奴隷アルファに恋の種

モト

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 ────だるい。

 ガレの屋敷に到着後、僕達はそのまま初夜を迎えた。発情期でまともな意識を保てなかったけれど、夜も朝も昼も身体を繋げていた。

 アルファは性器が大きいとは聞いていたけど、ガレの性器もそれは立派だった。

 しかし、の僕はいくらオメガであり発情期であっても、ずっとその長大なモノを受け入れるには不慣れすぎた。

 それで発熱した。強いヒートの上、熱が上がって40度は超えて、数日間寝込んだ。


 ──今日は、ガレの屋敷に着いて何日目の朝だろう?

 身体は重だるいが、熱は治まっているようだ。
 ベッドから起き上がり着替えるために服を脱いだ。自分の身体中に歯形がまだ残っていた。ガレが噛んだ痕だ。そこをツウっとをなぞる。


「首以外噛むことに意味はあるのだろうか?」

 首にも同様の歯型はあるものの、アルファとオメガが番という伴侶の形になるほどの傷口に達していないように思う。

 番になるには、もっと深く痣が出来る程噛まなければいけないと聞く。
 ガレは、そのことを知っているのだろうか? もしかしたら、彼もオメガとの性行為は初めてで甘噛みほどで番になれると思っているのかもしれない。

 ガレの性器を受け入れていた記憶が蘇り、顔が熱を持ちパタパタと手で扇いだ。

「ふぅ~、折角熱が下がったのにまた上がりそう」

 身なりを整えて部屋から出ると、屋敷の執事に身体の具合はと心配される。平気だと伝えると、食事の準備が出来るまで屋敷を案内しましょうと声をかけてくれる。
 この屋敷には執事が一人、メイドが二人。屋敷自体の広さはあるが、家具など最小限。どことなく殺風景だ。

「ガレ……、いえ、ガレリアは今どこに?」

 部屋から出ればガレがいるのかと思っていたけれど、どこにも姿が見えない。執事によると、ガレは早朝に仕事に向かったそうだ。

「主人は忙しい方です。屋敷にはあまり戻って来られません」 

「え? そうなのかい?」

「えぇ。奥様はこの屋敷で好きなように過ごして欲しいと言われております」

「そう……、好きに」


 その日、ガレは仕事で帰ってくることはなかった。その次も。
 こんなに戻ってこないものかと執事に問えば、一日一度は戻って来るが、ほとんど夜中で、寝るために帰ってくるだけなんだそうだ。

 7日目の早朝、彼が家から出ていく背だけを見かけた。
 避けられているのではと勘繰ってしまうほど、顔を合わせることがなかった。




「おかえりなさい。ガレ」

 30日目、手持ち無沙汰の僕は彼が帰ってくる深夜を見計らって出迎えた。月明りだけが彼を照らしていた。

「少し話したいのだけど」

「疲れている。話は今度だ」

 暗闇だからか、本当に疲れているように感じる。
 彼を労わろうと手を伸ばすとガレにその手を跳ねのけられた。思った以上に強く弾かれて驚いた。跳ねのけたガレも驚いている様子だ。

「疲れているところすまなかったね」

「貴方が謝るのは筋違いだ。何故……いや、何でもない」

 いつも痛いほどに睨んでくるガレが僕と目を合わそうとしない。

「早く寝ろ」
「……うん。そうだね」


 パタンと彼の部屋のドアが閉められて、あーぁ、と溜息をついて自分も部屋に戻った。

 ガレは僕との結婚は“名が欲しい為”ではないと言っていた。しかし、新婚なのにこの現状はどう考えるべきだろうか。
 過去、ガレの主人だった頃の僕はそれなりによく見えていたが、成長して、ただの男の姿を見て興味をなくした。
 または、僕の身体の具合が良くなかった。



 次の日、ベランダで紅茶を啜りながら、まだ、そのことを考えていた。

 ────恐らく、両方だろう。
 僕は、初夜の時に彼の服一つ脱がさなかった。完全なマグロだ。処女の前に童貞だからと言ってこの状況はまずかったのではないだろうか。
 ヒートでまともに身体を動かすことも出来なくなってされるがまま、さらに尻も狭いなと解しながら言っていたし諸所面倒臭かったのかもしれない。
 事後の後始末も彼任せ、熱を出した僕の面倒も彼任せ。


「ふぅ。僕としたことが失態の大きさに今頃気付くとは。閨のことを詳しく聞ける友人などいないし。どうするべきか」

 ブツブツ独り言を言っていると、ベランダに入ってきた執事に声をかけられた。

「意外です。奥様は主人との結婚を悲観されているのではと思っておりました」

「悲観……いいや。していないよ」

 僕は苦笑いした。執事は僕のティーカップに紅茶を注いでくれる。

「確かにガレリアには、他に融資や援助を受けられないよう邪魔をされた」

「驚きました。ご存知でしたか」

「そこまで世間知らずじゃないさ。……グノワール家の状況は知っているだろう。父の悪噂は本当のことだ。だからガレリアが企てなくとも、いずれ融資を断られる末路だった」

 そう。これは僕にとってよい結婚だ。彼にとっては早くも価値がなくなっているようだけれど。

 社交界で何度もガレを見かけたことがある。様々な美姫が彼をいつも囲んでいた。田舎では美しいと評される僕の容姿だけど、美しく豊満な身体を持つ美姫には逆立ちしても敵わない。

 結婚するまでは睨むように真っすぐ見つめてきた視線も昨日は逸らされた。それほど、あの初夜に幻滅されているとなると名誉挽回が先ではないか。指南書でも買うか。

「嫁いですぐこのような状況を作ってしまって面目ないよ。妻として僕はどうすればよいのか全く分からない」

 本音を言えば、彼の事業を手伝うこともしてみたい。それにはまず会話だ。

「あの、奥様は貴方様自身の価値を……」

 執事が言いにくそうに言い始めた時、メイドに客が来たと声をかけられた。この屋敷に来て僕に客が来るのは初めてだった。玄関へと向かうと、妹と褐色肌で長身の中年男性が立っていた。


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