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第二章 Urban Myth “Miwakare Bridge”.
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昨日、ネガエネミーのターゲットとなってから、すっかり元気を失い……昨日一日操られていた風見つばめは――今日の朝にはすっかり元気を取り戻し、いつも通りの彼女の姿を見て、安心した。
あの戦いの後、魔法少女としてつばめが無事であることを確認してから、その場を立ち去って以来――直接その姿を見ていなかったのもあるが、それは昨日の夜の事。
『私、こむぎに何かひどい事言っちゃってたかな……』というショートメッセージがスマホに届いていたのもあり、彼女がネガエネミーに操られ、記憶を失くしていたであろう間のことをひどく気にしていた様子だった。
……突然、記憶がぷつっと途切れてしまえば、その間のことで不安になるのも当然だ。
もちろん、『つばめちゃんを操ってたネガエネミーはもうやっつけたから安心していいよ!』……だなんて言えるはずもなく、魔法少女としてではなく、友達として――できる限り元気付けたつもりではあったが、それでもいつもの元気な彼女を見るまでは安心できずにいたのだった。
翌朝、いつも通り待ち合わせにやってきたつばめは、こちらを見るなり、だっだっだっ! と走り、ぴょーんっ!! と飛びついてきて――
「おはよーこむぎ! 昨日はごめんね、なんか記憶ごとすっぽ抜けちゃって、何も覚えてないんだよねー。アタシ、疲れてるのかな~、あはははははーっ!」
と、昨日のあんな出来事でさえ、早くも笑い話に変えてしまっているそのポジティブさが、元のつばめが戻ってきたんだなと強く実感させられた。
「おはようっ、つばめちゃん! 昨日は元気が無さそうだったから、心配したんだよ?」
「ごめんごめん、でももう大丈夫! いつものアタシだよっ」
魔法少女であるわたしは――取り戻したのだ。目の前で奪われようとしていた風見つばめと、その日常を。
***
今までで一番、と自信を持って言えるほどの強敵だったあのネガエネミーをなんとか倒して、取り戻した平穏にありがたみを感じながら……週末、金曜日の昼休み、今日も普段通り机を繋げて、二人で給食を食べていた。
給食のお供、赤い紙パックに入った牛乳を、突き刺したストローで吸い、飲みながら、唐突に。……つばめがわたしにある質問をした。
「こむぎは『50パーで欲しいものが全部手に入るけど、もう50パーで持ってるものを全部失くす』なんて話があったらどうする?」
「あっ、それって……」
「そうそう! 今流行りの『都市伝説』だよ~。あれ、こむぎってそういうの興味あったっけ? あんまりそういうイメージ無かったんだけど……」
「あ、うん。たまたま耳にしたっていうか……」
ちょうど、わたしが気にかけていたことの話になって、ついつい反応してしまう。
そんな彼女の言うとおりで――今までのわたしなら、都市伝説とかオカルトとか、そんな類いの話には微塵も興味がなかったかもしれない。
ただ、今は違う。嘘のような本当の出来事が実際、わたしに起こったのだから。……何なら、今も隣でジャムパンの見た目の精霊が浮かんでいるのだ。魔法少女にしか見えないらしいので、わたし以外、周りの誰も、知る由もないのだが……。
「こむぎが都市伝説とか噂話とか知ってるの、珍しいよね~、アタシはこういうの好きだから色々調べたりしてたんだけど、誰かから聞いたの?」
「うん、まあそんな感じ……かな? なんか、あちこちでこの話聞くし……」
以前のわたしであれば、聞き耳すらも立てないようなジャンルの事柄であったが……不思議な出来事を数多く経験したせいか、こういった話題にも敏感になってしまうのだった。
ただ、この『都市伝説』が気になっていた理由はそれだけじゃない。もう一つ、明確な目的があった。それは――
あの戦いの後、魔法少女としてつばめが無事であることを確認してから、その場を立ち去って以来――直接その姿を見ていなかったのもあるが、それは昨日の夜の事。
『私、こむぎに何かひどい事言っちゃってたかな……』というショートメッセージがスマホに届いていたのもあり、彼女がネガエネミーに操られ、記憶を失くしていたであろう間のことをひどく気にしていた様子だった。
……突然、記憶がぷつっと途切れてしまえば、その間のことで不安になるのも当然だ。
もちろん、『つばめちゃんを操ってたネガエネミーはもうやっつけたから安心していいよ!』……だなんて言えるはずもなく、魔法少女としてではなく、友達として――できる限り元気付けたつもりではあったが、それでもいつもの元気な彼女を見るまでは安心できずにいたのだった。
翌朝、いつも通り待ち合わせにやってきたつばめは、こちらを見るなり、だっだっだっ! と走り、ぴょーんっ!! と飛びついてきて――
「おはよーこむぎ! 昨日はごめんね、なんか記憶ごとすっぽ抜けちゃって、何も覚えてないんだよねー。アタシ、疲れてるのかな~、あはははははーっ!」
と、昨日のあんな出来事でさえ、早くも笑い話に変えてしまっているそのポジティブさが、元のつばめが戻ってきたんだなと強く実感させられた。
「おはようっ、つばめちゃん! 昨日は元気が無さそうだったから、心配したんだよ?」
「ごめんごめん、でももう大丈夫! いつものアタシだよっ」
魔法少女であるわたしは――取り戻したのだ。目の前で奪われようとしていた風見つばめと、その日常を。
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今までで一番、と自信を持って言えるほどの強敵だったあのネガエネミーをなんとか倒して、取り戻した平穏にありがたみを感じながら……週末、金曜日の昼休み、今日も普段通り机を繋げて、二人で給食を食べていた。
給食のお供、赤い紙パックに入った牛乳を、突き刺したストローで吸い、飲みながら、唐突に。……つばめがわたしにある質問をした。
「こむぎは『50パーで欲しいものが全部手に入るけど、もう50パーで持ってるものを全部失くす』なんて話があったらどうする?」
「あっ、それって……」
「そうそう! 今流行りの『都市伝説』だよ~。あれ、こむぎってそういうの興味あったっけ? あんまりそういうイメージ無かったんだけど……」
「あ、うん。たまたま耳にしたっていうか……」
ちょうど、わたしが気にかけていたことの話になって、ついつい反応してしまう。
そんな彼女の言うとおりで――今までのわたしなら、都市伝説とかオカルトとか、そんな類いの話には微塵も興味がなかったかもしれない。
ただ、今は違う。嘘のような本当の出来事が実際、わたしに起こったのだから。……何なら、今も隣でジャムパンの見た目の精霊が浮かんでいるのだ。魔法少女にしか見えないらしいので、わたし以外、周りの誰も、知る由もないのだが……。
「こむぎが都市伝説とか噂話とか知ってるの、珍しいよね~、アタシはこういうの好きだから色々調べたりしてたんだけど、誰かから聞いたの?」
「うん、まあそんな感じ……かな? なんか、あちこちでこの話聞くし……」
以前のわたしであれば、聞き耳すらも立てないようなジャンルの事柄であったが……不思議な出来事を数多く経験したせいか、こういった話題にも敏感になってしまうのだった。
ただ、この『都市伝説』が気になっていた理由はそれだけじゃない。もう一つ、明確な目的があった。それは――
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