しずつ縮まっていく姉妹の距離。
★第7回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 190万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる